松井証券(8628)、行動ファイナンスに関するデータ取得の無期延期を発表

2007年06月08日 08:00

株式イメージ【松井証券(8628)】は6月6日、5月30日に発表していた一橋大学大学院の研究グループとの「行動ファイナンス」に関する共同研究と、その研究の中で松井証券のこれまでの顧客データを匿名化した上で提供することについて、無期延期することを発表した(【発表リリース、PDF】)。

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行動ファイナンスとは「投資家は理論値・期待値などの数学的な計算結果に基づく合理的な結論のみで行動を左右されることはない」という前提に立ち、金融市場の現象を分析し予見する研究分野。経済学に人間の感情論などを含む心理学を融合させたもので、ゲーム理論と通じるものがある。代表的な研究者でアメリカのダニエル・カーネマン氏が2002年にノーベル経済学賞を受賞してから特に話題に登るようになった。

松井証券では一橋大学大学院の研究グループと、この「行動ファイナンス」に関する共同研究を行い、マーケティング戦略の策定に活かす予定であると発表(【発表リリース、PDF】)。そしてその中で「松井証券が保有する個人投資家の株式売買データを一橋大学大学院の研究グループに提供」することを明らかにした。

リリースでは同時に「個人情報保護の観点から、個人が完全に特定される形式でのデータ提供はいたしません」と説明していたものの、具体的にどの範囲まで情報が提供されるのか具体的な説明がなかったこと、事後承諾形式(これからのデータを利用提供する、ではなく「これまでのデータを」だった)で、かつ「連絡をした人だけ提供する」という任意提出型ではなく「連絡をした人だけ提供を拒める=連絡がなければ応じたものと見なす」という形式を用いたことから、利用者から少なからぬ反発を受け、今回のような事態となった。

リリースでも「行動ファイナンスという学問領域に関する理解そのものが広く一般に醸成されているとは言えない現状にあったことは事実であり、加えて行動ファイナンスに対する当社の説明が必ずしも十分でなかったこともあり」とし、説明不足だったことを認めている。

行動ファイナンスという学問は人間の駆け引きという非常に興味深く、同時にゲーム理論などのように「仕組みを理解できればさまざまな分野に応用が利く」分野なのは間違いない。特にネットによるスピーディな情報伝達や売買が普及している昨今では、行動ファイナンスの活用次第ではさまざまな「面白い」ことができるに違いない。それだけに、今回のような不用意な対応でいわば「ケチ」がついてしまったのは非常に残念でならない。

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