等身大の父親像と共に・アメリカで今流行りつつある等身大の立て看板「フラット・ダディ」とは

2007年03月16日 19:30

フラット・ダディ(Flat Daddy)イメージ人間と等身大の飾り物というと、日本では主に萌え系アニメキャラやアイドルの等身大立て看板、抱き枕などがイメージされる。ところがアメリカでは今、父親たちの等身大立て看板「フラット・ダディ(Flat Daddy)」が大きなニーズを集めつつあるという。先日NHKの小特集で放送された「フラット・ダディ」に関する内容が少々胸を打つものがあり、事後調査をした上で今回お伝えすることにした。

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フラット・ダディ(Flat Daddy)イメージ「フラット・ダディ」とは直訳すると「平らなお父さん」。夫や父親の等身大の写真を台紙に貼り付けたものだ。ちょっと想像がつかないかもしれないが、イベント会場や薬屋・アニメショップなどでのイベントで時々見かける、等身大のキャラクタ看板を思い浮かべればよい。

アメリカでは現在国策の元、イラクやアフガンに多くの兵士を派遣している。そのような「国策」で海外に派遣された兵士の家族たちの間で、夫や父親がいない寂しさを紛らわせようと、この「フラット・ダディ」と一緒に過ごす習慣が広がっているという。

兵士の家族たちは同じ境遇に置かれている親近感もあり、時々交流会を開いている。彼らの集会にはアメリカに残された母親や子供、そして戦地にいるはずの夫・父親……の等身大写真こと「フラット・ダディ」。少しでも家族の安らぎにつながればという考えで生み出されたこの「フラット・ダディ」だが、派遣部隊ごとの集まりで統括している団体が、希望する家族にそれぞれの「フラット・ダディ」を提供しているという。個人レベルでは等身大のカラー写真や台紙を用意し、貼り付けることは難しいからだ。

フラット・ダディ(Flat Daddy)イメージ「フラット・ダディ」に使われる写真は大抵が笑顔。参考にしたNHKの番組でインタビューに答えていた統括担当者は「兵士の笑顔をいつも観られるというだけで、家族はその存在を身近に感じることができる」のだという。何となく胸が痛くなる話だ。

また取材に応じた家族では、子どもたちの対応も「はじめはフラット・ダディを持つことに違和感を感じていたが、今ではどこで何をするにも一緒」なのだという。実際にその家族では子どもたちが自分の父親の写真で作ったフラット・ダディをおもちゃ箱から取り出して服を着せ、スプーンで紅茶を飲ませようとしていた。その家族の母親いわく「夫が戦地におもむいたあと、大勢の家族がフラット・ダディを持っているのを見た。それで私もほしいな、と思ったのです」と語り、持つきっかけを語ってくれた。

飼い猫などのペットを失った時に似たような形のぬいぐるみを持たせることで、ペットロスト症候群※を抑える療法があるのは聞いたことがある。また、先のアニメキャラやアイドルの立て看板や抱き枕なども、代替機能をそれらに持たせたと考えることができる。簡単にいえば「疑似体験のためのアイテム」だ。もっとイージーに表現すれば「ごっこ遊びの道具」。

フラット・ダディ(Flat Daddy)イメージかけがえのない家族が地球の裏側へ派遣(「仕事」と割り切ったとしても「出張」)され、なかなか連絡も取れない日々が続く。理解はしていても納得は出来ない。ましてや子どもたちに理解などできるだろうか。そういう心境にある家族にとって、例え平面の写真で出来たものであっても、「フラット・ダディ」は彼らの心をいやし、父親の存在を再確認させてくれるものとなるのだろう。また、派遣されている兵士である父親(夫)にとっても、愛する人たちに自分の存在をいつも確認してもらうという意味で、少しでも安ねいを得られるのかもしれない。

「Flat Daddy」というキーワードで検索すると【I'm Already Home, Flat Daddy(もう僕は家にいるんだよ、フラットダディでね)】をはじめ、さまざまな支援団体や解説ページを見つけることができる。それらのサイトで描かれた文章や写真を見ると、切なさを感じずにはいられない。

彼らの「フラット・ダディ」が一刻も早く、「リアル・ダディ」となり、共に暮らせる日が来ることを祈らずにはいられない。


※ペットロスト症候群:大事にしていたペットを失うことで、大きな心の損失を感じ、落ち込んでしまうこと。

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