プレステ3の在庫は190万台、売上高・純利益は最高額~ソニーが2007年3月期決算発表

2007年05月17日 08:00

プレイステーション3イメージ【ソニー(6758)】は5月17日、2007年3月期(2006年度)の決算を発表した(【発表リリース掲載ページ】)。それらによると、従来ソニー全体のけん引役であったゲーム部門の不調が続いている。また決算発表後の記者会見でプレイステーション3の生産出荷台数が550万台なのに対し、店頭出荷台数は360万台となり、差し引き190万台が中間在庫であることも明らかにされた。

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リリースによるとゲーム事業部門の大幅な赤字がソニー全体の足を引っ張る形となった。具体的には、ゲーム部門の営業損益は昨年度の87億円の黒字から2323億円の赤字に転落している。これはプレイステーション3の導入期に「製造コストを下回る戦略的な価格設定での販売による損失」が大きく響いていると説明している。またプレイステーション2はソフトの減収により減益だが、プレイステーションポータブルはハードのコストダウンを果たし増益を果たしている。

来年度もゲーム部門の黒字転換は難しいというコメントもあるが、今後は特に主力製品であるプレイステーション3の製造コストの削減とソフトの充実で、損失の縮小を見込んでいるとも言及している。

ざっと見通した限りでは事業全体では「売上高最高額(8兆2957億円、来年度見通しは+6%の8兆7800億円)」「デジタルカメラや液晶テレビの躍進」など、来年度の業績について明るい見通しの要素が各所に見られる。昨年のような株式市場における「ソニーショック」がおきる可能性は低いと見て良いだろう。

気になるのはゲーム部門。【補足資料(PDF)】に生産出荷台数の概要が掲載されている。

2006年度における日米欧でのソニー主力ゲーム機の出荷台数実績
2006年度における日米欧でのソニー主力ゲーム機の出荷台数実績

プレイステーション3の発売で前世代機種となったプレイステーション2の販売実績が落ち込んでいるのは致し方あるまい。むしろ問題なのは決算発表で「ローコスト化により増益を果たした」と説明されているプレイステーションポータブル。日本国内では堅調な売れ行きを示し、年末年始のかきいれどきにあたるQ3期には86万台と2006年度内の四半期単位では最高台数を記録している。

PSPは欧米で売行き激減。
PS3は大量在庫状態。
ピンチをチャンスに変えて
事態を打開すれば
ソニーの新たな黄金期も
期待できる。が……

しかし欧米ではQ3期・Q4期に至って急速に出荷台数を減らしており、Q4期では欧米共に計算上は一台も出荷していないことになる。これは市場が飽和状態になったのか、あるいは在庫がさばききれず新規出荷が行われていないことを表している。ライバル機種の【任天堂(7974)】によるニンテンドーDSの躍進が影響していることは否定できない。

プレイステーション3イメージ一方、プレイステーション3は日米欧で550万台を出荷している。しかしリリース上にはないものの、決算発表会上ソニーCFOの大根田伸行氏が、そのうち店頭出荷台数は360万台となり、差し引き190万台が中間在庫であることを明らかにしている。

発表では2007年度はプレイステーションポータブルは900万台、プレイステーション3は1100万台を出荷する予定としている。しかし実際にユーザーの手に渡り、プレイの対象にならない限り、ゲームビジネスにおける根幹である「ソフトの売り上げ」を期待することは難しい。2006年の時点でプレイステーション3の「店頭出荷台数」が360万台だとしたら、実際にユーザーの手に渡っている台数はさらにそれを下回ることを考えると、(きわめてざっくばらんな計算だが)「ユーザーの手元にある数の約3倍の台数を2007年度に生産出荷する」ことになる。

ハードを購入してもらうためには魅力的なソフトの供給やハードそのものの価格・性能が大切な要素。しかしローコスト化を図らなければこれ以上の値下げは難しいし、ハード普及台数が増えないとソフトメーカーの参入やゲームの開発は遅々として進まなくなる。

いわばマイナススパイラル状態に陥りつつあるプレイステーション。欧米で流れがぴたっと止まったように見えるプレイステーションポータブル。この2機種の動きを劇的に変えなければソニーのゲーム事業部門の再生は果たせないだろう。逆に考えれば、この分野で改善が図れれば、ソニーは比類無き跳躍を成し遂げることができるはずである。

新体制のソニーの決断と斬新な発想による、正しい舵取りに期待したいところだ。

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