長江の女神は二度死ぬ……ヨウスコウイルカ、公式に絶滅と認定

2007年08月09日 08:00

ヨウスコウイルカイメージ【DailyMail】が8月8日に伝えるところによると、中国の長江(揚子江)をすみかとする「ヨウスコウイルカ(Yangtze Dolphin)」が正式に絶滅したと発表された。同誌ではこれを「中国の国宝が失われた」とし、イギリスの動物学者Sam Turvey氏の言葉を借りて「これは衝撃的な悲劇です(It is a shocking tragedy)」と伝えている。

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ヨウスコウイルカイメージ(Wikipediaより)Sam Turvey氏はまた、ヨウスコウイルカの絶滅は「人類が地球の保護者としてはその立場・責任を果たしていない証拠である」と述べている。これまで、特に今半世紀の間開発競争の激化と環境問題の悪化にもかかわらず、脊椎動物の大きな系統における「消滅」は避けられてきた。しかし今回、「ヨウスコウイルカ」の絶滅が確認されたことは「人類史上初のクジラ目における動物の絶滅」となり、他の絶滅危機種と共に開発による環境の劣化が特に進んでいることを現していると伝えている。

「ヨウスコウイルカ」は揚子江だけに住む特有のイルカで、中国の開発が進むにつれて急速に数を減らしていた。養殖も試みられたがすべてがうまくいかず、これまで「絶滅寸前種」の認定を受けていた。

最近では国際チームによって6週間にわたり綿密な調査が行われたが、結局一頭も該当するイルカは見つけられなかった。この結果などを精査した上でTurvey博士は「絶滅したと認定しても止むを得ない」としている。またその原因については周囲で用いられている農業用バッテリーや工業化による汚染、漁業用の網、さらにはダム建設などさまざまな環境・水質汚染が原因であるという。

別資料によるとこの調査は2006年11月から12月にかけて、日本人の研究家も加わって行なわれたもので(【研究グループ】)、調査結果発表当時は「見つからなかった別の個体が、揚子江の別地域で生存している可能性もある(種族として系列を保つだけの数が残っているかは別として)」「しかし事実上絶滅したと見てもよいだろう(10年以上は残っていた個体も生き続けられないだろう)」と伝えられていた。今回、正式に認定したということは、調査に引っかからなかった個体の存在ですらあきらめざるを得ない状況と判断したということになる。

中国政府側もヨウスコウイルカの減少に危惧し、1975年には「国宝」であると宣言したが、産業の発展を優先して何ら有効な対抗策はとられていなかった。

DailyMailではこの「ヨウスコウイルカ」が、中国の昔の小説で「愛していない男性と結婚するのを強要された姫が長江(揚子江)に身を投げ、その生まれ変わりがヨウスコウイルカになった」という逸話や、そこから「ヨウスコウイルカ」が「長江女神」と呼ばれていることを引用し、次のように本文を締めくくっている。

悲しいことに、揚子江の女神は再び命を落としてしまいました。
(Sadly, the Goddess of the Yangtze has died again.)


と。

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