今度は金融保証事業に参入・見えてきたバフェット氏の新たな投資戦略

2007年12月30日 12:00

バフェットの投資原則イメージThe Wall Street Journal誌(電子版)は12月28日、世界最大規模の投資会社バークシャー・ハサウェイの最高経営責任者にして逆張り・バリュー・長期投資家として名を知られているウォーレン・バフェット(Warren Edward Buffett)が、アメリカの地方債を対象とする金融保証事業に参入することを明らかにした。元記事では「(市場の混乱で不当なまでに利率を高めねばならない)地方債について、より安価に地方自治体が資金調達できることを目指す」と説明している(【関連記事】)。

スポンサードリンク

バフェット氏、地方債の金融保証事業に参入・同業他社は戦々恐々

記事によるとバークシャー・ハサウェイはニューヨーク州に対して「バークシャー・ハザウェイ・アシュアランス(Berkshire Hathaway Assurance Corp.)」という社名で今事業の設立を申請。別報道によればニューヨーク州側では12月31日までに許可を与えるだろうと説明されている。同会社は都市や州が学校や上下水システム、病院など公共事業をまかなうために発行する地方債の保証を行なうことになる。

この新会社には早くもトリプルA(AAA)の格付けを与えられる見通しで、高い格付けで支持されることになるであろう地方債発行元の自治体、そしてそれら地方債を取り扱う債券投資家にはまたとない福音になるものと思われる。

同業者としてはMBIAやAmbac Financial(アンバック・アシュアランス)がトリプルAの格付けを持つところとして知られているが、最近は保証している債券の損失を拡大しており、その格付けを失うかもしれない状態にまで追いやられている。そこに今回バフェット氏による新規参入が行なわれることで、両社を含む多数のライバル会社からバークシャー・ハザウェイ・アシュアランスに、保証事業の依頼が移行するかもしれないという観測すら流れている。バークシャー・ハザウェイ・アシュアランスは今回明らかになったニューヨーク州での事業展開以外に、カリフォルニア、プエルトリコ(テキサス)、イリノイ、フロリダにも業務を拡大するつもりであることを明らかにしており、彼らの懸念は一部現実のものになるであろうことは想像するに難くない。

もちろん保証の大バーゲンをして、他社のように後になって信用保証の信頼性を問われて頭を抱えるようなことをするつもりは、バフェット氏にはさらさらないようだ。記事内でインタビューに答えた同氏は「すべての場所で事業は許可されるだろうが、私たちにできることには限りがある。すべてを保証することは不可能。そして慎重さを一義にし、危険を冒してまで保証することはしない(その事業の内容次第でほんのちょっぴりプラス評価をすることはあるかもしれないが)」とコメントしている。

バフェット氏によるこの新会社は地方債のみをメインターゲットとし、住宅抵当権やクレジットカードなどを担保とした債券など、いわゆる「ストラクチャード商品」への投資はしない、とも述べている。いわく「私たちはさまようつもりはない(We won't stray.)」とのこと。

すべてが互いにリンクする昨今の投資案件

今回バフェット氏が自ら「地方債の金融保証事業」に参入することが明らかになり、先の【相場傾向転換のきざし? バフェット氏が次々に「買い出動」】における行動がますます意味あるものとして見えてきた。つまり、

・ジャンク扱いされている地方公益事業の公債を買い
・地方の建設事業を支える設備系企業を丸ごと手中に収め
・地方債の格付けを自ら行い保証事業の「モラルハザード」を正すと共に「適切な」利益を得る


という、バフェット氏による「買い出動」行為が、すべて「地方や公益事業」を対象としていることが分かる。二言でまとめると

「市場が混乱しているために(不当に)ジャンク債扱い(されていると判断した)公債を買い、その上で地方公共事業には欠かせない設備系企業をおさえ、そして地方公共事業の資金調達に必要不可欠な地方債の保証事業を執り行い、地方自治体が資金調達をしやすくする」

「バフェット氏の会社の保証で地方自治体が地方債を適正価格で発行し資金調達が可能になれば、地方の公共事業も活性化して手持ちの設備系企業への受注もますます増加するし、ジャンク扱いの公債も破たんするリスクが減る」


といった具合だ。要は「買い出動」のすべてが(ダイレクトにではない部分もあるが)互いを補完し、リスク軽減と利益の拡大に貢献している図式になる。

450億ドルもの運用可能なキャッシュを持つバークシャー・ハサウェイだからこそできる技、「運用資金が巨大すぎて上場企業の証券を購入するのでは、市場に与える影響が大きすぎるがために選んだ投資方法」といえよう。あるいは「いまだに上場企業の証券は『有料銘柄が割安価格にある』対象は無い」と判断しているのかもしれない。どちらがよりバフェット氏の考えに近いのか、それは本人に聞いてみないと分からないし、聞いても答えてはくれないだろう(笑)。

(最終更新:2013/08/18)

Related Posts Plugin for WordPress, Blogger...

スポンサードリンク



 


 
(C)JGNN||このサイトについて|サイトマップ|お問い合わせ