使う側から見た「ネットリサーチの4つのつぼ」+1

2008年03月25日 19:40

調査イメージ最近ではインターネットを使った調査が気軽に行なえるようになったことから、多種多様なテーマに関する調査結果が伝えられる。今や多くの人に欠かせない存在となったインターネット上の調査「ネットリサーチ」について、専門家による留意事項などが語られていた。色々と参考になることも多いので、ここで紹介すると共に自問自答や「リサーチデータを使う側」「読む側」からの解説もしてみることにする(【元記事:CNET Japan:ここだけは押さえたい、ネットリサーチのつぼ】)。

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ここ一年ばかりの間、記事を書く際に情報の元となる「ソース(情報元)」について、二次ソースを使うことで大元の情報がゆがめられている可能性があることから、出来る限り一時ソース、あるいはそれに近いものを使うように努めている。またそれらのデータを見て、その内容自身はもちろんそのデータから見えてくるさまざまな事実や未来を推測し、伝えるのも当サイトの記事執筆の上で楽しみの一つ。

「ネットリサーチ」のデータを使う、あるいは読み解く立場からすれば、「ネットリサーチ」そのものを行なう側の留意点は非常に参考になる。詳細は元記事に目を通してほしいが、概要をまとめると次の通り。

・ネットリサーチは時間や費用、調査に答える側にとって身近な存在になった。
・ハードルが低くなったので気軽に調査を行えることから、色々な「不特定多数の意見」を調べ、リサーチをすることができる。


この利点のおかげで、ネットリサーチの売上高は2006年で年間280億円、成長率は前年比16%(リサーチ事業全体では5%)という驚異的な伸びを示している(元々の額が少なかったとしても)。調査手法別の売上構成比でも2003年では14.1%に過ぎなかったネットリサーチは、今や3割近い29.1%にまでその域を拡大している(【該当資料:第32回経営業務統計実態調査 - 日本マーケティング・リサーチ協会】)。

と、「気軽でお値打ち、便利で調査対象のハードルも低い」と良い事づくめのように見えるネットリサーチだが、「調査をする側」にとって気をつけねばならない点が4つあるという。ここでは「データを使う側」の立場も合わせて見てみることにする。

1.目的の明確化

何を調べたいのかはっきりさせた上で調査する。さもなくば得たデータがぼけてしまう。公開されている調査データの中にも、主旨が貫徹しておらずまったく関連性の無い複数の対象が調査項目のメインとしてリスト化されている場合がある。そのような調査結果は大抵において、全体のピントがずれたものとなる。

調査項目がいいセンスをしていても、全体的にはぼやけてしまう主張が導かれ、使えない場合も多いのは残念。そこであえて一部分だけを抽出し、一つの項目についてのみ紹介・解説することも多い。もちろん意図的にミスリーディングをさせるような切り抜き方はしていないので、念のため。

2.自社/自社商品の立ち位置の把握

リサーチイメージ調べる側の現状を認識した上で調査を行なわないと、せっかく得られたデータも何の役にも立たないというお話。自社がその業界でトップにいるのに、トップに追いつくにはどうしたら良いのかが分かるようなネットリサーチをしても意味が無い。

公開されるネットリサーチデータには大きく分けて「自社商品に関連する調査」と「調査機関がほぼ純粋・中立的な調査」の二種類がある。前者の場合、専門家の視点で見た設問や解説を得ることができるが、時として「自社商品のアピール」としか思えない結果に誘導される場合もある。それが事実ならまた一つの「調査結果」であるし、それが第三者にとってプラスになることなら問題はないのだが、そうでない場合にはあえて取捨選択の「捨」をしなければならない。

3.まずはデータ収集

元記事ではネットリサーチをする際に、事前に調査をする必要がある、としている。要はリサーチのためのリサーチ。そしてその分析をした上でネットリサーチをすれば、無駄も省け、真実に近い仮説の上での設問ができるので、成功率も高まるだろうとしている。

今項目はネットリサーチをする前段階の話なので、調査データを使う側にはさほど関係はない。似たようなもので考えるとすれば、似たようなテーマが対象の調査データや分析記事を探し、類似項目や関連情報があれば抽出。現在対象としている調査結果だけでは分からないようなことについて推論・結論を述べる、ということだろう。

4.適切なサンプル数の確保

元記事では統計学上の問題として、5000サンプルなら誤差は約1.4%だが100だと9.8%にまで拡大してしまうという。つまりサンプル100での調査結果で「●×は5割」というデータが出ても、実は4割~6割の可能性があるということだ。

以前ある調査データを元に記事を書いたところ、「相関関係と因果関係は別物だ」「データ母体数が少なすぎてぶれが大きいのではないか」という指摘を受けたことがある。確かにその通りで、この項目でも警告されているような状況が起きている可能性がある。それ以降、出来る限りの範囲でサンプル数が少なめの場合、「少ないため実情とはぶれが云々」などという注意書きをしている。もっとも元記事にあるように、通常は400~500サンプルもあれば許容できる範囲の「ぶれ」に収まるようだが。


「ぶれ」といえば元記事では取り上げていないが、サンプル数以外にもう一つ「ぶれ」を考慮する必要がある。それは「調査手段」という「ぶれ」だ。

ネットリサーチの結果
→開始時点ですでに
「インターネット」にある程度
精通している母体からの
調査というフィルタが
かかっていることになる

特に世間全般に関する項目や、インターネットと競合する対象への調査の場合、ネットリサーチという調査手段を使う時点ですでに「インターネットを使っている」というフィルタがかかっていることになる。インターネットを使わない人がネットリサーチに回答するはずはない。今やパソコン・携帯電話双方を使ってネットへアクセスできる人は多数を占めるだろうが、携帯電話だけ、という人も多いだろう。また、双方を使っていてもネットリサーチがきらいな人もいる。

告知とガイダンスイメージインターネットに関係のない調査項目ならよいが、例えば「テレビとネット、どちらの広告を重視しますか」という調査をネットリサーチですると、当然テレビよりもネットに有利な結果が出ることになる。普及率が以前と比べればかなり向上しているので昔と比べてフィルタの割合は減少しているだろうが、特にネットリサーチの場合には「インターネットが使える人、しかもある程度ネットに精通している人が回答している」という前提を忘れてはならない。

ともあれ、データのベタコピーだけなら誰でも出来る。ネットリサーチの普及で色々な事象に関するさまざまな調査結果がちまたに満ちあふれるようになった昨今、当方(不破)としては単に「このような調査結果がデータとして出ていますよ」という告知はもちろんだが、そのデータの「向こう」に何が見えてくるのか、自分の経験と推測も交え、少しでもかいま見れるよう読者の皆さんをガイダンスできれば、と考えている。

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