イギリス・オーストラリア間を日帰り旅行できる超音速旅客機A2、イギリスの航空宇宙会社が計画発表

2008年02月07日 08:00

超音速旅客機A2イメージ【Daily Mail】などが伝えるところによると、イギリスの航空宇宙会社【Reaction Engines】が、マッハ5以上の速度で飛行する超絶音速旅客機「A2」の開発構想を発表した。最高速度は3400mph。キロに直すと時速5471.8キロになる。1秒間に約1.5キロ前進するスピードと表現すれば、その速さがお分かりいただけるだろう。この旅客機を用い、イギリスのロンドンやベルギーのブリュッセルから、シドニーまでを約4時間40分で飛行するとのこと。

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「A2」

「A2」

「A2」。旅客機というよりはロケットに近い。離着陸は普通の飛行機と同じようだ。
「A2」。旅客機というよりはロケットに近い。離着陸は普通の飛行機と同じようだ。

Reaction Enginesのサイトを見てもらえばお分かりの通り、同社では流線型の(一昔前の「いかにも宇宙船」のようなスタイルの)宇宙船の構想案を多数提案している。単に外見上のコンセプトモデルを作っているだけではなく、もっとも重要な要素の一つ、エンジン部分などの開発も行なっている。

「A2」はイギリスやフランスが開発したものの騒音のひどさや事故などが原因で2003年には姿を消した、超音速旅客機「コンコルド」のマッハ2をさらに2.5倍上回る速度で飛行する。それゆえなのか「A2」は「コンコルドの息子(Son of Concorde)」というキャッチコピーで喧伝されているという。

A2に使われるエンジンイメージマッハ1は音速と同じ速度。マッハ5となると音速の5倍の速度になる。それくらいの速さになると、まさに宇宙船と同じようなコンセプトで作らないと機体が持たないし、速度も出ない、ということなのだろう。重さは400トン(ボーイング747の440トンよりは軽い)、全長は132メートル。300人もの乗客を乗せることができる。

エンジンには液体水素を用いたものを搭載(まさに液体燃料ロケットと同じ)。静音性に優てはいるが、加熱問題が悩みの種のようだ。現在ではマッハ3までは通常のジェットエンジンと同じような仕組みを用いるものの、マッハ3を超えた時点で専用の冷却装置(冷却された空気を用いる)を使い、エンジンが「溶ける」のを防ぐそうである。A2は3万メートル上空をこの高速で飛行することになる。また、特別な飛行場は必要とせず、現在の国際航空の滑走路を使用できる。

一般的な旅客機、エアバスA380との比較。A2の形状が普通の旅客機といかに違うかがよく分かる。
一般的な旅客機、エアバスA380との比較。A2の形状が普通の旅客機といかに違うかがよく分かる。

一見荒唐無稽(こうとうむけい)な案のようにも見えるが、この構想には欧州宇宙開発協会(European Space Agency)やEUそのものからも支援を受けているなど、関係者らはかなり「本気」。開発費用(建造、ではない)は540万ポンド(約11億円)。開発担当責任者で同社の常務でもあるAlan Bond氏も「今の常識では無茶なように聞こえるが、未来においてもこのプロジェクトが実現して日帰りオーストラリア旅行が出来ないと誰が断じることができようか」と、自分の構想に強い自信を抱いている。

気になる旅費だが、1人あたり2000ポンド(42万円)程度を想定。政治的なバックアップを受けることができれば、15年以内に商業ベースでの運航が可能としている。


「飛行機」と「ロケット」との違いをどこに見出すか、という問題さえ頭に思い浮かべさせてしまうこの「A2」。乗客の居住性(宇宙船のようにわざわざ宇宙服を着たり、事前に体力トレーニングを数か月もしなければいけないのでは「旅客機」としての存在意義はあまり無い)など考慮すべき問題は山ほどある。燃費や環境汚染の問題も持ち上がってくるだろう。商業ベース化するかどうかは正直疑問符がつく。

とはいえ、やはり半ば地球の正反対の位置にあるイギリスとオーストラリア間を民間機で日帰りできるという話は、魅力的であり驚きに値する。今現在サラリーマンやOLが「ちょっと今度の3連休にグアムに行って来るわ」と言うシチュエーションと同じように「ちょっと今度の日曜、イギリスに日帰りで旅行に行って来るよ」といえるような日が来るのだろうか。

ちなみにA2という名前は、かつてドイツが作りロンドンに向けて多数放たれたロケット兵器V2の元となった「A4ロケット」のテストパターンともいえる「A2ロケット」の名前と同じ。これについてBond氏は「すでに指摘を受けているが、偶然の一致に過ぎない(意図して名づけたものではない)」と説明している。その上で「もちろんこのA2旅客機をロンドンに落とすつもりは無いよ」とイギリス人ならではのジョークで追求をかわしているそうだ。

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