失敗しない「サイト運営の十戒」

2007年09月08日 12:00

先日【4Gamer.net】で、多人数同時参加型ネットワークゲーム(MMORPG)の一つとして世界中に名を知られている【World of Warcraft】を運営するブリザード社のMike Morhaime社長による公演レポートが掲載された。中でも注目されたのは『World of Warcraft』(をはじめとするMMOPRG)に関する10の教訓こと「十戒」。そこでそのMMORPGへの十戒を元に、サイト・ブログ運営に関する十戒を考えてみた。

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原文の「MMORPGへの十戒」はブリザード社が世に送り出した数々の作品から得られた経験によるもの。それとの比較をすることも合わせ、原文と異なる場合には()内に原文を併記しておく。

1.市場のニーズを知れ

人気を得るサイトやブログ(以下サイトと略)を作りたい、運営したいのなら、世情のニーズを知り、それにマッチしたものを送り出すこと。YouTubeが世に広まりだしたころならYouTubeの楽しみ方や興味深い動画のまとめ、Wiiが爆発的ヒットを得そうな時期にならWii関連の特集サイトなど。

ただ、法人・商用サイトならともかく個人サイトの場合、世の流行り廃りに迎合してサイトを創ったり運用するのはお門違いな面もある。元々個人ベースのサイトは「自分の思うがまま、好きなものを」が原則だからだ。

この「市場のニーズを知れ」についてはむしろテーマのレベルではなく、自分の好きなサイトテーマの中で、どのようなニーズがあるのかを知ってサイトの機能や構成を考える、と解釈すべきだろう。例えば、デジカメ機能付携帯電話の普及は一目瞭然なのだから、料理関連サイトやペット情報サイトにおいて、携帯電話で気軽に投稿して他人に披露できる「携帯電話での投稿機能つき掲示板」を設置する、という具合だ。

2.ブランドを守れ

これは自分が展開するサイトの「色」を徹底的に貫け、ということを意味する。複数の成りきりキャラクタを想定して、それぞれに別のサイトを運営するのも良いが、サイトそれぞれの個性・特徴・ブランドは固守する必要がある。

内容やテーマが同じでも、元々硬派な記事やレイアウトだったのに、数か月ごとにフランクな体裁、けばけばしいテキストサイト、そしてまた固めの新聞社風サイトに様変わりしていたのでは、読者はついてこない。

3.早めにサイトをリリースしてしまおうなんて思うな(早めにゲームを~)

SEO関連の解説サイトなどでは「タイトルと外枠だけでも出来上がったら、とにかくまずはリリース。肉付けは逐次行い、常にNow Printing状態が○」という説明をしているところもある。常に新しいものが出来ているという活性感を得られる点では良いかもしれないが、「一見さん」の心境を考えるとマイナスが大きい。

はじめて訪れた読者が、あちこち「工事中」「準備中」の表記をみかけたらどう思うか。自分の立場になって考えてみよう。印象は最低ランクに下がるだろうし、二度と来ないかもしれない。好きな映画や作家のサイトならともかく、自分がよく知らない人物が創っているサイトならなおさら。ましてや、機能上問題があり、不具合が生じているプログラム込みでのリリースなど問題外。

サイト運営イメージ

4.何でもアイデアを取り込もうなんて考えないこと

サイトを創ろうとする時には「あれをやろう」「この機能をつけよう」「こんなコーナーがあるといいな」と色々考えてしまう。新しいツールやスクリプトを導入したくもなる。しかしそれらのアイディアをすべて盛り込むのが最良の選択なのか、考え直す必要がある。

消化不良を引き起こしてしまうかもしれないし、そもそも盛り込む量が多いと途中でモチベーションが尽きてしまうかもしれない。また、既存の古いツールの方がユーザーにとっても運営側にもプラスになる場合も多い。

極論として、最初にリストアップした要素の1/10、古いツールやスクリプトだけでも十分成功を収めることはできるはずだ。新しければ、量が多ければよいというものではない。

5.需要を考えよう

「1.」と似ているが、これはうらやむべき物理的問題。当初想定していたよりはるかに多いアクセス・人気が出たとき、サーバーやプログラムの負荷が耐え切れなくなってしまうこと。投稿掲示板を設けたが「あまり人気はないだろう」とサーバー容量を少なめのプランで運営をスタートさせたところ、大人気であっという間に容量がパンクしてしまった、というのが具体的な例だろうか。

もっともこのような「多すぎちゃって困るの♪」的な戒めは、その時が来てから悩めばよい、という感じもする。多少の負荷にも耐えられないスクリプトを利用するのは(例えばカウンターなど)問題があるが。

6.人材確保をないがしろにしてはならない

個人サイトなら考える必要のない話。ただし大型のコミュニティサイトや共同運営サイト(同人誌系)の場合、共同管理者や技術協力者のあてを考えておく必要があるだろう。また、(人材、とは少々異なるが)安心して相談が出来るようなコミュニティや相談相手、類似サイトの仲間がいた方が心強い。

7.サイト運営では構築とコンテンツの掲載だけで満足すべきではない(MMORPGではゲーム開発だけで~)

サイトの立ち上げが終われば、あとは創られた骨組み・システムに従い、ルーチンワークのように作業化していくことがサイト運営のすべてと考えがち。確かにその方が楽ではあるし、逆に考えれば楽が出来るようにシステムは用意されている(ブログことウェブログシステムも、元々ウェブサイトを簡単に運用するための「システム」である)。

サイトの正常稼動に留意するのはもちろん、使用しているスクリプトのバージョンアップへの注視、類似サイトのモニターと良いアイディアがあれば「参考」にするか否かの検証、世の中の流れに対応した機能アップ、購読者のニーズの把握と反映など、ルーチンワーク以外に手がけなければいけないことは山ほどある。

8.意思伝達を怠るな

サイトの特性によっては意図的にサイトの管理人の存在をぼかして情報伝達に徹する、という手法もある。そのようなポリシーに基づいたサイトならともかく、何らかの形で管理人の「顔」「個性」を出しているサイトは特に、自分の意志を明確にし、ぶれを見せないことが必要。

また、サーバーメンテナンスやサイト上の不具合が生じた場合には、速やかに実情を把握し、その詳細を読者にお知らせできる体制を作っておくべき。もちろん事前に分かるのなら「○月×日にサーバーメンテナンスのため、アクセスができなくなります」などの告知をしておくべきだろう。運が悪い読者はその時にサイトを訪れ「突然サイト運営が終わったのかな」と読者であることを止めてしまうかもしれない。

9.金儲けを企む輩は排除せよ

掲示板やコメント欄、トラックバックなど、読者参加型の機能を用意していると、必ずやってくるのがスパム行為。ある時は堂々と、ある時は善意の読者をよそおって、彼らはサイトへ侵攻を図る。読者が彼らの手中にかかると、悪質な情報や販売品への誘導を受けてしまう。サイト自身や管理人本人にはその意図はまったくないにも関わらず、だ。

もちろん【愛をもって(長きに渡りよいサイトを運営し続けるツボ4か条)】という前提はあるが(笑)、対処そのものは厳正に行なう必要があるだろう。さもなくば、本当に善良・善意の読者にまで迷惑をかけてしまう。

彼らへ対処には配慮やちゅうちょをする必要はない。元々そのようなリスクを考慮した上での行為であるし、それ以前に大部分が自動プログラムによるものであって、配慮の対象ですらないからだ。

先日当方が運営している別ドメイン(jgnn.com)で、毎日数百件ものメール送信エラーが管理メールアドレスに送られてくるという現象が置き、その原因が分からず頭を抱えていた。色々調べてみると、半ば忘れ去っていた、そしてそのゲームの資料的価値が高いとのことでそのままにしていたゲームサイトの掲示板が自動スパムプログラムの餌食になっていた。その掲示板の投稿時お知らせメールアドレスが現在存在しないものだったため「送り先がない」というエラーが管理側に送信されていたのだ。

つくづくこの項目を胸に刻み込むと共に、ざっくりと対処。かくしてエラーメールに悩まされることも無くなった次第である。

10.サイトテストは余裕を持って(ゲームテストは余裕を持って)

個人ベースのサイト運営ではスケジュールなどほとんど調整していないだろうが、あまりに急なサイトのオープンをすると、「3.」などのような問題を生じてしまう。一度完成型が出来上がってもすぐに公開はせず、自分や身内、ごく親しい仲間にだけ公開して不具合があるかどうかのチェックをしてもらった方が良い。

また、情報発信系のサイトならある程度記事がまとまって来てから公開した方が、「一見さん」の印象も良くなる。はじめてやってきたけど記事が一日分しかなかった、ともなれば「これから毎日更新するんですよ~」と管理側が主張しても、そのボリューム感を実感することはないだろう。


多少強引なところもあることは否めない。一部で触れた「個人サイトなのだから利用者に迎合することなく、唯我独尊で行けばよい。内容がよければ多くの人がついてきてくれるさ」といった職人気質の人もいるだろう。あるいはそもそも論として「人気が出る、読者が多いサイトが良いサイト・成功するサイトなのか? 来場者がほとんど無くとも、自分自身を貫いていれば良いサイトではないか」とする意見もある。

しかしそれらを考慮しても、この「十戒」は(自分自身への戒めと共に)役立つことだろう。特にこれからサイトを創ろうと考えている人には、一読してほしいものである。


(最終更新:2013/08/19)

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