外国人株主の増大が企業の「株主重視姿勢」を後押し!?

2007年08月14日 12:30

株式イメージ【厚生労働省】が8月3日に発表した2007年度版「労働経済白書」(労働経済の分析)によると、持ち合い株式の解消で上場企業の金融機関や事業法人による保有率が低下する一方で、外国人投資家の保有比率が急上昇し、それと共に配当性向の向上、さらには企業自身が利害関係者としての投資家を重視する傾向が強まっている傾向が明らかになった(【白書完全版】)。

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上場企業の株式に対する各部門の保有比率の推移を見ると、金融機関や事業法人などが少しずつその比率を低めている一方、外国人(外国籍個人、外国籍法人)による保有比率は1990年前後を境に上昇をはじめ、2002年以降はその勢いをさらに加速している。

投資部門別の株式保有比率推移
投資部門別の株式保有比率推移

ネット証券会社の普及で個人の保有率も2000年前後から上昇しているが、2004年以降は停滞気味。外国人による保有比率は個人、事業法人等を抜き、金融機関のそれに迫る勢いで増えている。

株式の保有数は基本的に多数決の株主総会において「議決権の数」、つまり「意見力の強さ」を表す。外国人投資家の保有比率が増えたということは、それだけ上場企業において彼らの意見力が増したことを意味する。

「スティール・パートナーズ」をはじめ、最近よく耳にするようになった外資系ファンドの日本企業株式の買い入れとその後の行動に代表されるように、その「意見力」を積極的に活用して企業にさまざまな「進言」をする場合が「外国人」には多い。単に株式を購入してオシマイと日本人のパターンとは別の行動形式を持っているため、上場企業もこれまでとは違った対応をせざるを得なくなる。

このような傾向の中で、企業が「大切だ」と考えている利害関係者を問い合わせてみると、企業全体では地域社会やNPO・NGO、従業員などとの関係を一層重視する考えがある一方、上場企業に限れば今まで以上に株主との関係を重視する傾向が強いという結果が出ている。

全企業と上場企業の、重視する利害関係者(重要視度数、「非常に重視」を3、「重視」を2、「あまり重視していない」を1の係数で重みをかけて計算。黒線は現在。赤線は今後の傾向)
全企業と上場企業の、重視する利害関係者(重要視度数、「非常に重視」を3、「重視」を2、「あまり重視していない」を1の係数で重みをかけて計算。黒線は現在。赤線は今後の傾向)

上場企業における株主優先の考え方は今後、現在同程度の水準に達しているメインバンクに対する傾注以上のものになることが予想される。

上場企業において「外国人保有率が増大」していることと「株主重視の傾向が強まっている」ことは、「外国人投資家が企業に対して意見など株主の権利を積極的に行使する傾向にある」ことと因果関係にあることが推定される。要は

「企業の株式において外国人保有率の増大」
「外国人の意見力増大」
「企業も積極的な対応を迫られる」
「今まで以上に株主を重視する姿勢を見せる必要が生じる」


という流れである。将来のために余剰金を確保するよりも(場合によっては優待を廃止してでも)配当性向を高めて株主への還元率を向上させたり、配当の機会を年1回から2回・4回に増やすなど、場合によっては「従業員・労働者への分配(賃金引上げ)よりも、商法上の「社員」である株主への利益(配当)を優先事項とする」行動を取る、昨今の上場企業の傾向がこれで裏付けられることになる。

もちろん配当性向を高め株主を重視する傾向については、国内一般投資家の増加や、株式取引そのものの活性化も大きな要因。とはいえ、複数のデータから上記のような流れをつかめるだけに、もっとも大きな原因として考えてよいのではないかと思われる。

余談だが、外国人株主に配当を分配するということは、(単純に考えれば)それだけ日本国内企業の富が海外に流出することになる。「グローバリゼーションの概念で経済を見なければならない今、国内の蓄財がどうとか述べても意味がない」という考え方もあるし、配当分など企業全体の蓄積している富と比べればスズメの涙に過ぎない。ただし、海外にそれだけ富が流出することは、逆に考えればそれだけ国内で循環するべき「お金」が失われているということにもなる。国内での消費・資金巡り・需要悪化の一因として(影響力は少ないが)十分考えられる話。

対抗策としては……国内の個人投資家が積極的に高配当の株を買って株主になり、配当益を得る(そしてその一部を消費に回す)というのが一番単純で明快だと思われるのだが、どうだろうか。

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