【更新】失われた遺伝子を加えて植物の光合成アップ・日大が遺伝子組換で成功

2007年07月10日 08:00

時節イメージ【日本大学生物資源科学部】【奥忠武教授のグループ】は7月9日、海藻の光合成に関する遺伝子を組み替えて光合成の能力を数割高めることに成功したと発表した([読売新聞]などから)。現在日本大学及び奥教授の研究室のサイトでは発表されていないが、9日に記者会見が行われたようである。

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光合成には「光で水を分解して化学エネルギーをつくる反応(明反応)」と「その化学エネルギーで、二酸化炭素から炭水化物をつくる反応(暗反応)」があるという。この2プロセスではじめて「光から有機化合物である炭水化物を作る」という光合成が成り立つわけだが、この両プロセスを同時に強化させることに成功したのは、今発表による成果がはじめてだという。

奥教授のグループでは陸上植物のシロイヌナズナの光合成に関する遺伝子を調べたところ、海藻ならば2種類持っている光合成の遺伝子を1種類しか持っていないことが明らかになつた。そこでグループでは「水生植物から陸上植物に進化した際、この1種類の遺伝子が失われた」と想定し、すしノリに使われる海藻から該当遺伝子を抽出。シロイヌナズナに遺伝子操作で組み込んだという。

海藻にあって陸上植物にない
光合成用遺伝子を移植。
→光合成能力が数割アップ。

するとそのシロイヌナズナは種から栽培した場合に光合成の能力が高まり、エネルギーを生成する能力は2倍、背丈は1.3~1.5倍に成長。でんぷんの生産量も1.2倍にまで増えたとのこと。

研究グループではこの遺伝子の違いについて「光が届きにくい海の中では、少ない光を効率よく光合成に生かすため、2種類の遺伝子が必要だったと考えられる。陸上の植物は、進化の過程でその一部を失ったのではないか」とみています。そして奥教授は「今話題のバイオエタノール、バイオフューエル(バイオ燃料)を大いに増やし、それが畑の面積を減らしたり生産性を上げるところまで結びつけばよい。大変意義があると考えている」とのべている。

海中植物から陸上植物に進化する過程で、なぜその遺伝子が失われる必要があったのかを考える必要はある。単に「使わなくても十分な栄養素を確保できるから」だけなら良いが、何か別の理由があった場合、あえて遺伝子を戻して栽培すると、別の副作用が生じる可能性があるからだ(進化し現在まで生き残っているからには、それなりの生存理由がある)。

とはいえ、特にバイオエタノールの部門で生産性の向上が期待できる今回の技術は、確立することができれば非常に役立つ、興味深いものといえるだろう。単に「植物の大型化」などだけならば「大きくなるのはいいがその分地中からの栄養分の吸収が多くなるので、結局足し引きゼロではないか」という批判も沸きあがってくるが、今件のは「光合成プロセスの促進」なので、強化されても増やさねばならない要素は光と水に過ぎないからだ。

奥教授の研究室のサイトを見ると、今件に該当すると思われる「温暖化抑制のための二酸化炭素同化力を高めた遺伝子組換植物の作成」以外に、窒素酸化物の除去能力を高めた植物や微生物、藻類の作成など、実現すれば社会貢献度大な技術がリストアップしている。今後のネット上などによる正式発表や、具体的な生産ラインへの応用化など、今後の展開にも期待したいところだ。

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