【更新】「ピンキー&ダイアン」のサンエー社長がインサイダー疑惑・株価大幅下落へ

2008年03月29日 12:00

株式イメージ[読売新聞]は3月28日、人気ファッションブランド「ピンキー&ダイアン」「ナチュラルビューティー」などを展開する東証一部上場のアパレル大手【サンエー・インターナショナル(3605)】の三宅正彦社長(73)が自社の新株発行の発表前に、ストックオプションを行使して得た自社株を売却し、1000万円を超える利益を上げていたこと、さらに当件について証券取引等監視委員会がインサイダー取引とみて金融商品取引法違反の疑いで調査に乗り出したことを伝えた。これに対しサンエー側では「インサイダー情報で利益を得ようとした意図はなく、インサイダー取引に該当するとも考えていない」とコメントしている(【発表リリース、PDF】)。今報道を受けてサンエー株式は一時ストップ安をつけるなど大幅に下落した。

スポンサードリンク

元記事によれば関係者の話として、サンエー側が2006年春頃に店舗展開を拡大するため新株発行で130億円の資金調達を行なう「公募増資の実施方針」を内定。三宅社長はこの直後に新株予約権(ストックオプション)を行使して自社株を取得。すぐに売却して1000万円超の利益をあげた。

実際には同社は7月14日の取締役会で新株発行を決議し公表(【発表リリース、PDF】)。発行株式数が既存株式の2割に相当する300万株という大規模なものだったため、株価は大きく下落した。三宅社長は2007年8月の時点で同社株式を92万株(5.2%)保有している。社長が「自分の手持ち株式」ではなく、ストックオプションを行使して株式を取得し、それを売却したことから「公募で株価が下落すると手持ちのストックオプション(※)特定の株価で株式を取得できる権利だから、行使時の株価がそれより下落してしまうと損をすることになる)が無価値になるかもしれない。そうなる前に売り抜けておこう」という意図の元に行なった、不正取引ではないかと証券取引等監視委員会では見ている。

これに対しサンエー側ではリリースの中で証券取引等監視委員会の調査を受けている事実を認めると共に、

・増資は2006年春に検討されたが重要事実の決定はその時点では行なわれなかった。
・その後三宅社長がストックオプションを行使して株式を売却。
・インサイダー取引の疑いがもたれる懸念や増資の必要はないと判断し、野村證券と協議して「増資案の検討は中止」。
・その後再度野村證券から増資を持ちかけられ、インサイダー取引の問題は大丈夫かと確認したところ、野村證券から「問題なし」と「会社としての正式な回答」を得たことから増資を決定(2006年7月14日)。


と説明。「一度検討は中止しているし、実際に行なった増資との連続性は無い」「株式売却の時点で重要事実は決定していない」「野村證券も大丈夫だと太鼓判を押している」との理由から、今回報じられた件において、問題はないとの見解を伝えている。

2006年1月~12月のサンエーの株価動向
2006年1月~12月のサンエーの株価動向

サンエー側の説明を信じる限りでは、三宅社長のストックオプション行使が問題視されうる増資案の検討は一度中止し、現実化しなかったから「法的に問題はない」という可能性が高い。もちろんそもそも三宅社長が「偶然」その時期に行使をしたのか、「増資するかも=株価が下がるかも=手持ちのストックオプションが無価値になるかも」という雰囲気から売り抜けを画策したのかについては別途問われることになるだろう。

しかし「増資の必要はない」と判断した会社の重要事項案件について(何しろ流通株式の2割にもあたる大量の株式を新規発行するのだ)半年も待たずに再検討を行い、その上で今度は実行したとなれば、春先の「一度中止した増資検討」が100%無関係・非連続であったという主張は通りにくい。

主幹事の野村證券から「新たに増資を持ち掛けられた」という表記がリリースには明記されている。このことから、春先の増資検討をした際に検討に加わった野村證券側の、増資話が一度白紙に戻ったあとにおける「営業努力」が増資決定に大きく関与した可能性もある。

春先に検討された増資案件がいつごろで、「増資検討・内定直後」と報じられている三宅社長のストックオプションの売却時期との間隔はどれくらいなのか。また、最初の増資検討案と実行することになった増資案との関連性や、不自然に見える「一度中止した増資案を(会社の経営状態が急変したわけでもないのに)数か月も経たずに再度検討し、実行に移した」件に関する野村證券側の関与など、疑問点は多い。今後証券取引等監視委員会の調査が進むに連れ、各種発表が行われ、詳細が明らかになることだろう。

どらちにせよ東証一部上場企業の社長にインサイダー取引の疑惑が発覚するのはきわめて珍しい。事実次第ではさまざまな影響が社内外に及ぶことが懸念される。


※ストックオプション:
あらかじめ定められた特定の株価で株式を取得できる権利。例えば「1000円で取得できる権利」を持っていて、実際の株価が2000円の時に行使すれば、1株あたり2000-1000=1000円の利益が得られる。

しかし行使時の株価がそれより下落してしまうと(例えば株価が500円なら、1000円で株式を取得しても売ると500円の損をしてしまう)、損をすることになるので行使をするはずもなく、無意味な権利となってしまう。ストックオプションには原則的に行使期間が定められているため、その行使期間内に「得をする株価」で市場株価が推移する可能性があるかどうかが、その価値を左右するといえよう。

Related Posts Plugin for WordPress, Blogger...

スポンサードリンク



 


 
(C)JGNN||このサイトについて|サイトマップ|お問い合わせ