日本テレビ、自民党総裁選で「盗撮」、無記名投票を有名無実のものに

2007年09月24日 12:00

投票イメージ昨日9月23日に行われた自由民主党の総裁選挙の結果、新しい総裁には麻生太郎幹事長を破り、福田康夫元官房長官が選出された。その総裁選挙の投票時において、本来誰がどちらに投票すべきか分からない主旨で行なわれる「無記名投票」において、日本テレビの【真相報道 バンキシャ!】が望遠カメラで盗撮を行い、自民党の杉村太蔵議員が誰に投票したのかを番組内で公開していたことが明らかになった。23日の番組中に放送された。現在同番組公式サイト上では今件に関する解説の文面は掲載されていない。

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杉村太蔵議員は俗にいう「小泉チルドレン」の一派ともされ、選挙前の打ち合わせで福田派に賛同するよううながされて席を立ったことが伝えられるなど、どちらに投票するかに注目が集まっていた。しかし投票そのものが「無記名投票」で行なわれる以上、だれがどちらかに投票したかは秘されるべきである。公開されてしまっては投票そのものが恣意的なものになり、公平性に欠けてしまう(自分が選挙に参加する際、記名投票だったらどう思うかを考えれば容易に理解できよう)。

番組では望遠レンズを用い、杉村議員が「つい立で隠された投票用紙記入用の机の上で」鉛筆を走らせるところを映し出し、麻生氏側に印をつけているところを写していた。さらに

「福田氏支持を表明した小泉チルドレンたち。しかし杉村太蔵議員を望遠カメラで見てみると……杉村さんはどっちですかね……あ、麻生太郎さんですね」


とナレーション(一部は画面上文字幕付)と解説し、「無記名投票」を有名無実のものとした(リンクは掲載しないが、各種動画投稿サイトで「日本テレビ」「盗撮」「総裁選」あたりをキーワードにして検索すれば容易に見つかるはず)。

公開の場で行われたことや、公務員の公選選挙でないこと(あくまでも自民党の総裁という、グループ内の長を決める選挙)から、今回の盗撮行為は公職選挙法の第225条「選挙の自由妨害罪」及び第227条「投票の秘密侵害罪」には該当しないものと思われる。しかし実質的に一国の総理大臣を決める選挙に結果が直結することから、解釈的に準適用されうるのでは、とする意見もある。

さらに日本国憲法第15条の4では「すべて選挙における投票の秘密は、これを侵してはならない。選挙人は、その選択に関し公的にも私的にも責任を問われない」とあり、憲法の精神に反することは間違いない(第15条の主文は公務員選定・罷免について言及されているが、1から3が「公務員」とわざわざ明文化しているのに対し4のみそれがないことから、選挙制度そのものの精神に対するものと解釈)。

国民に不利益となるような国政を追求したり、社会的に問題があるような事情について「取材」という名前で盗撮行為が行われた場合、問題行為には違いないが「報道の自由」「表現の自由」を盾にしたり、情状酌量の余地はあるだろう。しかし今回の場合、単なる好奇心、視聴率稼ぎや世情のあおりたてのためだけに行なわれた行為であり、釈明の余地はない。マスコミが常日頃から主張している「社会正義」からもっとも遠い行為であることは間違いない。

「公式の場で、オープンスペースでやっているのだから問題はない」と今回の日本テレビの行為を肯定する意見があるとすれば、「ならばアイドルのステージで、舞台真下からスカート内を盗撮しても良いのか」「海水浴場の水着姿の女性を特殊な赤外線カメラで撮影して良いのか」と反論できよう。もちろん良いはずはない。

これら二例は極端な例であるが、その場がおおやけの場であっても「被写体が『見られたくない』と考えて、意図的に隠しているもの」をその被写体の意図に反して、しかも「特殊な器材」で撮影している以上、倫理的はもちろん、法的にも問題があることは明らかである。

日本テレビといえば7月21日、系列局(中京テレビ)スタッフが中越沖地震の避難所に発信機付マイクを無断で設置していたことで、新潟県柏崎市から厳重注意と抗議を受けている。その時はあくまでも地方局の行為であったため日本テレビ本局云々という話はなかったが、今件はまごうことなき本局での行為。法的解釈問題は別にしても、放送倫理に抵触していることは間違いなく、【BPO/放送倫理・番組向上機構】で取り扱うべき問題といえるだろう。

仮に今件がまったく問題なく正当化された場合、おおやけの場にいた場合にはどんな器材を用いられて撮影されたとしても、「報道の自由」「表現の自由」を盾にされ、何の文句も言えなくなってしまう。これを「自由」と呼ぶべきなのか、それとも「解釈の暴走」と呼ぶべきなのか、判断は人それぞれだろうが……。

あるいは逆に、関連スタッフが同じようなことをされた場合、そして苦情を述べようとすると「今回の報道に絡み、同様の行為をされた場合に制作側はどのような対応をするのかという『報道』が目的です。『表現の自由』にも適います。そうですよね?」と反論された場合、何と答えるのだろうか。

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