イギリスのバルカン戦略爆撃機、14年ぶりに再飛行

2007年10月21日 12:00

バルカン戦略爆撃機イメージ【DailyMail】が伝えるところによると、フォークランド紛争で活躍したのを最後に1984年に退役したイギリスのバルカン戦略爆撃機(XH558)が、17年ぶりの10月19日に再びイギリスの空を舞った。飛行のためのオーバーホールには総計で600万ポンド(14億円)の費用が投じられたという。

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このSF映画に出てきそうなデルタ翼(上から見ると三角形をしている翼を持つ飛行機)の爆撃機アブロ・バルカン(Avro Vulcan)は、第二次大戦後間もない1947年から開発を開始。大戦中に航空機技術を飛躍的に躍進させたドイツの技術を取り入れ、当時冷戦真っ只中にあった状況を考慮して高高度からの核攻撃を想定した構造が採用された。1956年から量産が開始されたが、直後にイギリスの戦略が「戦略爆撃機から戦略原子力潜水艦」にスライドされたため宙に浮く形となる。

機体そのものが丈夫なため、通常爆撃任務も付加され、1982年にはフォークランド紛争で空中給油を受けつつもイギリス領セントヘレナ諸島にある基地から出撃し、通常爆撃を敢行。同機唯一の実戦任務を無事に遂行した後、1984年には全機が退役している。

その特徴的な形状や、通常装備とはいえ実際に活躍した機体であることもあり、バルカン戦略爆撃機に対するイギリス人の想いは強いようで、今機XH558の復活プロジェクトには多数の寄付金が寄せられた。中には一人で50万ポンド(1億2000万円)も寄付した人(Ex-Wolverhampton Wanderers議長のSir Jack Hayward卿)もいた。最終的には3500人のメンバーがプロジェクトに加わったという。ちなみにこの機体を通常通りに飛ばすと1年間で160万ポンド(3億8000万円)の費用が必要になるという。

オーバーホールには機体内の腐食の修復に始まり、機体そのものの強化や電気系コントロールシステムの刷新、各種航行用機器の積み替えなど、「現在の空」を飛ぶために必要な処理が行なわれた(オーバーホールというよりは再構築の方が表現としては適切かもしれない)。

今回飛んだのはあくまでもテストフライト。今後何度か同様の飛行を行なって機体のチェックを実施し、イギリスの民間航空局の許可を得た上で、来年春からの航空ショーでその姿を全世界に披露することになる。

テストフライトでは3000フィートの高さまで達した上で20分間の飛行を行なった。復活プロジェクトのリーダーは「(オーバーホールによって)バルカン戦略爆撃機はすべての現行航空機の通常スペックを満たしています」と述べている。


バルカン戦略爆撃機テストフライト時の映像その1

バルカン戦略爆撃機テストフライト時の映像その2。よほど良い場所から撮影したようで、臨場感あふれるビジュアルとなっている。

なおこの機体、許可を取得した上で航空ショーなどで活躍を果たし第二の人生を過ごしたあと、イギリスの航空宇宙博物館に寄贈されるとのこと。

最新情報については今プロジェクト【「Sky Trust」の公式サイト】に詳細が記述されている。興味のある人はこちらでチェックを続けるとよいだろう。

もちろん同機は武装を取り外した「航空ショー用機体」設計に生まれ変わっているし、オーバーホールのプロジェクトそのものははるか昔からスタートしている。先にロシアの爆撃機がイギリス近辺に出没し、イギリス空軍のスクランブルを招く事態が発生しているが、今件はそれとはまったく関係がないので、念のため。


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