今度は「ガス」でバイオなものを活用する動きへ・「バイオガス」活用の動き高まる

2007年05月08日 08:00

部分燃焼ガス化センターイメージ先日NHKでも報じられていたが、【日本ガス協会】は4月にエネルギーシステム部内にバイオガス利用促進センターを創設し、全国に200あまり存在する都市ガス業者に対し、下水の汚泥などから創られる「バイオガス」を積極的に使うよう働きかけている。

スポンサードリンク

現在バイオなエネルギー分野での注目株というとバイオエタノールを混在させたバイオ燃料(バイオガソリン)がもっとも注目を集めている。このバイオエタノールと同じように、他の成分から生み出されたのが「バイオガス」。具体的には下水処理の汚泥や生ごみなどが発酵して出来たもの。

この「バイオガス」は地球温室効果をもたらす「地球に厳しい」ガスであるメタンガスを多く含むにも関わらず、下水処理施設の多くで自然発生し、しかもそのほとんどが大気中に排出されてしまっている。そこで日本ガス協会では「温室効果という弊害のあるガスを捨てるのではなく、燃料として用いよう」という考えのもと、利用方法などを模索、4月からは具体化行動の一つとして「バイオガス利用促進センター」を創設した。

バイオガスはバイオエタノール同様に、そのものだけでは既存の流通ルート・各種機器に使用することはできない。しかし既存の都市ガスに混ぜて使うことで、バイオガスを有効に利用することができる。そこでどのように「バイオガスを既存のガスに混ぜる」のかが課題となる。

品質の問題などもあり、バイオガスを通常の都市ガスに混ぜる方法は限定される。
品質の問題などもあり、バイオガスを通常の都市ガスに混ぜる方法は限定される。

今年3月に行われ、経済産業省に記録が残っている日本ガス協会作成の資料(【該当資料、PDF】)によると、バイオガスの利用手法としては「工場で使う」「都市ガスに直接混ぜて家庭や会社で使う」「バイオガスが発生する下水処理場や食品工場で使う」の3点が想定できる。ところが「工場で使う」場合には品質が高く場所が近いこと、「都市ガスに混ぜる」には品質と都市ガスのガス管が近くにあることが条件として求められ、いずれもあまり現実的ではない。そこで野菜など「地産地消」ではないが、「バイオガスが発生した場所でバイオガスを活用する」方法をとる事を促進することになった※。

これまでにもバイオガスをボイラーの燃料や発酵槽の加温用として約3万キロリットルを用いていた。今後は都市ガスを混ぜた上でガスエンジンを作動させて電気を生み出したり、今までは使用できなかったバイオガスやその原料となる産業廃棄物を用いて新たにバイオガスを精製してガスエンジンで発電することにより、2010年までに12万キロリットルのバイオガス導入を目指すという。

特に後者では従来単に焼却処分するだけだった汚泥や廃棄物を、特別な装置で焼却することにより、汚泥の場合にはエネルギーの7割前後までがバイオガスとして回収可能になる。また、単に焼却した場合と比べ、温室効果ガスの代表・二酸化窒素をほとんど発生させない(単なる焼却と比べて99.8%もの減少効果)というメリットもある。

関東近辺の対象施設の例。施設を整備すれば高度利用=バイオガスの有効活用が可能な下水汚泥処理施設は多く存在する。
関東近辺の対象施設の例。施設を整備すれば高度利用=バイオガスの有効活用が可能な下水汚泥処理施設は多く存在する。

ただし、今回参照した資料にも言及されていたが、バイオガスの「地産地消」には施設整備のための多額な設備投資が必要となる。リリースでも啓蒙活動と共に、政策的誘導だけでなく助成制度の拡充、税制や助成金システムの導入などインセンティブの付与が必要不可欠だとしている。

野菜の廃棄問題の際にも、結局一番ネックとなったのはコスト問題。廃棄する・有効活用する・燃料化するいずれの場合にも、収拾・輸送コストの問題から、廃棄野菜に対する提言のほとんどが事実上実現不可能という結果が出ている。それらの中で数少ない「成功しそうな」案件が地元で消費するという「地産地消」という考え方だった。

今回のバイオガスも、品質や輸送コストの面から、「地産地消」が一番のようだという結果が出ている。情報・流通網の発展が近代国家の重要要素の一つではあるが、エコ問題を考える際には発想の転換として「地産地消」を頭において色々考えた方が、解決策が模索しやすいのかもしれない。

※NHKでは「都市ガスに混ぜることによって発電などの燃料として使いやすくなる」とあるが、発表資料では「都市ガスと混ぜられる品質を保ち、ガス管が近くにある事例は皆無」と記述されている。

Related Posts Plugin for WordPress, Blogger...

スポンサードリンク



 


 
(C)JGNN||このサイトについて|サイトマップ|お問い合わせ