メリルリンチの最高責任者オニール氏、サブプライム関係損失の責任などで事実上の解任

2007年10月31日 06:30

株式イメージ先に【米メリル、サブプライムで評価損9100億円に拡大し赤字転落へ】で報じたように、サブプライムローン(信用力の低い個人向け住宅融資)関連で巨額の損失をこうむり赤字に転落した、アメリカの証券会社大手のメリルリンチは10月30日、スタンレー・オニール(Stan O’Neal)会長兼最高経営責任者(CEO)の退任を正式に発表した。公認には暫定会長として社外取締役のアルベルト・クリビオーレ(Alberto Cribiore)氏があたり、正式なCEOを探すとのこと(【発表リリース、英語】)。

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今回のオニール氏退任(事実上の更迭・解任)についてメリル側の発表では「取締役会とオニール氏自身が、トップが替わることでメリルリンチの業績を維持し向上することができると判断し、今回の退任に同意した。サブプライム問題やCDOによる損失云々は関係ない(The company said Mr. O'Neal and the board of directors both agreed that a change in leadership would best enable Merrill Lynch to move forward and focus on maintaining the strong operating performance of its businesses, which the company last week reported were performing well, apart from sub-prime mortgages and CDOs.)」と説明している。

暫定会長として後任の座についたクリビオーレ氏は2003年からメリルリンチの社外取締役を務めており、投資会社ベレーラ・キャピタル(Brera Capital)の創設者などでもある。また、正式な後任には以前から報道されているように、メリルの関連資産運用会社ブラックロックのローレン・フィンク会長、あるいはNYSE(ニューヨーク証券取引所)のジョン・セインCEOなどが浮上している。また、メリル内部の有力者を昇格させて就任される可能性も示唆されている。

サブプライム問題で巨額の損失をおったとはいえ、CEOが事実上の解任という事態に陥ったのは、オニール氏が取締役会の承認を待たずに自社の合併(売却)を、アメリカの第四位銀行ワコビアに打診。それが発覚したことが直接の原因ともいわれている。メリルリンチの危機を救うためのオニール氏による独断、という話もあったが実際には割り増しの退職金を手に入れるための行為とも受け止められ(アメリカの一部報道によるとメリルリンチでは経営陣が他者の買収で解雇された場合、割り増しの退職金を支払う制度がある。オニール氏の場合、2.5億ドル(288億円)を受け取れる可能性があった)、これが他の役員の猛反発を受けたもよう。

一方「更迭」の場合には割り増し退職金がナシになるだけでなく、手持ちの自社株すら放棄させられる可能性もあったという。サブプライム問題で更迭させられることもありうると踏んだオニール氏が先手を打ってひそかに合併を打診したものの、それがバレてかえって反発を受けたということだ。今回あくまでも「更迭・解任」ではなく「辞任」の形に落ち着いたのは、会社そのものの体面や混乱を避けるためのものだろう。

なおサブプライム関連損失の責任を問われ、アメリカの大手金融機関トップが事実上解任されるのは今回のメリルリンチのものが初めてとなる。

(最終更新:2013/08/18)

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