企業業績向上、けど基本給は変わらない・残業手当やボーナスで補完中な給与事情

2007年08月09日 19:35

時節イメージ【厚生労働省】が8月3日に発表した2007年度版「労働経済白書」(労働経済の分析)によると、一般のお給料である「所定内給与」と残業費などからなる「所定外給与」、ボーナス(賞与)や残業手当など「特別給与」を足した「現金給与総額」は2005年・2006年共に前年比プラスであることが明らかになった。ただし「所定内給与」は2006年に前年比でマイナスに転じていること、残業時間が増加していること、さらには非正規雇用者(非正社員)が増加していることなどから、通常のお給料は平均的に低下し、それを残業やボーナスで穴埋めている現状が浮き彫りとなっている(【白書完全版】)。

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まず「現金給与総額」は2005年に前年比+0.6%と5年ぶりに、2006年は前年比+0.3%とわずかながらも二年連続の増加を果たし、一般給与にも企業業績の回復が反映されつつあることをうかがわせる。

賃金内訳それぞれによる推移
賃金内訳それぞれによる推移

●月ごとの給与
・所定内給与……基本給など
・所定外給与……残業費など
●不定期の給与
・特別給与……ボーナスなど
●現金給与総額
(「所定内給与」+「所定外給与」)×毎月+「特別給与」


しかしその内訳を見てみると、「所定内給与」は2005年に+0.2%とプラスに転じたものの2006年には再び-0.3%とマイナスに戻ってしまっている。これは正社員の「所定内給与」の伸びが鈍いだけでなく、【パート・アルバイトなど増加する非正社員に、正社員並みの仕事をさせる傾向強まる】でも報じているように、「一般労働者」の中に「フルタイム(正社員とほぼ同じ時間を働く)非正規雇用者」も含まれており、彼らの賃金は正規雇用者と比べて低いことから、全体的な所定内給与が平均化された場合に引き下げて算出されていると推定される(白書でもそのように結論付けている)。

正社員が減りその分をアルバイトとフルタイムの非正社員でまかなわれる。「一般労働者」にはアルバイトは含まれないが「フルタイムで働く非正規雇用者」は含まれるので、正社員の所定内給与は上がっても平均化すると「一般労働者」の平均所定内給与は下がる場合もある。
正社員が減りその分をアルバイトとフルタイムの非正社員でまかなわれる。「一般労働者」にはアルバイトは含まれないが「フルタイムで働く非正規雇用者」は含まれるので、正社員の所定内給与は上がっても平均化すると「一般労働者」の平均所定内給与は下がる場合もある。

一方残業費などの「所定外給与」は2005年は+1.6%、2006年は+2.6%と大幅な上昇を続けている。別所で説明することもあるだろうが、かつて労働条件の改善と精神的に豊かな生活を送るために労働者側が要求してきた項目の一つ「時短(労働時間を短縮する)」が机上の空論になりつつあることが分かる。

月間平均労働時間の推移
月間平均労働時間の推移

一応所定内労働時間は減少の一途をたどっているが、これも2006年からは再び増加の傾向が見られる。一方、所定外労働時間(残業)は2000年と比べて1時間ほど、毎年少しずつ増加している。「定時労働」「残業」を足した総実労働時間も、2006年からは再び増加している。


今回の「白書」抽出部分からは、「非正規雇用者の割合の増加で、全体としての一般給与の上昇は抑えられ、賃金上昇は所定外給与(残業手当)と特別給与(ボーナス)でかさ上げされている」事実が分かる。固定給部分が平均的に減り、全体の手取りに占める割合も減るということは、「企業の業績の動向と労働者の賃金の連動性が高まっている」事実を表している(ボーナスは業績連動型がほとんどのため)が、これは同時に所得の不安定化も意味している。

さらに一般労働時間が減ってもその分残業が増えていることから「労働時間短縮による環境改善」はすでに言葉だけの状態になりつつあることが分かる(学校の授業が減ってもその分塾の時間が増えるのと同じである)。

ただし残業時間になれば通常の就業時間よりは時間単価が増えるので一見労働者側にはプラスに見えがちだが、多くの企業が「一か月あたりの残業時間上限」を設けていたり、残業の端数時間を切り捨てていたり、果ては「サービス残業(残業させても残業時間はおろか一般就業時間にさえ算出しない)」を半ば強要する傾向も相変わらず見受けられるため(【参考:ヤフーニュース専用カテゴリー】)、一筋縄ではいかない現状がある。

企業の業績が向上し、手取りもわずかだが増えたように見えるものの、実際には労働負荷を増やして何とか手取りを増やしたり、次回の保証がないボーナスで給料の上昇分を転化している現状がうかがいしれよう。

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