「年金は払い損にならない」柳沢厚生労働相強調

2007年01月28日 09:00

時節イメージ【NIKKEI NeT】によると柳沢伯夫厚生労働相は1月27日、島根県松江市内の講演の中で、年金問題について「若い人も掛け金より絶対に多い額が年金として戻ってくる」と年金制度の維持について力説した。年金制度への不信・不安感が高まる中、それらの考えを払しょくするための発言と受け止められている。

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これは「国による年金制度が将来的に成り立たなくなるのでは」など疑問視する声が高まっていることに対する、年金制度を統括する厚生労働省からの「回答」。パートタイム労働者の厚生年金適用など、公的年金制度の抜本的な改革論議が現在進行している。それと並行して「年金は払い損になる」という、特に若年層を中心に高まりを見せる懸念を打ち消す意図が今回の発言にはあるという。

しかしその一方、柳沢厚生労働相は具体的に「年金支給額が年金保険料をどの程度上回るのか」(つまりどれだけ払った分以上の年金が返ってくるのか)など、具体的な根拠や数値目標は示さなかった。

サラリーマンは強制的に厚生年金に加入させられ、給料から保険料が天引きされるから別として。自営業や学生など、国民年金のみの加入義務者にとって、「公的年金って本当に大丈夫なの?」という疑問が強く、信頼性を疑うのは当然といえる。今の年金制度は「自分が支払った年金保険料をそのまま積み立てて将来払い戻しされる」のではなく、「将来年金を受け取る資格を得るために年金保険料を支払う」という仕組みだからだ。高齢化社会が進むと全人口に占める年金保険料を支払う人の割合が少なくなるため(俗に言う「支える人口の減少」)、もらえる年金が少なくなってしまうのでは、という不安がある。

色々言われている公的年金ではあるが、実はメリットも多い。まず税金の負担が減る。公的年金を支払った場合、その全額が税金の計算の際に控除される。例えるなら「生活のための必要経費」として扱われるわけだ。これが民間企業の個人年金だと年間5万円までしか経費として認められない。また、教育資金融資を受けることができる。さらにあまり知られていないことではあるが、全国各地の温泉など、国民年金施設を安価に利用することができる。

そして何より重要なのは、安全性の高さにある。年金保険料を支払い続けている人が将来年金を受け取る側になる場合、その年齢に達するまでに何年の月日がかかるだろう。10年、20年、30年? 基本的に最長で40年の可能性がある(年金の加入義務者は20歳から60歳未満)。その長期間に、個人年金を請け負う保険会社が存続している可能性はどれだけあるだろうか。

会社そのものが傾いても個人年金がすべてチャラになることはないだろうが、継続性を考えれば民間企業より国営の年金の方が存続可能性は高いといえる。どちらか一方、ということになれば、国営の公的年金が賢い選択肢となる。もちろんかつて年金の受け取りが60歳からだったものが65歳からに変わったように、制度が「改悪」される可能性は否定できないが、制度そのものが無くなるわけでは無い。

「将来のことを考えた年金など必要ない。自分は十分にたくわえを持っているから、それで死ぬまで食っていける」という豪快でリッチな人も中にはいることだろう。だが上記メリット(特に税金の面)を考えると、実はそういった「富豪な人」ほど公的年金のメリットも大きくなる。

現役大臣の、管轄する制度・商品に対する「絶対」発言といえば、先日辞任した竹中・元金融経済財政担当大臣による「今、ETF(TOPIXに連動した上場投資信託)を買えば絶対に儲かります」とする発言を思い出す人も多いはず。結局あの時の「絶対」は正解だったわけだが、今回の柳沢厚生労働大臣の「絶対」が正解なのかどうかは、数十年にかけて検証しなければ分からない。もちろん国側も知恵をめぐらし、不公正感の無い年金制度改革を行う必要がある。

国側では将来的に「公的年金に加入していないと健康保険も適用されなくなる」という動きもあるようだが(【「年金払わないと医療費は全額自己負担」!? 厚生省が検討】)、それ以前に年金加入は国民の義務。年金保険料について、「本当に年金は払い損になるのか」ということを考え直してみる必要があるだろう。

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