日経新聞の足元に忍び寄る電子公告化への動き

2007年10月03日 06:30

株式イメージ先日から【「新聞没落」…週刊ダイヤモンド最新号を読み解く】【日経・朝日・読売による「ANY連合」正式発表、販売事業分野でも業務提携】でもお伝えしているように、大手新聞社(も含めた新聞社全体)では新聞離れの傾向やインターネットの普及による財務的な問題への危機感を強め、さまざまな手を打ち始めている。とりわけ大手新聞社の中でも勝ち組とされている「ANY連合」こと朝日新聞・日経新聞・読売新聞は共同サイトを構築するなど、「呉越同舟」よろしくこの難局を乗り切ろうと必至である。この三社のうち、比較的広告収入が安定していると思われていた日経新聞が、実は他の二社とは違う事情からインターネットに深い関係を持つ部門で追撃を受けていることが明らかになった。その追撃をしている者とは「電子公告」である。

スポンサードリンク

元々朝日新聞は「株式の価値は1兆円」「超優良資産を山ほど保有している」、読売新聞は「売上高・発行部数国内ナンバーワン」などの実績を持っている。それでも経営上の危機感を強く認識するほど、現在新聞業界を取り巻く状況は厳しい。一方日経新聞は経済面に特化していることもあり、経済系の広告が安定しており、販売収入はともかく広告収入は安定しているといわれている。また、株主総会の際などに決定事項を世間に広く知らしめる「公告」を行なう媒体先として事実上独占に近い形で選ばれている(法律上は「時事に関する日刊新聞紙」とされている)。これによる収入も見逃せないものがある。株主総会が集中する6月に、日経新聞の別折で総会に関する分厚い特集が入るのがよい例だ。

新聞上の「公告」は
事実上日経新聞の
独占市場。
企業・日経間の
パワーバランスも
日経>>企業

もちろん各種公告を定期的に載せるプラットフォームとして日経が選ばれているから、自然に日経と各種企業との間柄は良くなる。日経に経済系のスクープ記事が多く、広告も多数展開されているのも当然の成行き。

しかしこれが【電子公告制度について(法務省)】の説明にもあるように、2005年2月から事情が変わりつつある。官報や日刊新聞紙以外は認められてなかった合併や資本減少などの各種公告を、インターネット上(ホームページ上)に掲載することで告知要件を果たすことが認められるようになったのだ。簡単に言い換えれば「会社のホームページに掲載すれば、公告内容を日経新聞や官報に掲載しなくても済む」ということ。

もちろんウェブサイト上で公告を行なうには定款の変更をしたり官公庁に申請をしたり登記を行なうなど、各種手続きが必要になる。よって、施行は2005年2月ではあるが、すぐにすべての会社が電子公告制度にスライドしたわけではない。また、新聞などの紙媒体には紙媒体ならではの良さがあり、電子公告制度が実施されても移行を考えていない会社も多数見られる。

公告の電子化で
日経の収入減。
さらに日経・企業間の
パワーバランスが
崩れる可能性も。

しかし手間や経費の上では、従来の官報や日経新聞への公告と比べ、電子公告制度を用いた方がはるかに安上がりで済む。これまでの「お付き合い」の関係を打ち切ることになっても、電子公告に移行する会社は少しずつだが確実に増えつつある。

日経新聞側としては定期的な収入源の一つであり、各種スクープや通常ニュースソース、そして一般の広告取得のきっかけにもなっていた「公告」。それが少しずつ、インターネットという新参者に奪われつつあるのが日経新聞の現状における一側面といえる。

先の「新聞没落」に掲載されていたグラフでは、2006年までの間で日経新聞の広告収入はさほど減少していないように見える。しかし電子公告化が浸透すれば確実に「公告」費は減り、それと関連して「広告」費も減るだろう。そして各種企業と日経新聞との「立場」にも微妙な変化が生じるかもしれない。

単に「新聞の」読者をインターネットに奪われるだけでなく、「公告」の面でも足元を脅かされている。新聞各社がインターネットに強い反発心を持ちつつもその実力を認め、活用して自らの力に取り込む理由が分かるというものだ。

(Special thanks to 【Matsumoto FP Office】)

Related Posts Plugin for WordPress, Blogger...

スポンサードリンク



 


 
(C)JGNN||このサイトについて|サイトマップ|お問い合わせ