縦割り行政の弊害か・年金「名寄せ」問題を総務省が3年前に公開文書で指摘

2007年07月10日 19:30

年金イメージ年金の保険料・加入期間の未登録を初めとする「年金問題」は、1997年に基礎年金番号制度が導入された際に発生した、各種年金番号・記録の未統合や未整理が最近になって一挙に発覚したのが大きな要因とされている。最近では「年金データの未入力」や「記録の喪失」、さらには「ピンはね」などで、発端は半世紀ほど前にさかのぼるという話もあるほど。その「年金問題」のメインとなる「基礎年金番号制度導入の際の名寄せのおける不備」について社会保険庁の上部機関である厚生労働省に対し、総務省が2004年10月の段階で不備を指摘していたことが明らかになった(報道元:【NIKKE Net】)。

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複数箇所での保険料支払が
一つにまとめられていない。
それが年金の「名寄せ」問題。

「基礎年金番号制度導入の際の名寄せのおける不備」とは、複数存在する年金番号を同一人物の元に関連付け、一元化するもの。証券取引ではよく使われている言葉「名寄せ」と同じ意味である。例えばある人が国民年金の番号Aと昔の会社で厚生年金B、今の会社で厚生年金Cの番号を持っていたら、AとBとCを該当する「ある人」に関連付けさせて、その人の基礎年金番号に整理統合しなければならない。払った人物は同一であるからだ。

ところがこの「名寄せ」がうまく行われていなかったり、データが消えたりして、「本来年金保険料を払ったのに、払っていないと判断され、年金支給額を減らされたり受け取り資格そのものを喪失してしまう」という問題が生じている。例えばこの例の場合、AとCのデータがあるのにBのデータがない場合、Bの期間も年金保険料を支払っていたのにその期間分の年金が受け取れなくなってしまう。これが「年金問題」。

おおっぴらに問題視されたのは今年の2月以降。だが、総務省は2004年当時「未納三兄弟」と「年金問題ブーメラン」(当時の小泉内閣の閣僚で相次いで国民年金の未納が発覚した件について民主党が「未納三兄弟」と揶揄したところ、当の民主党にも相次いで同様の問題が発覚し「ブーメラン」とも呼ばれた)などに代表される国民年金の未納問題の中で、名寄せなどのシステム上のトラブルが一因であると判断。調査の末に【年金に関する行政評価・監視(国民年金業務を中心として)(評価・監視結果に基づく第一次勧告)】というタイトルで2004年10月8日に行政監査の一環として厚生労働省に対し、国民年金などの「名寄せ」に問題があることを明確に指摘、さまざまな改善を厚生労働省と社会保険庁に提言していた。

総務省から厚生労働省への
年金問題の指摘と改善命令は
2004年に2度も行われている。

報告書では厚生労働省と社会保険庁の調査結果として、「適用業務などの的確な実施」「保険料徴収業務の的確かつ効果的な実施」「社会保険事務局などの定員配置の見直し」などを求めている。例えば住基ネットシステムを活用し、未加入者を把握した上で目標をきちんと設定し、その目標に基づいて業務管理を行うことなど、「言われなくても大人なら分かるだろう」レベルのことが勧告されている。

続いて2004年12月3日には調査結果に基づく第二次勧告(【概要、PDF】【本文、PDF】)も行われており、第一次勧告より詳細で踏み込んだ内容の精査結果と改善すべき事項が指摘されている。

以上のように少なくとも3年以上前から、現在大きな社会問題化している「年金問題」そのものは行政機関内部で指摘されていた。しかし総務省と厚生労働省という縦割りの行政区分による問題から、総務省の具体的な勧告と改善案の提示は事実上厚生労働省には何の効果ももたらさなかったといえる(効果があればもう少し現状はマシになっていただろうし、3年間の改善の動きは見られていなければならない)。

今回公開資料からもあらためて、社会保険庁(とその上部機関の厚生労働省)がなすべき仕事をこれまでどれだけこなしてきたか、その度合が明らかになったといえよう。

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