経団連「仕事・役割・貢献度で賃金決定」を提言

2007年05月21日 06:30

時節イメージ日本経団連は5月17日、日本経団連タイムスの中における提言として、従業員のやる気を高める賃金制度を創り上げるため、「仕事・役割・貢献度を基軸とする賃金制度」を導入するべきであるとの提言を明らかにした(【該当ページ】)。

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これは先の5月15日に【今後の賃金制度における基本的な考え方】という意見書を提示したことを受けて語られた概要的なもの。簡単にまとめると次のようになる。

・日本の賃金体系はこれまで年齢や勤続年数、仕事の内容や能力を元に、1職務で1賃金という形をとってきた。
しかしICT(Information and Communication Technology=情報通信技術)の躍進や総人口、労働人口の減少で、労働者が多様化。生産性を向上するのに必要なやる気を高めるために、公正で納得のいく賃金制度が求められている。
・仕事と賃金の隔たりが生じているものについては賃金制度を改める必要がある。
・そこで今後は、これまでの「年齢や勤続年数を重視したものから、仕事・役割・貢献度を基軸とする賃金制度」とすることが望ましい。


要はこれまで以上に能力給制度を推進すると共に、ICTで労力が減った分を賃金にも反映したいというもの。

提言では「再チャレンジの促進」「希望の国、日本のビジョンを推し進めるため」などのような言葉が踊っている。メリットは上記「今後の賃金制度における基本的な考え方」中の「(1)仕事・役割・貢献度を基軸にすることでもたらされる効果」で語られているが、グローバル化経済のもとで企業の競争力が強化されるだけでなく、従業員の雇用の維持や拡大も図れ、公正感も確保されるという。

確かに「会社への」貢献度、役割の多い少ない、仕事そのものの量の多さ少なさで賃金を決定する仕組みを重要視すれば、(歩合制のようなものだから)「仕事をこなせばこなすほど支払が増える可能性がある」ということで、やる気が高まるかもしれない。再チャレンジも促進されるだろうし、「希望の国」へ一歩踏み出せるかもしれないだろう。

しかし現時点においてもすでに「個別の営業成績が支払いを大きく左右する出来高制・歩合制を導入したところ、新人を教育するより自分の仕事を増やした方が身入りが多いので誰も新卒をまともに教練せず、数年のうちに後任が育たないシステムや風潮が会社内にまん延してしまった」という、短期間では取り返しのつかない問題を抱えた企業が多数現れていることも報告されている(日経新聞などから)。

また、「仕事・役割・貢献度を基軸」とあるが、これらの言葉の尺度は同記事などを読む限りでは非常にあいまい。しっかりとした公正なルールを設けないと、企業の胸先三寸で労働者側の賃金が良く言えばフレキシブル、悪く言えば好き勝手に悪用されかねない。「こいつは仕事ができるけど役員報酬増やしたいし社内留保金積み増ししたいから、支払増やすのはイヤだな。だから貢献度を低く設定」といったお話が出てきてしまう。

経団連は一か月ほど前には【社会のために皆が願いを込めて納める税制への改革(PDF)】の中で、「消費税は16%にまで上げよう。でも法人税は35%まで下げようね」とし、国内民間需要の低迷で景気回復の勢いが弱まっている現状において、ひんしゅくを買ってもおかしくないような提案をしている。これをみる限り、今回の「仕事・役割・貢献度で賃金決定」という提言も、「企業側が良いように賃金を切り分けすることを合法化するための基盤作りではないか」と疑われても仕方がないような気がする。

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