米偵察衛星、大気圏突入前にミサイルで破壊・国防総省が発表

2008年02月16日 19:30

イージス艦Shilohイメージアメリカ国防総省は2月14日、燃料として搭載されている毒性物質ヒドラジンが積まれており現在制御不能となっている偵察衛星について、地球の大気圏内に突入する前にミサイルで破壊することを正式に発表した。迎撃にはイージス艦から発射する、艦対空スタンダードミサイルSM-3が使用される予定(【発表リリース】)。

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発表時の記者会見にてコメントする国防総省などのスタッフイメージリリースによれば今回落下中の偵察衛星は2006年12月14日に打ち上げられたもので、発射直後から制御不能に陥っていた。発射当時は約2.27トンの重さを持っていた。現状のまま大気圏突入を許すと、1.27トンもの残骸が地上に振りまかれることになる。通常ならばこのまま落下に任せるまま放置される可能性もあったが、搭載されている450キロほどのヒドラジンが地上に飛散する場合を考慮し、今回の決断となった。

ヒドラジンはロケットや航空機の、あるいは人工衛星などで姿勢制御用の燃料として用いられる無色の液体。塩素やアンモニア同様に肺の組織に影響を及ぼす毒性を持ち、場合によっては致命傷となりうる。今回の衛星落下で自由落下を許せば、計算上はフットボール競技場二つ分ほどの面積にヒドラジンを散布してしまう可能性があるという。

迎撃の正確な日時は現在明らかにされていない。しかしながら現在任務遂行中のスペースシャトル・アトランティスが地上に戻ってくる2月20日までは行わず、2月下旬か3月初旬に落下するであろう場所を見極めた上で、最終決定が行なわれるという。

今回の決定については

・NASAの担当者Michael Griffin 氏
「慎重にかつ安全性を考慮して決定されたもので、何の問題も無い
(“We are very comfortable that this is a decision made carefully, objectively and safely,”)」

・統合参謀本部副議長のJames E. Cartwright海兵隊大将
「何もしないで事態をただ見守ることによるリスクは、何らかの対抗手段をとった時に失敗しうるリスクを上回った。だから今回の決断を下した。
(“The regret factor of not acting clearly outweighed the regret factor of acting.”)」


などと、今回の迎撃を決断した理由を説明している。

なお迎撃するミサイル艦対空スタンダードミサイルSM-3は3発が用意される。[このリンク先のページ(Cnn.co.jpなど)は掲載が終了しています]が国防総省筋の話として報じたところでは今回の任務につくのはイージス艦Shiloh。対艦発射型ミサイルによる防空システム任務に長い間ついており、操作などには長年の経験を誇っているという。そして駆逐艦Decatur(衛星の情報をShilohに提供)とRussell(Decaturの支援)がサポートにつく。

今艦艇に用いられるスタンダードミサイルは、衛星迎撃用として、弾道ミサイルに対するよりもはるかに速い目標を対象とするためにレーダーとソフトが改良されている。なお弾頭は搭載されず、衝突の衝撃のみで人工衛星を破壊する予定。また地上のレーダー基地や海軍・空軍の各部隊も出動し、任務艦のサポートや衛星落下後のヒドラジンの監視を行なうという。

イージス艦Shilohのスタンダードミサイルによる空中飛行物迎撃のようすについては、Youtubeにて迎撃実験の様子を写した動画が掲載されていた。恐らくはこれが一つの参照イメージとなることだろう。


イージス艦Shilohによるスタンダードミサイルを用いた迎撃実験のようす。実験では大陸間弾頭弾を迎撃する模擬実験が行なわれている。3分20秒過ぎにスタンダードミサイルが発射され、模擬弾道弾に命中する。

迎撃の詳細は関係各国への事前通達も含め、2月20日以降に改めて逐次発表されることだろう。状況の進展を見守りつつ、成功を祈りたいものである。

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