宇宙規模の無人「輸送トラック」ATV間もなく打ち上げ

2008年03月09日 12:00

ATVイメージ【BBC News】などが伝えるところによると、欧州宇宙開発機関ESA(European Space Agency、ESA)が開発した無人輸送機【ATV(Automated Transfer Vehicle)】の第一号機「ジュール・ヴェルヌ(Jules Verne)」がグリニッジ標準時の3月9日午前4時3分(日本時間で午後1時3分)に打ち上げられる。荷物のお届け先は国際宇宙ステーションISS(International Space Station、ISS)。フランス領のギアナからの打ち上げとなる。

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打ち上げを待つばかりのATV一号機「ジュール・ヴェルヌ」と打ち上げ用ロケット。
打ち上げを待つばかりのATV一号機「ジュール・ヴェルヌ」と打ち上げ用ロケット。
ATV本体の全景
ATV本体の全景

ATVのスペックは貨物搭載量7.6トン、満載時の重量が20トン程度(空の時は11トン)、全長は10.3メートル、直径4.5メートルの円筒形をしており、サイズ的にはロンドンで現役活躍中の2階立てバスほどの大きさとなる。

解説パンフレットから、「大きさが分かる図式」。実際に2階立てバスがATV内に搭載されるわけではない(笑)
解説パンフレットから、「大きさが分かる図式」。実際に2階立てバスがATV内に搭載されるわけではない(笑)

最大の特徴はATVが「無人」であること。そして大量の荷物を宇宙に運ぶだけでなく、牽引車的な役割も果たせること。実際「ジュール・ヴェルヌ」は7.6トンもの荷物を運ぶだけでなく、徐々に高度を下げつつあるISSを再び定位置に引き戻す役割も担っている。要は「かしこい電子頭脳とエンジン付き宇宙向け大型コンテナ」と思えば良いだろう。単独での地上発射はできず、今回はロケット「アリアン5」に搭載されての発射となる。

打ち上げ過程やその後の航行に問題がなければ「ジュール・ヴェルヌ」は4月3日にもISSとランデブー(接舷)し、納められている補給物資の食料や水、燃料、圧縮空気、さらには衣料品や交換部品をはじめとした各種補給物資をISSに届けることになる。ATV内は気密性が保たれており、ISSのスタッフは宇宙服なしでATV内に乗り込める。

宇宙服を着なくともATVに乗り込み、荷物の運搬が出来る
宇宙服を着なくともATVに乗り込み、荷物の運搬が出来る

その後上記にあるように、10~45日毎にATVのエンジンを使ってISSの高度修正が行なわれる。そして半年後にはISSから切り離され、任務遂行中に集められたゴミと共に太平洋上空で大気圏に再突入し、破棄されることになる。つまり、使い捨てということ。

荷物がISSに運び込まれたあとは、何度かブースターを使いISSの軌道修正に用いられる。
荷物がISSに運び込まれたあとは、何度かブースターを使いISSの軌道修正に用いられる。

宇宙空間への物資の輸送にはこれまでロシア製のソユーズ有人ロケットの補給機版プログレス(Progress)無人補給船(積載量2.5トンほど)、アメリカのスペースシャトル(同25トンほど)などが用いられていた。しかしプログレスは積載量の上限がキツく、スペースシャトルは安全性・老朽化の問題などから打ち上げ回数が減る傾向にある。今回のATVの任務が無事に終了すれば、第三の補給ルートが確保できることになり、ISSの開発はより一層前進することになる。

今回のATV打ち上げは現在アメリカ・ロシアの二大大国による競争という図式の宇宙開発にヨーロッパ陣営が割って入ることで、彼らの宇宙への強い意志を示す意味合いもあるようだ。そして当然のことながら、今後有人宇宙ロケットを開発するために必要な技術の蓄積とさまざまな実証実験も兼ねている。実際元記事でも「ヨーロッパが独自に宇宙開発のための有人宇宙ロケットを開発したいという思惑があるのなら、ATVはその出発点だ」と言及している。なお今回のATV計画には合わせて13億ユーロ(2000億円)が費やされている。またATVそのものはあと4機ほど造られる予定。

ESAではATV打ち上げの様子をネット上からリアルタイムで配信する予定。【配信ページはこちら】。発射時間の1時間ほど前から映像を流し始め、発射後86分ほどは映像を流し続けると伝えている。恐らくはアクセスが集中して閲覧しにくくなるかもしれないが、興味のある人はぜひチェックしてみよう。

※更新:

打ち上げの様子
打ち上げの様子

多少小雨がぱらつく中ではあったが、打ち上げは成功裏に終了したようである。おめでとう。

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