【更新】グッド・ウィルグループのコムスン、指定打ち切りへ・グッドウィル側は「いつもの手で」対抗

2007年06月07日 23:55

介護ビジネス最大手で[グッドウィル・グループ(4723)]の傘下にある[コムスン]が、実際には雇用していないホームヘルパーなどを働いているように見せかけて人数を水増しするなどの不正を行い、介護事業者の指定を受けていたなどとして【厚生労働省】は6月6日、今後4年半の間は全国で新しい事業所の設置や現在の事業者の更新を認めない方針を決定、全国の都道府県に通達したことが明らかになった。この措置によりコムスンの事業所2081か所のうち1655か所が介護保険を適用した事業ができなくなり、事実上閉鎖に追い込まれることになる。

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これはコムスンの事業所が実際には働いていないホームヘルパーや看護師を働いているように水増し請求して介護保険が利用できる事業者指定を受けていただけでなく、介護報酬も余計に受け取るという手口を全国各地で行っていたもので、厚生労働省はこれを受けて今後4年半は「コムスンに対し」新しく事業所を作ることや既存の事業所の更新を認めないようにと介護保険法(悪質な不正があった場合にはその事業所だけでなく全国の事業所を対象に指定や更新を認めないという「連座制」による決まり)に基づく法的拘束力のある通達を都道府県に行った。対象となるサービスは訪問介護だけでなく日帰りで各種サービスを行うデイサービスや、介護対象者が集団生活を行う中での介護サービスであるグループホームなども含めたすべてのサービス。

介護事業所の指定は各事業所ごとに6年単位での更新制だが、そのうち4年半は更新ができなくなることにより、順次期限切れとなったコムスン内の事業所は介護保険の適用外となり、事実上営業が出来なくなる。その数は2011年度まで1655か所に及ぶとのこと。

今回の決定・通達で、コムスンを利用している要介護者などに大きな影響が出ることは避けられず、厚生労働省は今件の通達と共に都道府県に対し、代替介護サービスの確保に努めると共に、厚生労働省内に対策本部を設け、各自治体との調整も図ることにするとしている。NHKなどによると厚生労働省老健局の古都賢一振興課長は「指定の要件を満たしていないのに虚偽の申請をした点が特に悪質と判断した。事業者の質を確保するため、今後も監査と指導を徹底していきたい」と話しており、さらに事業者の不正に対処するため、有識者会議の立ち上げも検討したいと述べている。

今件は昨日6日お昼前に報じられ、グッドウィル・グループの株価急落と、関連セクターの他銘柄の急騰(コムスンの顧客が同業他社に流れるとの観測から)を招く結果となったが、グッドウィル・グループではまず[厚生労働省から指導を受けたこと(PDF)]を伝え、そして夜半までにコムスンの全事業を来月末をめどに同グループの連結子会社である【日本シルバーサービス】に譲渡することを発表した([発表リリース、PDF]。これは「あくまでも厚生労働省から指導を受けているのはコムスンであり、日本シルバーサービスではないのだから、日本シルバーサービスに事業を譲渡すれば現在の事業は継続できる」との主張である。リリースでは「お客様へのサービス継続と従業員の雇用の確保を最優先するため」と説明している。

しかしこの「日本シルバーサービス」もプレミア・メディカルケアの子会社で、そのプレミア・メディカルもかつてグッド・ウィルグループが買収したクリスタルの子会社。そして昨年8月にはコムスンの子会社になり、10月には在宅介護事業の営業権をコムスン側などに譲渡した経歴を持っている(【経歴ページ】)。要はグループ・関連会社の中での「ぐるぐるまわし」とも見て取れる。

今回の厚生労働省の決定は全国8か所の事業所の不正発覚がきっかけだが、その全事業所が「指定取り消し」処分を受ける前に事業を止める「廃止届」を出してグループ全体への処分を逃れる行為を行っている。他に監査途中の6事業所は監査の途中に同様の措置を出しており、厚生労働省側ではこれらの行為を「指定取り消し処分を逃れるための悪質な行為」と判断。今回の「全国事業所への更新不許可4年半」などの措置を行っている。

このような「処分対象をさっさと無くして処分を逃れる」手法は同グループでは常套手段として知られており、今回厚生労働省でも事態を重く受け止め指定更新不許可などの措置をとっている。そのような事実がありながら今回グッド・ウィルグループではさらに「通達を受けたのはコムスンなのだから、コムスンから別の関連会社に事業を丸移しすれば、事業そのものは指導を受けないだろう(そうなれば行政指導を受けるのは空箱になったコムスンだけになる)」という判断のもと事業譲渡を決めており、いわば「厚生労働省にケンカを売っている」と見られても仕方のない行為ともいえる。

厚生労働省側でもこの動きは根耳に水のようで[読売新聞]によると、先の古都振興課長は「役員を交代するなどの誠実な対応をすれば(コムスンが)4年半を待たずに指定申請を受けて受理することも可能であるが、今回のような営業譲渡云々はウェブサイトを見てはじめて知った。利用者サービスを守るためなのか処分逃れのためなのか不明で、事情をよく聞く必要がある。改めて指定申請しても、親会社は同じなので、審査は当然、厳しくなる」と語り、断固とした姿勢で臨むことを明らかにしている。

今回のグッドウィル・グループの措置は、簡単に例えると「対外的に処分をしなければならないが社内的な実質処分は避けたい。そこで『部署移動・降格処理をした』と対外的には発表したが、実際には席を一つ隣に移動し、肩書きを変えただけで給与も権限も何も変わらないとする社内処分をした」のと同じようなもの。その行為を確認した厚生労働省側が、どのような対応をとるのか、今日以降の動きに注目したいところだ。

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