DSで日本文学をたしなむという考え方

2007年08月05日 12:00

書籍イメージ先日雑談の中でたまたま検索上にひっかかったDSソフト『一度は読んでおきたい日本文学100選』を紹介したところ、とても感謝されるという機会があった。少々気になることもあり、色々と調べたところ「携帯電子文学」と似たようなニーズが存在し、その層に受けているようだ。そのあたりの事情を簡単にまとめておくことにする。

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『一度は読んでおきたい日本文学100選』とは

【公式サイト】に詳細は記載されているが、収録作品は有名どころ(そして著作権が切れている)の日本文学作品130作。「羅生門」「悲しき玩具」「人間失格」「坊っちゃん」「ごん狐」など、短編から長編まで、教科書に載っていたような作品から図書館で必ず見かけたもの、夏休みの感想文宿題での対象作品とされたもののように、一度は耳にしたような有名どころばかりが揃えられている。

データベースやしおり、あらすじなどDSならではの便利な機能も用意されているが、基本は「日本文学の収録」であって、例えば漫画で表現されているとか、突然選択肢が登場してユーザーが選んだ答え次第で話が変わることもない。あくまでも「日本文学の文庫本をまとめてDSに収録」というのが基本コンセプト。

日本文学の意外なニーズが意外な場所に

当時のログを失ってしまったので(+個人を特定しないため)簡単に話をまとめるが、今件のきっかけとなったやりとりは次のような形になる。雑談の中でまったく別の理由で当方が『一度は読んでおきたい日本文学100選』を提示した。すると、ある人から「このソフトは初めて知った。非常に役に立ちそうだ。教えてくれてありがとう」と感謝された。

詳しい事情を聞けば、その人はタクシーの運転手。お客を待つ際に時間を持て余すことがしょっちゅうで、文庫本などを車内に持ち込んでいるが、場所を取って仕方がない。ところが『一度は読んでおきたい日本文学100選』なら、DS本体とソフトがあれば、それ以上場所を取ることなく100(+30)作品を手元に置き、いつでも読むことができる。非常に便利だ、とのこと。

「そんな場所・職業にニーズがあったのか」と感心すると共に、少々興味を覚えて色々と調べてみることにした。すると、タクシードライバー以外にもトラック運転手など、やはり似たような環境におかれている人たちにウケが良いことが分かった。一般の雑誌や文庫本だと車内がすぐにちらかってしまうが、DSとソフトならその心配も無用、だというのだ。なるほど、しかり。

「同じ携帯機ならニンテンドーDSではなく携帯電話を用いればよいのでは? 最近はケータイ文学という言葉が流行り、新人の手による小説文学も多数配信されているわけだし……」とも思ったが、元々「文庫本を買う」という収集欲も持ち合わせている人たちなので、「場所は取るけど、その場で読み捨てるような携帯電話によるダウンロードでの読書ではなく、手元に何らかの形で残しておきたい」という心情も多分にあるのだろう。また、携帯電話では通信状態が悪いと受信できないなどの問題もある。DSとソフトのコンビなら、電源さえしっかり確保していれば、そのような心配も無用というわけだ。


現行著作権法では著作物の権利は著者の死後50年で保護期間が切れる(団体名義の場合は公表後50年)。『一度は読んでおきたい日本文学100選』に収録されている日本文学作品はいずれも著作権フリーの状態になったものが収録されている。お気づきの通り著作権フリーである以上、同様の文章がネット上に広く出回っているし、【青空文庫】に代表されるような無料閲覧サイトも多数存在する。中には携帯電話で閲覧できるものもあり、今件で対象となるような人にも役立つものかもしれない。

それでも少なからぬニーズが存在するのは、原則無料配布のLinuxも色々なセットパッケージが商品として発売されて売れているのと同じなのだろう。つまり「便利さ」「まとめ」に商品価値を見出しているからに違いない。


(最終更新:2013/09/08)

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