「ネットを使えないと所得低下」は真実か・情報通信白書最新版をチェック

2007年07月08日 12:00

時節イメージ【総務省】は7月3日付けで2007年版の「情報通信白書」を公式サイト上に公開した。概要は【「ネットを使えないと所得低下」情報通信白書最新版は語る】などでお伝えした通りだったが、「ネットを使えないと所得低下という相関関係がある」など気になるポイントもあったので、原文であらためてチェックを入れてみることにする。

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「情報通信白書」の【発表ページはこちら】。アクセスが集中しているのと1ファイルあたりの分量が大きいのでしばらくは閲覧そのものが難しいかもしれない。

「情報通信白書」では経済成長、競争力、社会生活の3つの観点から、情報通信の面で現状分析と日本がこれから進むべき道の指針を表している。

例えば先の記事でピックアップされた「ユビキタス化されるとGDP(国内総生産、経済の繁栄具合を示す一つの指針)が1%程度アップする」という話については、「今後、日本経済が順調に推移しユビキタスネットワークのポテンシャルが十分に発揮されると、そうでない場合に比べ、2007年から2010年までの間、実質GDP成長率は1%程度引き上げられると予測される」と説明されている。

実質GDP成長率に対するユビキタス化の寄与度の将来予想図
実質GDP成長率に対するユビキタス化の寄与度の将来予想図

直前の指標では「ユビキタス指数」を「固定電話加入契約数」「移動体通信加入契約数」「パソコン世帯普及率」「インターネット人口普及率」「ブロードバンド契約数」「情報流通センサス選択可能情報量」「企業におけるテレワーク実施率」「ソフトのマルチユースの割合」の8系列から算出するとしており、これらの項目の指数を上げることが直接の、理解しやすい「GDP引き上げの目標」といえるのだろう。

また白書では、昨今の経済成長のポイントを、農業・工業に続く情報と知識の時代と位置づけ、農業革命や産業革命(イギリスから始まった第一次産業革命と電力や石油による第二次産業革命)に続く、情報・知識革命と定義している。そして成長の源泉を情報と知識にあるとし、これからはこの要素に注力すべきであると述べている。

経済成長の軌跡と新たな経済成長の動向
経済成長の軌跡と新たな経済成長の動向

さて気になる「所得とネットの利用に関する相関関係」についてだが、白書では第一章第三節の4「ユビキタスネット社会の確立に向けて」の中「所得から見たデジタル・デバイド」に記載されている。

それによると、「求人情報を得る時にネットを使えばより良い条件を探し出せる」などの例を挙げ、デジタルデバイドが個人間の経済的格差をもたらす可能性があるとした上で、所属世帯の年収別でどれほどの格差が存在するかを調査した、とある。

インターネット及びブロードバンド利用状況(所属世帯年収別)
インターネット及びブロードバンド利用状況(所属世帯年収別)

先の「情報が取得しやすければ手取りの高い職につきやすくなる」などの因果関係も想定できるが、少なくとも相関関係において、「所属世帯の年収が低いほど利用率が低い傾向がある」ことが分かる。ただこのデータだけでは「年収が高いからネットなどの通信環境を整備できた」のか「通信環境を整備できたから結果として年収を高く押し上げることができたのか」までは判別できない。

同様に、パソコンや携帯電話・PHSなどの情報通信機器の保有状況と所属世帯年収を比較して見たところ、ネットの利用率同様に相関関係があることが分かった。

情報通信機器の保有状況(所属世帯年収別)
情報通信機器の保有状況(所属世帯年収別)

ただし携帯電話やPHSはパソコンと比べると単価が安いことから、所得による格差はパソコンより少ないことも分かる。

コメントでも一部意見を寄せられた「所得とネット環境との相関・因果関係」についてだが、白書ではまず、「情報の取得と経済的な効用の関係について見てみると、多くの情報、新しい情報又は欲しい情報のいずれの取得によっても、経済的な効用を得ると考える人が半数を超えている」という意見を提示している。

情報の取得による経済的な効用
情報の取得による経済的な効用

その上で、少なくとも現状では「ネットや情報通信機器を持っていることと、所得には正の関連性がある」「今後、情報へのアクセス力の差がさらなる経済的な格差に結びつく可能性がある」とした上で、「インターネットを利用して情報にアクセスできる人は、情報にアクセスする手段を持たない人に比べて、経済的に高い効用を得ることができる可能性が高い」と結論付けている。さらに「情報にアクセスする手段を持たない人は、情報にアクセスできれば得られたはずの経済的な効用を得ることができず、そのために更に所得が低くなるという、いわば負のスパイラルに陥る可能性が考えられる」という仮説も提示している。

結論として「ネットや情報端末を整備すれば必ず所得が増えるわけではないが、少なくともそのチャンスは増える」ということであろう。例えが雑だが、クジを何回引けるか、ネットなどの整備でその回数が変わってくる、と表現すれば分かりやすいだろうか。

階級思想があるわけでもなければ、意味の無い区分を好んでいるわけでもない。が、少なくともかつての三種の神器こと「テレビ・冷蔵庫・洗濯機」のように、「インターネット環境」は整備しておいた方がよいことだけは確かなようだ。


(最終更新:2013/08/20)

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