【更新】日銀の利上げの影響はあり? なし? メディアで分かれる表現方法

2007年03月06日 08:00

株式イメージ【経済産業省】は3月5日、拡大経済産業局長会議を開き、日銀が先の2月に実施したゼロ金利政策解除・利上げ実施に関する企業経営への影響について調査報告を行った([発表リリース、PDF])。概要としてリリース上は「半数以上の企業が現在・将来マイナスの影響が出る」「大企業より中小企業の方がマイナス懸念が大きい」と述べているが、メディアによって報じ方が大きく異なるようだ。

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今リリースでは金利引き上げの影響について調査した結果として、

・全企業では
 「現時点ではよく分からない」……11%
 「現在プラス面の影響がある」……2%
 「将来プラス面の影響がある」……5%
 「将来も含めて影響はない」……25%
 「現在マイナス面の影響がある」……20%
 「現在はないが将来マイナス面の影響がある」……37%
・全国で半数以上の企業が現在または将来マイナスの影響が出るかもと考えている。
・大規模企業は3割強、中小企業は約4割と、中小企業の方が懸念度が高い。
・これは企業への貸付金利が引き上げられるから。


と述べている。

金利引き上げの影響について。元図の不鮮明さから分かりにくいが、上から「現時点ではよく分からない」「現在プラス面の影響がある」「将来プラス面の影響がある」「将来も含めて影響はない」「現在マイナス面の影響がある」「現在はないが将来マイナス面の影響がある」。
金利引き上げの影響について。元図の不鮮明さから分かりにくいが、上から「現時点ではよく分からない」「現在プラス面の影響がある」「将来プラス面の影響がある」「将来も含めて影響はない」「現在マイナス面の影響がある」「現在はないが将来マイナス面の影響がある」。

要は「過半数がマイナス面の影響あり」「影響なし・プラス面の影響あり、という中立及び肯定はあわせて3割」と見ている。経営者をはじめとする一人一人の心理的な分析が各種判断に影響を与え、それが経済活動にも大きく作用することを考えると、この結果からは「(考えとしても経済全体においても)金利引下げによるマイナスの影響はある」と見て良いだろう。

また、地域別では中部・北陸・近畿、特に近畿地方が比較的楽観視しているのに対し、東北・北海道や九州地域で悲観しする傾向がある。俗に言う「地域格差」を語る人たちにはそれを裏付ける材料となりそうだ。

さて今件についてはこのように具体的な数字が発表されているが、新聞各社による報じ方は多種多様に及んでいる。ぱっと見では同じリリースを元にした記事には読めないほどで、タイトルだけを流し読みすると逆の主張をしているようにも受け取れる。

利上げの影響、企業の3割は「なし」・経産省調べ([日本経済新聞】])
利上げ「マイナス」57% 経産省の企業調査([産経新聞])
日銀追加利上げ、57%の企業が「マイナス影響」懸念([読売新聞])
中小の64%「2月利上げはマイナス」 経産省調査([朝日新聞])
企業の57%、利上げで景気悪影響懸念([TBS])


発表されている数字の切り口をどこにするかでこれだけ印象が異なるものか、とあらためて感心させられると共に、各メディアあるいは担当者の思惑の違いがうかがいしれる。

少なくとも利上げによるマイナスの影響はプラスに比べると大きいことは確かなようだ。ただ、利上げによるプラス効果が皆無というわけではない。プラス効果とマイナス効果とを両天秤にかけ、どちらに傾くのかを考えた上で、金利値上げに対する評価は行われるべきだろう。

また今件からは「タイトルや内容の表現方法に惑わされて本質を読み間違えることのないよう注意すべき」ということもうかがえる。もちろん当方自身の自戒の意味も込めて。

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