「配当を楽しみに」「優待目的」「老後のために」真の個人投資家の姿はけなげで慎ましい

2007年11月26日 06:30

株式イメージ日本証券業協会が11月に発表した個人投資家の証券投資に関する意識調査報告書によると、個人投資家の約7割が本人の年収は500万円未満であり、世帯全体の年収を算出しても700万円未満が過半数を占めていることが明らかになった。日本の世帯平均年収645万円と比較しても決して高いものではなく、「投資行動がお金持ちのすること」という一部に風潮されていることの真実性が疑われる結果となっている。

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今データは20歳以上の証券保有者に対して郵送による調査の回答を元に生成されたもので、有効回答数は1017。調査日は6月7日書類発送で21日締め切り。男女比は586対431、年齢階層は50代がもっとも多く210人、次いで40代が192人、20~30代が177人など。収入は500万円以下で7割弱を占め、証券全体の保有額は100~300万円がもっとも多く23.9%、ついで300~500万円が17.4%、1000~3000万円が17.1%。前者2者は現役のサラリーマンなど給与所得者、後者は定年間近あるいは定年後の人など恩給や年金生活者が主な階層。

「当人の年収500万円以下」が7割、「世帯全体で全国平均かそれ以下」も過半数

調査対象となった個人投資家に本人の年収と、世帯年収それぞれを尋ねてみたところ、前者は「300万円未満」と答えた人がもっとも多く4割をしめた。

個人収入
個人収入
世帯収入
世帯収入

また後者は「300万~500万円未満」「500万~700万円未満」がほぼ同数(それぞれ24.0%、23.6%)を占め、これに「300万円未満」の8.4%を足すと過半数が「700万円未満」という計算結果が得られた。

なお世帯収入についてだが、総務省が発表した2006年における全世帯平均年収は645万円。平均世帯収入かそれ以下の個人投資家が56.0%を占めているということになる(逆に考えると、妻や祖父母の年金による収入が平均して200万円前後かさ上げしている計算も導き出される)。

「個人投資家」というと聞こえが良いが、実際には年収数千万をバリバリ稼ぎ、リッチな生活を満喫しているセレブなイメージとは遠くの位置にある人がほとんどなのが分かる。

個人投資家は案外堅実派・長期投資方針

金融商品のうち株式や投資信託など証券の類を保有している額と、その理由についてたずねてみたところ、保有額は世間一般に想定されているよりも少なく、そして堅実であることが分かる。

証券保有額
証券保有額

■証券の購入・保有目的(複数回答)

・配当金や分配金などを得るため……52.0%
・長期資産運用のため……51.2%
・老後の生活資金のため……34.3%
・株主優待を得るため……19.3%
・短期的に儲けるため……12.2%
・子どもや孫の将来のため……11.5%
・証券投資を介して勉強するため……10.5%
・対象企業などを応援するため……10.1%
・耐久消費財の購入やレジャーのため……3.9%
など


証券の保有額は6割以上が500万円以下。5000万円以上を保有しているツワモノも少なからずいるが、大多数は少額投資家であることが分かる(注意してほしいのは今調査結果は若年層だけではなくすべての年齢層を対象にしたデータであること。年金生活者や退職者など「小金持ち」の可能性が高い層もあわせてこの数字が出ている)。

また、投資目的としては、世間一般の批判対象となっている短期売買を目的としている人は1割強に過ぎず、預貯金と似たような形で配当金を楽しみにしたり、長期的な保有による運用を考えているなど、企業や投資活動を推し進めている政府にとっても「望むべき」投資スタイルをとっている人がほとんどであることが分かる。

(生き残っている)個人投資家が、中長期投資方針である場合が多いことを裏付けるのが次のデータ。平均的な株式の保有期間をたずねたところ、次のような答えが出ている。

株式の平均的な保有期間
株式の平均的な保有期間

全体では7割強、若年層でも6割強、ネット証券を利用している人でも5割強が「1年以上の長期保有」と回答している。驚くべきなのはネット証券利用者における平均的な保有期間の短期売買者の少なさで、その短期売買の部分を特に抽出すると、

■ネット証券利用者
・1日(デイトレーダー)……0.4%
・2日~1か月……5.1%
・1か月~3か月……6.7%
・3か月~6か月……14.5%


ネット証券利用者限定でも
デイトレーダーはわずか
0.4%に過ぎない

となり、純粋なデイトレーダーはわずか0.4%(個人投資家全体で、ではなくネット証券利用者に限定して)となる。さらにスイングトレーダーの定義は諸般あり区分に迷うところだが、仮に2日以上3か月未満保有とした場合には11.8%、6か月未満としても26.3%に留まることが分かる。「ネット証券の普及でデイトレーダーやスイングトレーダーなどが増え、本来の『投資』ではなくゲーム感覚で株式投資をしている人が急増している」というイメージがあるが、確かに一般投資家と比べると増加しているものの、よく言われているように「石を投げればデイトレーダーに当たる」という割合とは程遠いことが理解できる。


数字を追いかけてキーボードをかちゃかちゃ叩くだけで一日に数百万円、数千万円も利益をあげる(ように見える)デイトレーダーやスイングトレーダーが盛んにテレビに露出していることもあり、「証券投資はゲーム感覚でお金儲けをしている。けしからん」という印象が世間一般に植え付けられている。しかし実際にはデイトレーダーの「現存数」はわずかに過ぎず、大抵の人がすぐに大きな損失を抱えて「退場」させられていることが分かる(デイトレーダーのうち1年後に損失を抱えずにトレードを続けられ、生き残っている割合は5%とも1%ともいわれているくらいだ)。デイトレーダーの数が減らないように見えるのは、長期間続けている人が多いからではなく、新陳代謝が激しいからにすぎない。

個人投資家のほとんどは
ごく普通の給与所得者や年金生活者。
少しでも生活をよくしよう、
将来に備えようとして、
手段の一つとして
投資を選んでいるに過ぎない

「株式などの証券への投資を行なう個人投資家」と聞くと、お金持ちが道楽がてらにしているイメージが強い。実際、メディアに登場する人たち(大成功者)はそのような人たちばかりだ。しかし実際には今調査結果にあるように、預貯金と同じように配当や分配金を楽しみにしたり、長期的な運用を試みていたり、老後の資金の支えや株主優待を楽しむなど、ごく普通の庶民層が「少しでも生活を良くしよう、将来に備えよう」と必至に努力を続け、その手段の一つとして投資を選んでいることが分かる。

当サイトの読者のほとんどは誤解していないとは思うが、もし個人投資家を「皆が皆、セレブでリッチで左うちわ、楽してゲーム感覚でお金儲けをしている人たちばかり」とイメージしている人がいたら、ぜひとも考え直してほしい。ほとんどの人が、リスクのとり方に違いがあるだけで、こつこつと預貯金をしている人となんら変わりがないのだから。

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