ネット新聞読者は紙の新聞読者より記事を読みこなしている

2007年04月03日 19:35

新聞イメージジャーナリズム教育機関の【Poynter Institute】は3月29日、オンライン上の新聞の読者の方が紙媒体としての新聞の読者よりもきちんと記事を読むとの調査報告を発表した(【発表リリース】【関連記事・NewsFactorBusiness】)。ネット上の記事は「最初の数行しか読まない」「大見出ししか注目しない」という話がよく伝えられている中で、興味深い調査結果として注目を集めている。

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アイカメライメージ今調査は約600人の四大新聞の読者に対し2つの特殊カメラ付きメガネ(アイカメラ)をつけさせて15分ずつ読んでもらい、どのように視点を動かしていくのかを観測したデータを集計し分析したもの。

オンライン>紙媒体な「記事読み切り度」

「読み始めた記事」をどれくらい読んだかの棒グラフイメージその調査結果によると、各読者は「読み始めた記事」について大型版新聞読者の62%、タブロイド判の57%の文章を読んでいたのに対し、オンライン上の新聞の記事は77%を読んでいたことが判明した。さらにオンライン読者の2/3もが全文を読みきっていたという。

新聞の記事の読み方も、紙媒体とオンラインとでは異なる傾向にあることが明らかになった。新聞を読むタイプには大きく「じっくり読む派(methodical)」と「斜め読み派(scanning)」の二つに大別されることが判明しているが、紙媒体読者の約75%が「じっくり読む派」だったのに対し、オンライン上の新聞読者は「じっくり」「斜め読み」が約半々という区分になった。

「じっくり」「斜め読み」両派の媒体毎の「どれくらい読んだか」度イメージしかも読み終えた記事の量で区分してみると、紙媒体の新聞読者は「じっくり」の方が読む量が多いのに対し、オンラインの場合は「じっくり」「斜め読み」いずれも同程度(78%・77%)という結果が出た。限られた時間の中で少しでも多くの量の記事を読んでほしいと考えている記事制作側にとっては気になる値ではある。

要は「オンライン上の記事の方が紙媒体よりも『斜め読み』するので同じ時間でも多くの記事が読める」ということなのだろう。

表現方法の工夫、Q&Aや時系列形式と大きな写真、ナビゲーション

また、紙媒体・オンライン共に記事の内容構成について、「通常の記事形式」と「Q&A形式、時系列式、リスト方式」を比較した場合、後者の方が15%ほど理解度が高かったという結果も出ている。

記事内で第一印象的にどこに目が行くのか。これは紙媒体とオンライン新聞では大きく異なる。紙媒体では大きな見出しと写真が目に留まるとの結果が出たが、オンライン新聞ではナビゲーションバーや少しずつ情報を小出しにして展開していく広告(ティーザー広告)に注目が集まったという。

さらに同じ写真でも実際の報道写真の方が、モノクロよりもカラー写真の方が注目を集める結果が出た。顔写真はほとんど注意をひきつけなかったという。

写真サイズと注目度イメージ写真のサイズについての調査も行われた。大きな写真と小さな写真の場合は当然のことながら大きな写真の方が注目を集める。大きな写真20点と小さな写真100点それぞれについて視点が向いたかどうかを計測したところ、それぞれ10点・20点ずつ注目が集まり、結果として「大きな写真の場合は50%、小さな写真の場合は20%注目された」という結果が出た。

レポートではどのくらいのサイズの違いがあるのかが報告されていないので一概に「大きい写真バンザイ」という断言はできないが、【NHKオンライン、トップページをリニューアル】でも言及したように、大きな写真はそれだけで小さな写真以上に面積比を上回る効果がありそうだ。最近のニュースサイトで大きな写真がまずドンっと目に飛び込んでくるようなフォーマットが増えているのも理解できよう。

「ネット上記の記事や広告は閲覧される期間が長い」

【Yankee Group】の副社長でアナリストでもあるBoyd Peterson氏は今回の調査結果を受けて、元記事の中で「広告の絶対量は紙媒体やテレビの方が大きいのだが、オンライン上の広告の方が明らかに成長の面で期待できる」とコメントした。

その理由については次のように説明している。いわく

「オンライン上の媒体はすぐに対応できるスタイルを持っている。そしてオンライン上で、特にブログにおいて多くの情報を得ることができる。陳腐化するのに時間がかかるような話題に対しては、その話題を探そうとする読者が数週間、数か月、それ以上前もの記事を(検索エンジンなどで)見つけ出して確認し、それと同時にその記事に対して出されている広告を見ることになるので、紙媒体やテレビ媒体と比べて潜在的な広告効果がオンライン上の記事、広告にはある。
("The online channel is a platform that allows for immediacy, and the information you can get there comes with a lot of commentary, particularly through blogs."
"Stories with a slower decay rate have more potential value online because readers who are looking for a specific topic can find stories that ran weeks or months ago and also see the ads that are run against them." )」


要するに紙媒体やテレビの記事や広告は一過性のものであるのに対し、ネット上のそれは蓄積され検索されることで繰り返し掘り返されて閲覧されるため、末永い露出効果が期待できるということだ。

よく「ネット上の長文は読まれない」という話を耳にする。が、「斜め読み」という観点では新聞などの紙媒体よりも読まれやすいのかもしれない。そんな推測が今回の調査からうかがいしることができたといえよう。また、写真の有効な使い方や蓄積性の重要さなど、いくつかの「ヒント」も得られたような気がする……のは当方だけだろうか。


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