何手も先を読むプロ棋士の「直感」脳を理研や富士通が解明へ

2007年08月06日 06:30

ひらめきイメージ【理化学研究所】【富士通(6702)】【日本将棋連盟】は8月3日、将棋を指す際の脳内における神経回路の情報処理メカニズム研究を足場に、人間に特有の「直感思考」の仕組みを解明することを目的とした共同プロジェクト「将棋における脳内活動の探索研究」を開始したと発表した(【発表リリース】)。

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この研究は、小脳が大脳の大きさの1/10程度でありながら神経細胞数ではほぼ同じであることや、「運動のみならず思考過程、特に直感においても小脳が重要な役割を果たす」との仮説(小脳仮説)などをスタート地点としている。そして特異な思考能力を持つ「将棋のプロ」に実験に協力してもらうことで、fMRI(functional(機能的)Magnetic Resonance Imaging(磁気共鳴画像)の略で。磁気共鳴画像装置を用いて脳機能を調べるための装置)を用いて脳の活動を探ったり、脳波計で測定をし、データを蓄積していく。

fMRIを使った小脳に対する測定・研究では「深い知識を持つ被験者が多数必要」「fMRIの特性から電子機器は使えず被験者は動けない」「被験者は持続的に物事を考えねばならず、その考えていたことがらを説明し、第三者が検証する必要がある」などの条件が必要とされていた。この条件にぴったりなのが将棋だったという。いわく「棋士は常に思考を重ね、経験で得た情報をもとに、直感的に瞬時に次の一手を繰り出すことができ」るため、今回の研究テーマの対象条件に合致したとのこと。

プロジェクトの成果は『セカンドライフ』内でも公開
プロジェクトの成果は実社会はもちろん
『セカンドライフ』内の富士通の拠点でも
公開され、議論の場が設けられる。
将棋関係の展示や対局が出来る場も用意される。

具体的な実験としては、プロ、アマチュアの棋士が約20人ほど参加して、頭の中で駒の配置を記憶したり詰め将棋や対局図などを元に問題を解かせ、fMRIや脳波計を用いて脳の活動を測定する。プロとアマでどのような脳の働きの違いがあるかや、アマチュアが次第に強くなる過程で脳の働きにどんな変化が生じるかがデータ化され、解析の対象となる。

脳の仕組みの中でも「直感」「天啓」「野生のカン」やひらめきなど、熟考的思考とは相反する部分の働きでは小脳が特に大きな役割を果たしているというのが「小脳仮説」。しかし「直感」は本人が意識せずに突然湧き上がる、発生する(つまり情報処理が行なわれる)ものなので、科学的検証が難しい。

今回の検証が小脳の働きをどこまで解き明かしてくれるのか、どんな人間にも経験があるものの説明ができない「直感」「ひらめき」の謎にどこまで迫れるのか、そしてプロになると数百もの手を一挙に先読みするという棋士の思考の秘密が少しでも解明されるのか、注目したいところだ。

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