補足図解:「連鎖共振反応」と「あり得ないこと」の積み重ね……現在の金融信用不信の原因

2008年03月18日 19:40

図解イメージ昨今の金融市場の不安定感について、先に【Financial Times】の記事を元に【「連鎖共振反応」と「あり得ないこと」の積み重ね……現在の金融信用不信の原因】を掲載したところ、「文字だけだと今ひとつ姿が見えにくい」「図解はないのか」という意見をいただいた。そこで今回は、先の記事の図解の追加とその解説をしてみようと考えている。この記事と先の「『連鎖共振反応』と『あり得ないこと』の積み重ね~」は合わせてお読みいただきたい。

スポンサードリンク

「玉突き暴落」

要は連鎖反応的な売りや破綻が起きること。これは一般の経済状態でも「連鎖倒産」などの言葉で表現されるように、よくある話。

昨今の経済では多くの企業が他の企業と少なからぬ影響や取引、株の持ち合いをしている。ましてや金融商品を取り扱う業界(金融、証券、保険など)ではなおさらの話。そして元々景気がかんばしくない時に、A社の経営が困難に陥る。

経済的なつながりがある5社のうちA社の経営が困難に。水色の破線は類似業界内を示す。例えばB・D社は共にCDSを取り扱う会社、という具合。
経済的なつながりがある5社のうちA社の経営が困難に。水色の破線は類似業界内を示す。例えばB・D社は共にCDSを取り扱う会社、という具合。

A社の破綻で、A社の金融商品をたくさん買っていたB社も手元の商品が紙くずとなり、大きな痛手を受ける。さらに「投資家」の思惑にあるように他の企業にも「もしかして影響を?」との懸念が広がり、回避が始まる。

A社と大きく取引があったB社も経営困難に。すると、B社とつながりの深いC社や、B社と同じ業界のD社も「同じことが起きるかも」と大きく売り叩かれる。
A社と大きく取引があったB社も経営困難に。すると、B社とつながりの深いC社や、B社と同じ業界のD社も「同じことが起きるかも」と大きく売り叩かれる。

A社の破綻でB社も巻き添えを食らうと、C・D社の株価も大きく下落してしまう。会計上、損失として計上しなければならなくなる場合もある。ましてやこれらの企業の株式を保有していた会社は目も当てられない。

A・B社の破綻で発生した直接的な損失以上に、株価の下落などで大きな損失を受けるC・D社。もしここでE社がC・D社の株式を保有していれば、大きな含み損が生じ、やはり会計上の損失を計上しなければならなくなる場合も。
A・B社の破綻で発生した直接的な損失以上に、株価の下落などで大きな損失を受けるC・D社。もしここでE社がC・D社の株式を保有していれば、大きな含み損が生じ、やはり会計上の損失を計上しなければならなくなる場合も。

「Perfect Storm」

続いて「Perfect Storm」。「一個の巨大な嵐ではなく、同時多発的に発生した嵐が偶然の組み合わせによって巨大な影響力を及ぼすもの(Wikipediaなどから翻訳)」という意味がある。共振、とも連鎖増幅反応とも表現できよう。

現在の金融市場の混乱は、この言葉で表現できる。つまり、一つ一つの小さな嵐が連鎖共振反応を起こし、全体に大きく波及している、という解釈になる。具体的には「一つのファンドや証券会社の危機が、他の機関への懸念・危機に結びつき、規模を拡大していく」というところだろう。

先の「玉突き暴落」と同じ状況で例えれば、A社だけでなくD社の破綻も同時に起きたような状態。先の例なら他の会社はまだ備える時間も資金もあったが、複数で同時に発生すると相乗効果が起き、対処がしにくくなる。

「Perfect Storm」。複数か所でほぼ同時に問題が発生し重複相互作用をもたらす。
「Perfect Storm」。複数か所でほぼ同時に問題が発生し重複相互作用をもたらす。

以前の例ならB社はA社からの損失を受けていただけなのに、この場合ならD社からの損失も一挙に受けることになる。B社の破綻は先の例より早くなり、まともな対応も打てないだろう。投資家の心理も一層冷え切ったものになり、売りのスピードは加速する。金融資産の評価は下落し、さらに各社の会計上のふところは寂しくなる。

もっと身近な例で例えれば、電話と宅急便の訪問と鍋の吹きこぼしと突然の大雨が一挙にやってきたようなもの。どれから先に手をつければ良いのか分からず、企業も市場もパニックになるという次第。

「Multi-Sigma」とレバレッジ

統計学上ほぼありえないとされる「Multi-Sigma」が頻発するのはなぜか、の件。レバレッジをかけて過剰にふくらんだ流動性資金(過剰流動性が支配する市場)では、「Multi-Sigma」を算出する際の前提を考え直す必要があるのでは、とする話についての図解。

「うさぎとかめ」
「うさぎとかめ」

同じ資金でも、レバレッジが低い場合とレバレッジをかけた場合とでは、特定期日における取引回数や金額が違ってくる。それらはいわば「砂利道を走る行程」に相当する。かめもいつかは石につまづくかもしれないが、うさぎはそれよりも早くこける可能性が高い。

いわば「ありえない可能性が出る」チェックを行なうサイコロ振りを、うさぎはかめの何倍も行なっていると考えればよいだろう。いくら確率がゼロに近くとも、振る回数が増えればその率は次第に上がってくる。本来「-6σ」と計算されていた事態が、実はもっと高い可能性になっていた(言い換えれば「-6σ」の何十、何百、何千回分のチェックがあった)ということなのかもしれない。

「サブプライムローン問題と金融市場混乱」と地震の関係

「玉突き暴落」や「Perfect Storm」で説明した、連鎖反応的な株価下落や企業の破綻。それが一挙に複数の場所で発生することを「地震」に例えた話。

「サブプライムローン問題」という地震が発生。その特質上、大きくの企業が多かれ少なかれダメージを受ける。
「サブプライムローン問題」という地震が発生。その特質上、大きくの企業が多かれ少なかれダメージを受ける。

「サブプライムローン問題」はざっくばらんに表現すると「不良債権化することが約束されたような債券を金融工学の名の元に細切れ化し、世界中にばらまいた」ようなもの。これが化学反応のように一挙に「不良債権」という正体を現したのが「サブプライムローン問題」であり、今件における「地震」に相当する。世界規模で大きな揺れが生じたと思えば良い。

するとどうなるか。

先の「玉突き暴落」や「Perfect Storm」で想定したような企業の破綻が相次いで起きる。そうでない企業もほぼ同時期(数か月の単位で)にじわじわとダメージを受ける。損失が損失を呼ぶあたりは「余震」のようなものだと思えば良い。

複数同時多発的に破綻や経営の傾きが起きる。ある会社にとって複数の取引先や金融商品販売元からネガティブなニュースが相次いで舞い込み、手がつけられない状態に。
複数同時多発的に破綻や経営の傾きが起きる。ある会社にとって複数の取引先や金融商品販売元からネガティブなニュースが相次いで舞い込み、手がつけられない状態に。

「Perfect Storm」の時に想定した「複数同時破綻」が世界のあちこちでおきることになる。投資家のマインドも底に落ち、ひたすら換金・売り一色の世界。図にある「K社」のように、直接影響を受けていないところでも、「グローバル経済」の名の元に金融商品や取引などで他社との結びつきを深くしているから、間接的に、しかも波状的に影響を受ける。

解決策は……?

以上、図版で再度簡単に[「連鎖共振反応」と「あり得ないこと」の積み重ね……現在の金融信用不信の原因]をまとめてみた。想定できる解決策は先にも述べたように、実例に学べば良い。まずは影響が最小限に留まるよう、防火扉などでエリア封鎖をし、それぞれのエリアを切って捨てたり放置したり、それぞれのエリア毎に対処し、他エリアへの影響を留めること。【「デカップリング論」って何?】で述べた「デカップリング論」や、かつて行なわれたブロック経済、さらには「鎖国」などが良い例だ。しかしこれはグローバル経済化著しい現在ではほぼ不可能といえる。

となれば後は残るのは、状況の把握と情報開示、的確でスピーディーな立案計画のもとで行なわれる、もっとも大きな力の介入、すなわち「公的資金の注入」に他ならない。【「外国人投資家」と彼らの行動について】で解説したように、直近数十年来において資本主義社会では2度も公的資金の注入で経済を回復させたという実績を持っている。経験則から、この政策そのものが成功する可能性は高く、またそれを知っている投資家達が「先回り」をして買い進めるようになるので、それもまた市場の安定に寄与することになる。

FRBの金利引下げによる金融政策はそろそろ限界を迎えている。金利を下げれば下げるほどドルの価値が下がり素材商品の価値が増し、さらにドル安・株安を招くという悪循環におちいりつつもある。ベア・スターンズなどの「いけにえ」も揃った(もう一社くらい必要かもしれない)。さらに1980年代の金融恐慌の際のように、数千人規模の拘束者も求められる可能性はあるが、それとて半ば自業自得、半ば必要な外科手術というところだろう。

ましてや日本の2000年初頭の際のように、公的資金注入をためらったばかりに結局数十倍もの資金が必要になるなどという愚策をアメリカ政府などがするようなものではない、と考えている(あるいはヨーロッパでも同時に行なう必要すらあるかもしれない)。

株価の下落、ドル安傾向は市場からの「催促」と受け止めることもできる。あとはいつ決断されるか、決断するだけの材料が揃ったと判断されるか。今はその時期に来ているといえよう。


(最終更新:2013/08/10)

Related Posts Plugin for WordPress, Blogger...

スポンサードリンク



 


 
(C)JGNN||このサイトについて|サイトマップ|お問い合わせ