『セカンドライフ』の現状を少々まとめてみる

2007年01月25日 12:30

『セカンドライフ』イメージ日本では元々直訳すると「第二の人生」となるところから、「退職をはじめ仕事を辞めてから人生を切り替え、新しく気持ちを切り替えて生活をはじめる」という意味合いの強かった「セカンドライフ」(【ヤフーにもその主旨での専用サイト】がある)。しかし最近ではアメリカからやってきたセカンドライフ(Second Life)という多人数同時参加型ネットワークコミュニティゲームによってその地位を脅かされつつある。一部では「Youtubeに続く注目サイトはこれだ!」と、日本語サービスが始まる前からモテモテ状態。『セカンドライフ』に関する日本国内での状況も色々と動き出したので、ここでざっと日本に深く関わることについて、簡単にまとめてみることにする。

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『セカンドライフ』イメージ『セカンドライフ』とは
まず『セカンドライフ』とは何ぞや、というところから。『セカンドライフ』は多人数同時参加型の3D表示によるネットワークゲーム。技量と才能さえあれば、そしてルール内であればさまざまなアイテム(商品にもなりうる)を自分自身の手でゲーム内に創造することができるのが強み。

さらにゲーム内通貨「リンデンダラー」と現実の通貨であるアメリカドルとの兌換性を持たせたことや、3Dで自由にデータを作れること、製作したデータの著作権を運営会社ではなく製作者に与えることなどのシステムを導入している。これにより、多くの実企業が支社を作ることなどで参入し、マーケティングをはじめとする各種営業活動を行っている。また先日、クライアント(各ユーザー・プレイヤー)側のソフトウェアを一般公開し、さまざまなツールの開発をうながした。

ざっと表現するなら「3Dポリゴンで表現された自由度の高いネットワークゲーム。ゲーム内で色々なアイテムを好きなデザインで作り、機能付けることができる。それらのアイテムを使って遊んだり商売もできる。土地を買って家を建てたりビジネスもできる。特にデザインセンスが問われる、クリエイティブなネットワークコミュニケーションゲーム」というところか。


日本語版は?
何よりも気になるのは日本語版がいつ登場するか。トップページでは去年から「日本語版、まもなく公開」のメッセージが踊っている。去年の発表の際には「年末」という話だったがついに年を越してしまった。【最新の報道(日経新聞)】によると、「2月をめどに」とあるので、春先には登場することになるだろう。もちろん日本語版といってもゲーム内でプレイする他国人が日本語でしゃべってくれるわけではない。キャラクタの設定やキャラ同士の会話、商品の売買などを日本語で表示できるようにし、日本人の利用者を増やす狙いがあるという。

ただし、ただぶらぶらとうろついたりイベントを眺めたり観光旅行をするだけならそれほど難しくないが、本格的に生活になじみゲーム内での「セカンドライフ」を楽しんだり、一旗挙げようとなると、それなりにハードルも高くなる。これは他のネットワークゲームと同じ。

ガイドブック
確認した限りではすでに【「セカンドライフ」公式ガイドブック(英語)発売】でお伝えした、公式のガイドブックが唯一のもの。しかも英語だ。常に状況が動き、新しいシステムが導入され、半年も経てばまったく別物になってしまうこともあるネットワークゲームにおいて、紙媒体の攻略本は半ばナンセンスなもの。とはいえ、リアル(現実)の手引きが手元にあるのは何となく安心感を与えてくれるのも事実。

企業の動向同様、「日本国内でも『セカンドライフ』はイケる!」ということになれば、この本の翻訳版や、日本独自の解説本も発売されることだろう。


企業と広告代理店の動き
海外では(日本の海外法人も含め)例えば【最新の報道(日経新聞)】によると【トヨタ(7203)】【日産(7201)】、そしてパソコンのデルなど多くの企業が土地を購入して支店を立て、広報活動やマーケティングリサーチ、さらには『セカンドライフ』内で自社商品(のゲーム内アイテム)を販売している。そして日本語版の登場を間近にひかえ、日本国内企業もようやく動き出しつつある。【ロイター】のように本業同様に『セカンドライフ』内で取材を行い、ゲーム内メディアとして活動しているところすらある。

『セカンドライフ』イメージすでに【デジハリでの『Second Life(セカンドライフ)』無料セミナーレポート】などでレポートしたように、【デジタルハリウッド】では『セカンドライフ』内の生活やビジネスをサポートするセミナー・講座の開設をしているし、先日は【博報堂(2433)】系列の【DAC(4281)】が企業活動のサポートを行うビジネスを展開する(【リリース、PDF】)と発表、同社株はストップ高をつけるなど注目を集めている。『セカンドライフ』が日本でも多数のユーザーのハートをつかみ、日本におけるマーケット市場としても有効であると認識されれば、他の広告代理店も参入し、それにサポートされる形で多くの企業が支店をつくるなど展開していくだろう。


反発の声
人気が高まればもちろん反発の声も上がる。その声が正当なものであろうと無かろうと、それは世の常である。『セカンドライフ』もその例にもれず、さまざまな反発の声を受けている。先に【アメリカ議会、ネット上の仮想世界へも課税の動き】で報じたようにアメリカでは『セカンドライフ』をはじめとしたネット上の仮想世界へ課税を行うべきだという動きが強まりつつある。具体的にどうなるのかはまだ未知数だが、動きが見られたこと自体、非常に興味深い。

ゲーム内の行動について自由度が高いのはすでに説明したとおりだが、その自由を「自由奔放」ととらえるやからも出てきている。もちろんシステム側が逐次管理し、適切な処理をしているが、すべてを完璧に行えるわけではない。企業がゲーム内で経済活動をし、ゲーム内通貨が実際の通貨と兌換性を持つ以上、今後さらなる監視・管理に注力をする必要が出てくるだろう。

また、「セカンドライフ(第二の人生)? まずはファーストライフ(今の人生)だろ!?」といわんばかりに、【ファーストライフ】なるパロディサイトも登場している。これは「あれだけ『セカンドライフ』が騒がれているけど、結局つまらないじゃん!」とがっかりした人たちの声を代弁しているとのこと。

ファーストライフ。……もちろんパロディサイトであり、実際にはこんなゲームは無い。しいて言えば今のこの人生自身がゲームのようなもの、というところか。
ファーストライフ。……もちろんパロディサイトであり、実際にはこんなゲームは無い。しいて言えば今のこの人生自身がゲームのようなもの、というところか。

キャッチコピーは「あなたの家のタンスを探してファーストライフなスタイルで着こなそう(ACCESS YOUR CLOSET TO BUILD YOUR FIRST LIFE LOOK)」。もちろん『セカンドライフ』のパロディ。現在の登録者数は65億5362万8382人、今日新たに参加したのは36万4936人、この世を去ったのは15万2029人、テレビを見たのはのべ821億2410万2305時間、そしてなぜか買われたパンツが2万7021枚と表示されている。もうノリノリである。


日本での展開は……?
海外であまりにも騒がれ社会現象化しているがため、特にビジネスやネット業界から注目を集めまくっている『セカンドライフ』だが、日本国内における展開がうまくいくかどうかは正直未知数といえる。自由度が高く、さまざまな可能性を秘めているのは事実だが、同時にそれはハードルが高いことも意味している。世間一般に『ファイナルファンタジー』よりも『ドラゴンクエスト』の方がウケがよいように、日本ではゲーム文化として「色々誘導してもらって比較的楽な操作でプレイできる世界において、主人公的な立場に自分がいる」タイプのゲームが好まれる傾向が強い。それとはまったく相反する位置にある『セカンドライフ』が、不特定多数に広まるのは難しいかもしれない。

しかしその一方、コアユーザーにはうまくツボをつくことで、既存のネットワークゲーム同様に大いに盛り上がる可能性は高い。しかしこの場合、参入企業が期待する「不特定多数のユーザーを対象にしたマーケティング」は困難になる。

ただ、センスある先駆者が開拓者として日本人向けの「環境」を作り、コミュニティを形成すれば、ある程度高めのハードルを下げられるかもしれない。あるいは運営側のリンデンラボの努力次第といえる。

何はともあれまずは、日本語の展開が実際に行われてから状況を見てみることにしよう。


■関連記事:
【IBMとのインタビューが『セカンドライフ』内で実施、リアルと仮想世界の差異も無く】


(最終更新:2013/09/13)

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