子育て費用割合「エンジェル係数」過去最低に・二極化と子ども減少が原因か

2007年12月03日 06:30

子育てイメージ【野村証券(8604)】は11月26日、2007年における家計と子育て費用に関する調査結果を発表した。それによると家計支出に占める子育て費用の割合を示す「エンジェル係数」において、過去最低の26.2%を示していることが明らかになった。野村證券側では「子ども人数の減少」「年収による二極化」が主な原因であるとしている(【発表リリース】)。

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今調査は首都圏・京阪神に居住する、高校生以下の子どもがある世帯の20代以上の母親を対象にしたもので、有効回収数は700(首都圏・京阪神が350ずつ)。調査方法は郵送方式。調査時期は今年の7月。

「エンジェル係数」とは野村證券が1989年に豊かさの指標として設定した指数で、家計に占める子育て費用の割合を示す。費用には教育費だけでなく衣料、食費、身のまわり用品、書籍、遊び、こづかい、保険料、預貯金などまで含めた総合的な「費用」。生活スタイルの変化でぶれが大きくなり最近はあまり使われなくなったが、収入に占める食費の割合を示す「エンゲル係数」になぞらえて作られている。

そのエンジェル係数だが、最新の2007年データでは時系列として発表を開始した1991年以来最低の26.2%を示している。

エンジェル係数の推移
エンジェル係数の推移

過去最低の数字を示したことについてレポートでは「子ども数の減少」「景気回復が見受けられるが、慎重さから消費回復までには時間がかかっている」そして「年収の二極化で低所得層において子育て費用を引きしめたため」と分析している。実際、年収別に見てみると、平均年収が含まれる層の500~700万円未満では26.3%を示しているが、300万円未満の層では20.0%、300~500万円未満の層では22.1%と、平均値以下の数字が出ている。

具体的な金額を見てみると、2007年においては家計支出の平均は約27.4万円。それに対し子育て費用の実学は7.2万円にのぼっていた。1993年以降実額でも確実に減少していることが分かる。

家計支出額とそれにしめる教育費実額の時系列変化
家計支出額とそれにしめる教育費実額の時系列変化

ただし子育て費用の中でも教育費は現状維持に努めているようで、2007年でも38.7%と過去データと比べてもほぼ横ばいの状態。

子育て費用全体に占める教育費の割合変遷
子育て費用全体に占める教育費の割合変遷

なお教育費も年収による二極化が進んでおり、例えば平均年収層の500~700万円未満では39.9%なのに対し、300万円未満層では23.9%にしか過ぎない。

子育て費用を表す
エンジェル係数は
高さが豊かさを
表しているようだ

「エンゲル係数」は元々「いくら年収が増えても食事にかける費用はさほど変わらないはず。だから食費が年収に占める割合を計算すれば、その割合が低いほど豊かなはずだ」という考えに基づくものだった。エンジェル係数の傾向を見てみると、年収の減少や生活環境の厳しさ、少子化などの原因により数字が大きくぶれる傾向が見られるが、一方で「家計が金銭的に豊かであるほど比率・数字が高まる」という皮肉な結果が出ている。これは家計全体に占める「子育て費用」が完全には削れないものであるものの、容易に「節約しうる対象」にあることを示している。

エンゲル係数が「低ければ低いほど豊かである」印だったのに対し、どうやら「エンジェル係数」は「高ければ高いほど豊かである」指針になりつつあるようだ。

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