『セカンドライフ』などのネットゲームとお金、出資法などの法律問題を専門家が斬る

2007年02月19日 19:30

『セカンドライフ』イメージ加速度的に進歩発展する情報ネットワーク社会における法体制の整備や議論、研究を行う主旨で設立された【情報ネットワーク法学会】の会員であり弁護士事務所所属の、いわば「この道のプロ中のプロ」である中崎尚氏による、セカンドライフ(Second Life)などのネットワークゲームやショッピングサイトで利用できるポイントサービスと換金性、そして現行法との係わり合いへの検証記事が【IT media「「Second Life」でゲーム内通貨を米ドルに換金――出資法に抵触する?」】に掲載された。法体制が整っていない中で状況だけが先行するこの分野において、専門家による考察は極めて貴重であり、注目に値する言及がなされている。

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詳細は元記事を読んでいただくとして、ここでは概要について(当方の理解できる範囲内で)まとめてみる。まず、関連するであろう法律の中から「前払式証票の規制等に関する法律(プリカ法)」「出資の受入れ、預り金及び金利等の取締りに関する法律(出資法)」「銀行法」(+α)の3点にしぼり、それぞれについて具体例を挙げて検証している。

それぞれの法律について、問題点は次の通りとなる。

●プリカ法
・物理的な「証票」の有無が問題。オンラインゲーム上の取引やサーバ上でのみ管理する電子マネーには「証票」が存在しないため、この法律は適用されないと思われる。

●出資法
・通常オンラインゲームでは「現金への払い戻し」を不可能とすることで出資法抵触を回避している(現金の不可逆性)
・『セカンドライフ』では現金への換金サービスを「運営者」が提供している。日本国内でのサービス展開次第では出資法抵触の可能性もある。
・海外での換金サービスとなれば、外為法との絡みも?

●銀行法
・銀行法内の「資金」要件が明確でないため、ゲームやネットショッピングなどの取引が「資金」に該当するかどうかなど、銀行法との抵触の是非が問われている。
・「資金」要件としては「1:何にでも、どこでも、誰でも、使用できるか、2:一般的に元本の返還が約束されているか」が挙げられているが、これら全部なのかそれとも一部だけで該当すると判断するのか、またそれらの具体的条件が定まっていない。

●景品法
・ポイントサービス制がこの法律に該当する「かも」という論議。


要は議論すべきことが多すぎ、また専門家の意見も多種多様で、さらに事態は秒進分歩のレベルで先行しているため法律が追いつかない状態にある。ただしそれぞれの法律は有効なものとして存在するため、その時その時の司法関係者や現場の担当らによって独自の解釈がなされ、前例ができ、少しずつ体系が固まりつつあることも事実である。

順番が逆になるが同記事では、ゲームやネットショッピングなどで広がるこれらのポイントサービスやネット内経済的取引の拡充と共に、法律の不備な現状が改善されないと、

1.不十分な消費者保護
2.安定性を欠き経済取引基盤としては不適切
3.マネーロンダリングへの悪用
4.規制下で決済サービスを提供する既存事業者との不均衡
5.国家の通貨発行権の侵害


などの懸念がある、と指摘している。実際に、下記の参考記事にもピックアップしているように、その懸念が現実化したもの、あるいはその予兆を示すような事態が起きているのも事実。しかしRMTに限って言及しても、そのビジネスが立ち上がった時点から「出資法に抵触するのではないか」とする議論があったがその議論は尽きず、いまだに結論が出ていない。

ネット上の市場を主な事業展開先とする企業が続々と上場し、市場やトレンドのリーディングカンパニーとなることも珍しくなくなった昨今において、「たかがゲームだから」「たかがネット売買だから」と軽んじる時代はすでに前世紀で終わっている。

今回参照した記事で言及されているように、多くの「共通項を持つ(類似)他分野」「その道の専門家」の意見を積極的に聞き入れて論議を重ね、健全で安心できる市場形成を果たせるような自主規制や法体制の整備を進めるべきだろう。


(最終更新:2013/08/22)

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