朝食を取らない20代男性33.1%・「いただきます」ができない男子小学生9.6%~2007年度版「食育白書」発表

2007年10月30日 19:35

家族で食事イメージ政府は10月30日の閣議で2007年度版の「食育白書」を決定した。2005年に志向された食育基本法に基づく白書で、今年で2回目となる。食べ物や栄養など「食」に関する総合的な知識を身につけることを目的とする「食育」だが、今年の白書では特に家庭に重点が置かれた内容となっている(【発表リリースページ】)。

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食育イメージ「食の教育」あるいは「食を育む(はぐくむ)」の造語ともいえる「食育」だが、単に物を食べること自身に留まらず、生きる上での基本であり、知育や徳育、体育の基本となり、さらに健全な食生活を実践することができる人間を育てることを意味する。特に2005年7月15日に「食育基本法」が施行され、総合的・計画的に「食育」を推進することが政府に求められるようになった。

難しい言葉を色々並べているが、要は「ご飯を食べなきゃ幸せになれないけど、ご飯を単に食べるだけではなくその周囲にあるさまざまなことを学び、周辺までひっくるめて『食べて』知識として消化してしまおう。そうすれば身体そのものだけでなく、人間自身全体として『成長』することができる」という期待の元に、色々な食及びその周辺の事柄を教えていこうというものである。

家庭での取り組みが大切

白書では現状で見直しが必要な食生活を送っている人を正したり、食に関する知識を深めねばならない人たちに「食育」の必要性を知ってもらうには、特に家庭での取り組みが重要だと位置づけている。そして地域ぐるみで(特に子どもを生んだ女性や乳幼児が正しく栄養を摂れるよう)栄養指導を実施し、啓発普及を促進。乳幼児・小学校低学年~中学年・小学校高学年~中学生のそれぞれの発達段階に応じた3分冊の食育に関する内容を盛り込んだ「家庭教育手帳」を配布することや、特に子どもの肥満を防ぐための地方自治体の取り組みを、国でも支援していくことを盛り込んでいる。

「栄養教諭」は増加中・現在986人

栄養教諭イメージ食育教育の中でポイントの一つとされているのが「栄養教諭」の存在。これは学校の現場で食べ物や栄養など「食育」専門の先生で、食育基本法の施行と共に誕生した。公立小中学校に成立当初年度の2005年度末では4道府県34人しか存在しなかった栄養教諭も、2007年度9月末現在で45道府県986人が配置されている(東京都と静岡県には配置されていない)。

白書では具体例として富山県富山市立萩浦小学校の事例が挙げられ、栄養教諭を中心に各方面が積極的に食育に取り組んだことで、食欲の増進や生活リズムの改善、好き嫌いなど食事そのものだけでなく生活全般において、子どもだけでなく保護者にも好影響を与えたと報告されている。

富山県富山市立萩浦小学校の事例における食育への積極的な取り組みの成果事例
富山県富山市立萩浦小学校の事例における食育への積極的な取り組みの成果事例

市町村レベルで進まない「計画作成」、掲げられた目標群

各都道府県及び市町村別にそれぞれ食育を推し進めるための「食育推進計画」の策定が求められているが、都道府県別では従来全都道府県に策定されねばいけないところ、40都道府県で計画が作られ、具体的数値目標が多岐に渡り設定されている(未作成は7県)。

一方市町村別に見ると政令指定都市では17か所中5か所、市区町村では1817か所中70か所と、全体のわずか4.1%しか作成されていないことが明らかにされた。2010年までに過半数の市区町村で策定されることが求められているが、都道府県レベルより一層地元に密着している市区町村のほとんどで、「食育」に関する計画そのものが半ば放棄されていることが分かる。

一方白書では食育に関する各種項目で目標値を定めているが、それらの項目における現状値及び2010年度までに達成すべき目標値も公開された。主なものは次の通り。

・食育に関心を持っているか……69.5%(90%以上)
・朝食を取らない人の割合
  子ども……3.5%(0%)
  20歳代男性……33.1%(15%以下)
  30歳代男性……27.0%(15%以下)
・「地産地消」を学校給食で実践しているか……23.7%(30%以上)
・メタボリックシンドロームを知っているか……58.8%(60%)
・食品の安全性に関する基本的な知識を持っているか……66.4%(60%以上)

※カッコ内は2010年度中までに達成すべき目標値


状況の変化もあり、すでに目標値に達している項目もあるが、中には目標作成時より悪化している(例えば20歳男性の朝食を取らない人の割合)項目もあり、全般的な「食育」が求められている。

食事のマナーも「食育」

白書ではさまざまな「食育」に関連する調査結果も報告されている。例えば食事をする際に「いただきます」「ごちそうさま」などのあいさつをすると答えた小学生の男子は全体の63.4%に過ぎず、27.1%は「時々しないことがある」、9.6%にいたっては「いつもしない」と答えている。

食事のあいさつ(小中学生、2005年度)
食事のあいさつ(小中学生、2005年度)

照れ隠しからなのか一人で食事をする機会が多くなるからなのかは不明だが、小学生よりも中学生の方が食事時のあいさつをしない割合が多い。

低い数字に見えるがこれでも実はまだ高い方で、同じ調査機関がさらに5年前の2002年に調査した結果では、「あいさつをする」割合はそれぞれ5~10%ほど低い値を示していた。例えば男子小学生の場合2002年においては「いつもあいさつする」51.6%、「時々しないことがある」36.4%、「いつもしない」が12.0%だったという。

マイ箸イメージ「食育」の成果が見えてきたからなのか、「食育」とわざわざ旗を振って問題視するまでもなく各自が「あいさつくらいは」と考えるようになったのかは分からないが、食に対する感謝の意を言葉に表すことは「食育」上の基本として欠かせないものであり、より高い割合が望まれるところだ。

一方「お箸(はし)」の持ち方については、正しい持ち方を選択したのは小中学生全体で6割にも満たない56.6%という結果が出ている。ただし小学生の保護者で74.9%、中学生の保護者でも75.0%しか正しい持ち方をしていないこともあり、「食育」においては「家庭内」はもちろんだが「親が子どもに教える」だけではなく「親も子ども一緒になって学ぶ」姿勢が求められていることが分かる。


今回発表された「食育白書」では、食事を取り巻くさまざまな現状と課題について、国レベルで認識している内容が事細かにデータ化され報告されている。中にはきわめて興味深いテーマもいくつか見受けられるので、後ほど日をあらためて必要な項目についてピックアップし、詳細を見ていくことにしよう。


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(最終更新:2013/08/18)

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