「仕事がツラい」=「結婚できない」症候群

2007年09月02日 12:00

時節イメージ【厚生労働省】が8月3日に発表した2007年度版「労働経済白書」(労働経済の分析)によると、「正規雇用社員よりも派遣やアルバイトなどの非正規社員の方が結婚意欲が低い」、そして相手が居ない理由として特に男性が「赤い糸的なめぐり合い」以外に「金銭的余裕が無い」「仕事が忙しい」を挙げていることが明らかになった。白書では「低賃金・長時間労働化」が結婚意欲を全般的に低めていると警告している(【白書完全版】)。

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今件は第2章「人材マネジメントの動向と勤労者生活」内の第3節「働き方の変化と勤労者生活」の部分に該当する。

男性は女性よりも切実な問題で結婚できない

最初に提示するのは、「いずれ結婚するつもり」と回答した18~34歳の未婚者の中で、「1年以内に結婚したい」「理想的な相手が見つかれば結婚してもよい」と回答した割合。

就業スタイル・男女別に見た1年以内に結婚してもよいと考える未婚者割合
就業スタイル・男女別に見た1年以内に結婚してもよいと考える未婚者割合

女性はさほど差はないが、男性は正社員に比べて非正社員、特にアルバイトやパートにおける結婚希望率が低いことが分かる。社会風潮も少しずつ変化しつつあるが、まだまだ「男性が一家の家計を支え、女性が自宅を守る」という状況が主流である昨今、男性は正規雇用を受けて安定した収入を得ている立場で無いと、結婚へのモチベーションも高まらないということなのだろう。

それが具体的に分かるのが次の調査結果。現在配偶者(結婚相手)が居ない者に対し複数回答で、「なぜ自分に配偶者が居ないのか」とたずねたところ、男女共に「結婚したい相手にめぐり会わないから」(要は「赤い糸の相手」にめぐり合えない)がトップになった。しかし第二位以降は男女で大きな差が見られるのが分かる。

「なぜ自分に配偶者が居ないのか」(複数回答)
「なぜ自分に配偶者が居ないのか」(複数回答)

女性順位は「独身が気楽だから」「趣味や好きなことをしていたいから」「結婚するにはまだ若いから」など、自分自身の自立的意志で独身をつらぬいている回答が続いているのが把握できる。

一方男性の場合、「金銭的に余裕がないから」が次点についており、女性の同項目の得票率の2倍近い差が出ているのが目立つ。この項目には「出来ることなら結婚したいが」というニュアンスも多分に含まれており、結婚の意志はあるものの経済的な事情で阻まれていることを意味する。その次の「独身が気楽だから」「趣味や好きなことをしていたいから」は女性と同じだが、それに続く「仕事が忙しく、異性にめぐり会う機会がないから」がやはり女性の2倍近い数字を得ている。

男性諸氏においては、「運命の人」に出会えていないというタイミング的な問題以外に、現状の労働条件(賃金面・労働時間面)が大きな結婚の妨げになっていることが理解できよう。

結婚の促進は企業にも大いに貢献する

仕事・労働条件と結婚の関係は従業員だけの問題だと思われがちだが、実は企業にも大きな影響を及ぼす。「結婚をきっかけに企業提供の住宅ローンを組めば会社を辞めにくくなる」「抱えるものが増えるため、仕事へのモチベーションが高まる」という話はよく聞くし、容易に想像できるものだが、それらを含めた分析も今白書では行なわれている。

先に「仕事と私生活の調和を行なうことが従業員にも企業にもプラスとなる」という白書の説明を記事にしたが、その分析の中でいくつかの「私生活の調和」以外の項目と仕事の満足度・就業意欲(仕事へのやる気)の関係がロジスティック回帰分析(ある事柄の見込みを、いくつかの変化する値で説明しようという手法)で行なわれている。それによると

・勤続年数が長い……満足度-/就業意欲-
・労働時間が長い……満足度-
・年齢が高い…………満足度+/就業意欲-
・配偶者を持つこと…満足度+/就業意欲+
・女性の仕事の満足度は男性よりも高い


という結果が出ている。

三段論法ではないが、「長時間労働」はそれ自身が「仕事への満足度」をマイナス化させるばかりでなく、結婚の機会も減らしてしまい、それが「配偶者を持つことによる満足度・就業意欲のプラス化」の機会をも掘らすことを考えると、二重の意味で企業経営にとってマイナスの効果を及ぼすことになる。


厚生労働省が8月3日に2007年度版「労働経済白書」(労働経済の分析)を発表してから、約一か月に渡りさまざまな項目をピックアップし、その分析や問題提議、内容の説明を行なってきたわけたが、これでもまだ全体の数割程度でしかない。あまりに時間をかけすぎると、このサイトが「ガベージ白書」になってしまうので(笑)、一か月というキリのよいところでひとまず白書のまとめを終えることにする。

今回の項目もあわせ、さまざまな問題点が複雑に絡み合い、そして相乗効果を生み出し、新たな問題を産み出していることが分かる。そしてそれらの問題点の起因となっている事柄のほとんどは、「数字化されていないこと、すぐに成果が出ないから」という短絡的な理由で(主に企業側・経営陣によって)改悪されたものであることが理解できよう。

株主に迫られてのものか、自分自身の在任期間が短期的なものであることからの短期決戦を求めてのことか、それとも元々戦略的思考に欠けるところがあるからなのか、それは分からない。企業・経営陣には「百年の計」「ゴーイングコンサーン」などの言葉に代表されるような、長きに渡って継続する、次世代につなげていくような戦略的思考を持ち、行動してほしいものだ。

中長期でないと結果が出ないということは、逆にいえば「その問題点が生じて気が付いてから手を打っても、すぐには間に合わない」ことになる。人間には知識や経験や情報を伝える「知恵」「文化」があるのだから、それをフルに判断材料として活かし、賢い選択をしてほしいものである。

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