未来のショッピングカート

2008年03月16日 12:00

MediaCartイメージデパートや大型スーパーで二、三点の買い物をする時ならともかく、それ以上の商品を買おうとしたり、「ウィンドウショッピング」よろしく店内を闊歩して色々と品定めをしながら買い物をする場合、ショッピングカートは必要不可欠。それをIT化し、さまざまなアドバイスをしてくれる「未来のショッピングカート」をお客に提供して顧客満足度と商品購入意欲を高めようという試みが海外で行なわれている(参照:【DailyMail】)。

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「MediaCart」のショッピングカート……子どもをスキャンして購入しているわけではないので、念のため(笑)
「MediaCart」のショッピングカート……子どもをスキャンして購入しているわけではないので、念のため(笑)

このショッピングカートの名前は【MediaCart】。アメリカのテキサスに位置する同名の社名を持つ企業の商品で、広告部分の設計はマイクロソフト。すでに今年の1月に技術提携とその成果としての「MediaCartによるショッピングカート」の展開を発表・実施している。

MediaCart提供の未来志向的ショッピングカート。出っ張りにも見える液晶モニタ部分は重ねて収納されている時は横倒しになり、お客が取り出すと自動的に立ち上がる仕組み
MediaCart提供の未来志向的ショッピングカート。出っ張りにも見える液晶モニタ部分は重ねて収納されている時は横倒しになり、お客が取り出すと自動的に立ち上がる仕組み

要は通常のショッピングカートにハイテク・IT化されたお店のコンシェルジェがついたようなもの。特徴としては

・前面に12インチのカラー液晶モニタ、ハンドル部分にはコントローラーと商品用スキャナを搭載
・商品をカートのスキャナ部分にスキャンさせると各種データを表示する
・GPSは使わずにWi-Fiによる無線信号を利用
・商品を検索すると陳列してある棚までの案内をしてくれる
・お客が自分のカードをスキャンさせると過去の購入データや、あらかじめ用意してパソコンからアップロードできるリストに基づいた特価品(要は「牛肉をお求めなら今はこちらの商品がお勧めですよ」など)を表示しつつ、誘導してくれる
・リストに基づいた「最適な店舗内購入ルート」の案内
・似たような商品の価格などを比較できる(「A社のシリアルはB社のより5円安いけどカロリーが云々」)
・カートに入れた商品の合計金額の確認(買いすぎ防止にも役立つ)
・カートに入れた商品を元にしたレシピやお買い得情報の提示
・表示商品などに基づいた「関連性の深い」商品動画広告の展開(画面下部など)
・店の中を移動するだけでも、近くの棚にある商品に関する動画広告が表示される
・レジでの清算もレジの足元にあるシートで「未チェック(スキャニングしてない)商品」があるかどうかを確認し、その上で合計金額を算出、支払いをする。カゴからいちいち商品を取り出す必要はない
・顧客の購入性向や行動パターンなど、緻密なマーケティングデータの取得(店側の事情)


などがある。なお動画広告についてはマイクロソフトのAtlas部門「ビデオ広告技術」が用いられている。

会員カードをスキャンさせ、個人を特定。自宅で入力してある買い物リストや過去の購入記録をカートに対応させる。
会員カードをスキャンさせ、個人を特定。自宅で入力してある買い物リストや過去の購入記録をカートに対応させる。
商品の検索もできる。携帯電話の入力インターフェイスのように文字をいくつか入力すると推測される商品群がリスト化され、その中から商品を選択。するとその商品のある場所まで案内してくれる。
商品の検索もできる。携帯電話の入力インターフェイスのように文字をいくつか入力すると推測される商品群がリスト化され、その中から商品を選択。するとその商品のある場所まで案内してくれる。
レジでの清算。レジ前のシートの上にカートを進めると、カート内の商品で未チェックのものがあるかどうかを確認。問題がなければあとはカードでお支払い、商品をレジ打ちすることなく、レジを通過し、買い物を終えた商品を袋詰めすることができる。
レジでの清算。レジ前のシートの上にカートを進めると、カート内の商品で未チェックのものがあるかどうかを確認。問題がなければあとはカードでお支払い、商品をレジ打ちすることなく、レジを通過し、買い物を終えた商品を袋詰めすることができる。

メディアカートのプロモーションビデオ。英語は分からなくともニュアンスはつかめるはず。高解像度のものはメディアカートの公式サイトで確認できる。

広告展開の仕組みが面白い……ウェブ上のものと本髄は同じ

特に興味深く感じられたのは、店舗内の棚に設置してあるタグが各カートに連動し、近くを通り過ぎるだけで関連商品の動画広告を流すこと。例えば缶ジュースの冷蔵コーナーを通り過ぎるとペプシの安売りセットの動画広告が流される。「そういえば自宅のコーラの在庫が切れていたわね」とばかりに、目の前にある商品棚に手を伸ばし、広告の品をカートに納めることになる。

商品を散策しつつ缶ジュースコーナーの横を通り過ぎる。するとモニタ上には「奥さん、ダイエットペプシがお買い得ですよ」の広告。なるほど、とばかりに「後押し」され、商品に手が届く。
商品を散策しつつ缶ジュースコーナーの横を通り過ぎる。するとモニタ上には「奥さん、ダイエットペプシがお買い得ですよ」の広告。なるほど、とばかりに「後押し」され、商品に手が届く。

その場所にカートを運んでいるということは、それなりにその場所に設置してある商品に興味を持っていることになる。そこで関連する動画広告を流すことで、お客の購買意欲を「肩をぽん、と押すように」後押しするわけだ。

この仕組みは、インターネット上のリスティング広告やコンテキストマッチ広告のそれに似ている。検索にせよブックマークにせよ、あるサイトにアクセスした人はそれなりにそのサイトのテーマに関して興味を持っている。そこでそのテーマや内容にあった広告を展開すれば、無差別的に配するよりもより良い効果を期待できるわけだ。例えるなら育児サイトに乳幼児の食品案内や育児本の紹介、保育所のガイドサイトなどはマッチするし広告の展開そのものが(広告、というだけでなく)ニーズにあったコンテンツにもなる。一方、同じサイトで経済誌や老人ホーム、アダルト系の広告を出しても効果は期待できず、むしろ邪魔者扱いされることだろう。

ネット上か実際の店舗内かの違いはあれど「適材適所的に広告を配して利用者の便益を図る」という点に変わりはない。

日本での展開は?

MediaCartのサイトを見たが、日本に関する言及は見当たらなかった。また日本の店舗事情を考えると、アメリカのように「大きな面積・通路も幅広い」タイプのデパートやスーパーはそれほど多くない。またライフスタイルや購入のパターンもアメリカとは異なるので、そのままのシステムを移行させても普及は難しいかもしれない。

むしろ日本の特徴の一つである「携帯電話の普及」を活かしてみるのはどうだろうか。パソコンでのネット利用以上に携帯電話からのネットへのアクセスは幅広い層に及んでいる。主婦層にも「パソコンはほとんど使えないが携帯電話ならネットアクセスもOK」という人も多いだろう。また、文字列の入力も携帯電話からなら容易に出来る。

携帯電話向けにカートの専用アプリケーションを配信したり、専用サイトを創り情報の入力管理を行なわせる。カートには会員カードのほかに携帯電話の赤外線機能を用いた認識も可能とし(携帯電話だけだと利用者が限られてしまう)、データの送受信もその時点で行なわせる。将来的にはクレジットカードではなく携帯電話に組み込んだ電子マネーでの支払いも可能とすれば、より便利な買い物ツールを提供できることになる。

仮に日本で展開するとなれば、大手デパートなど一部の「大きな売り場面積を持つ店舗」「インフラなどに余力のある」企業に限定されることだろう。とはいえ、決して不可能な話ではない。超えねばならないハードルは低くはないが、そう遠くない将来日本のどこかの店舗でも、MediaCartが提供するようなハイテクショッピングカートをみかけるようになるかもしれない。

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