NYのエコノミスト曰く「僕らはみんなサブプライム層」

2008年03月21日 06:30

株式イメージ去年から今年にかけて経済分野の流行語大賞のトップを行きそうな「サブプライム(ローン)」。プライムでない、つまり優良金利を受けられない、信用度の低い人たちのことを指す。元々「プライム層」があり、それに当てはまらない人たちのことを「サブプライム層」と呼んでいるわけだが、あるニューヨークのエコノミストは現状について次のように説明した。「僕らはみんなサブプライム層だ(We're all sub-prime now)」(【該当記事:BBC News】)。

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僕らはみんなサブプライム層

サブプライムローンの貸し倒れ急増をきっかけに始まった金融信用縮小。住宅ローンのみならず多くのローン会社、さらには銀行までもが査定を厳しくし、リスクを減らそうとしている。FRBは金利を引き下げて貸付をしやすくし、資金流動性を高めようと努力しているが、それら金融機関の「慎重さ」が金利引下げのメリットを上回り、銀行同士の貸し借りですら柔軟性を欠く状態。実体経済は今年2月に底を打ったように見えるのに、金融市場はさらに低迷する様相を見せているのも、「金融機関の慎重さ」を解除するだけの要因、つまり住宅価格が全国的に下落しているのが要因だ、と説明している。

プライム層も貸し渋りを受ける
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皆が皆サブプライム層に

本来問題なく借り入れが出来るはずだった「プライム層」ですら、今や借り入れが非常に難しい状況にあるのが現実。いつの間にか「サブプライム層」の仲間入りを果たしていた。そのような貸し渋り状態を指し、ニューヨークのエコノミストKevin Logan氏は「We're all sub-prime now.(僕らはみんなサブプライム層だ)」と表現したわけだ。

昨年夏にサブプライムローン問題がクローズアップされ、株価急落を招いた「サブプライムローン・ショック」。あの前後に別の外国紙の経済コラムで次のような論調が掲載されていた。いわく「サブプライムローンの問題が取り立たされているが、自分も含めたほとんどの人はプライム層。自分たちとは違うサブプライム層の問題だから、自分たちには関係ないネ」というもの。あまりにもの問題軽視に開いた口がふさがらなかったが、今やそんな軽口を叩いていた本人も「サブプライム層」の仲間入りを果たしていたことになる。

「不都合な真実」ではなく「不確実な損失」

元記事では現状の金融信用問題を次のように分析している

・住宅価格の大急落(全国一斉下落は1930年代の大恐慌以来)が実体経済の下げ止まりの足を引っ張っている
・頭金すら用意していない住宅ローン利用者が「返済不能」におちいっている(1976年当時は頭金の平均は18%、2005年~2006年では半数が頭金ゼロで住宅ローンを組んでいる)。これが住宅が差し押さえを受ける原因の一つ
・ローンのデフォルトがどれくらいに達するのか分からないので損失が分からない。いわく「不確実な損失(Uncertain losses)」
・日本の金融不況(1990年代)における市場救済措置の失敗で生じたドミノ効果による「失われた10年」と同じヘマを、アメリカ連邦政府はしでかさない。市場関係者は皆が皆そう考えている。しかしリスクが無いとはいえない(だからこそドルは下落し金(ゴールド)は上昇している)。


元記事は〆(しめ)の部分で次のようにまとめている。

「貸し出し側の慎重さが増すにつれ、住宅の差し押さえは増えていく。するとさらに住宅市場は下落を続け、ますます貸し出し側の慎重さを助長することになる。まさに悪循環。経済学者でもある連邦準備理事会(FRB)議長のバーナンキ議長は、この棄権極まりないネガティブ・スパイラルを止める解決策(「魔法のような」)を模索している……が、今のところ彼はそれを見つけていない(He hasn't found it yet)」


と。

今のところ金利引下げは効果の極めて短い、効力の薄い「魔法」でしかないようだ。しかもその「魔法」の利用可能回数はあと数回に限られている。弾切れになる前に、アメリカ連邦政府、そしてバーナンキ議長は新しい解決策を見つけねばならないだろう。それがさらなる減税策なのか、それとも公的資金の投入なのか、今のところは誰にも予想がつかない。

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