「記述問題での無解答25%」「理科は大切じゃないが過半数」高校生学力テスト結果発表

2007年04月14日 11:00

勉強イメージ文部科学省の下部機関【国立教育政策研究所】は4月14日、いわゆる「ゆとり教育」と呼ばれる学習指導要領下で学んだ高校生に対しては初となる、2005年11月10日に行われた、高校生に対する学力テストの結果を発表した(【発表リリースページ】)。対象生徒数は約15万人。国語総合や生物では成績が悪化、特に古典においてが著しいのが特徴。また記述式問題で25.3%もの無解答が見られ、理科の各科目では「受験や就職に関係ないから大切ではない」と考えている者が過半数に達するなど、問題点も数多く浮き彫りにされている。

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詳細は該当ページに掲載されているが、気になる、あるいは重要視されるポイントは次の通りとなる。

学力はやや向上?

前回調査(2002年から2003年)と比べると、「前回より高得点」が14%、「前回とほぼ同じ」が80%、「前回より低得点」が6%となり、単純な点数比較ではやや学力が向上したようにも見える。

科目別では英語のリスニングへの正答率が上がっている一方、国語の古典に対する正答率が減少している。また、生物や化学でも「前回より下回っている」という結果が多く出ているのが目に留まる。

「勉強が好き」「大切」と考える生徒は増加

「勉強が好きかどうか」という質問に「好き」と答えた生徒は5.0%、「どちらかといえば」は17.1%となり、あわせて22.1%が「好き」の部類に入ることになる。これは前回調査の19.9%からわずかながら増加している。また、「どちらかといえば嫌い」「嫌い」の数はその分減少しており、勉強好きな生徒が増えてきたことを感じさせる雰囲気がある。

「好き」なのは2割程度である一方、「大切かどうか」という問いには「そう思う」43.1%、「どちらかといえば」41.1%となり、あわせて8割以上が「大切だ」と考えていることになる。これも前回調査から「そう思う」が3.6%増えており、「嫌い」「どちらかといえば嫌い」の両項目が減っていることもあわせ、「勉強は大切だな」と考える生徒が増えていることがわかる。

「勉強は好きか」
「勉強は好きか」
「勉強は大切か」
「勉強は大切か」

しかしその一方、小学校高学年や中学校の生徒の調査結果と比較すると、今回調査対象となった高校生はいずれも「好き」「大切」という思いが低いことが分かる。しかも学年を経るにつれて、勉強へのモチベーションが下がりつつあるように受け止められる結果となっている。

高学年になるにつれて覚える量が増えて「楽しく分かりやすい内容を学べる」「自分の興味のある分野を学べる」機会が減っているからなのかもしれないが、高度な学問を学ぶようになるに従って「勉強は嫌い」「大切じゃない」と考える生徒が増えている傾向は、問題視されるべきだろう。

科目別「受験や就職に関係なくとも大切だ」の比率
科目別「受験や就職に関係なくとも大切だ」の比率

「大切かどうか」を科目別に質問したところ、特に数学や物理、化学などの「理数系」において、「どちらかといえば大切ではない」「大切ではない」があわせて過半数を占めているのが気になる。一方で国語総合、政治・経済、英語を大切と思う生徒は多く、単に文系思考の生徒が増えているのか、それとも理数系が毛嫌いされる傾向にあるのかは一概には判断しにくい。

家での勉強は両極端・「まったくしない」か「猛勉強」!?

自宅での勉強時間についての問いでは、「まったく・ほとんどしない」はわずかに減り、「一日3時間以上勉強する」という猛勉強タイプの生徒がわずかに増加している。

一日の自宅での勉強時間
一日の自宅での勉強時間

中学二年までは「30分から2時間程度」の層が一番多いのに中学三年になって「2時間以上」の層が急に増えるのは、ひとえに高校受験のための勉強があるからだろう。しかし高校に入って気が抜けたのか、「毎日それなりに勉強する」層は総じて減り、「ほとんど勉強しない」派と「毎日3時間以上勉強する」派に大分されることが分かる。

ただし今回の調査は「第三学年」に対し受験間近の11月に実施されていることを考慮すると、「ほとんど勉強しない」派はすでに就職か推薦での大学進学が決まっている人、「毎日3時間以上勉強する」派は大学受験に向けて猛勉強中な人という想定が容易に出来る。つまり単純に「高校生は全般的に勉強する真面目な人と勉強しない諦め派に大分される」という結論は出せないことになる。


当方(不破)自身も高校時代、化学担当が悪評高い(そして実際にひどい教え方をする)先生だったため、化学そのものの勉強をあきらめざるを得なくなり、理系の大学への挑戦を断念した苦い経験がある。先生も人間だから個性は人それぞれで得手不得手があるのだろうが、それでも生徒が学問の各分野を好きになるかどうかは、先生の能力や熱意、モチベーションに寄るところが大きい。

理系を毛嫌いする生徒が多いのは、「理系を学んでも就職に結びつかないしお金も稼げないから意味がない」「難しいことばかりでつまらない」という考え方がまん延しているからかもしれない。しかし例えば「金融工学」では物理的数学的考察も重要になるし、経済の分野でも理数知識があるのと無いのとでは雲泥の差が出ることも多い。

先生側が色々と工夫をし、好きな分野と嫌いと思われている分野を巧みに絡ませたり、興味の沸く学び方・学ばせ方をさらに推し進めることで、生徒の理系への興味関心も増してくるのではないだろうか。また、世間一般においても技術者をはじめとする理系関係者への敬意や配慮はもっと払われるべきだろう。

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