携帯業界のキーポイント・GPS機能の今後を探る

2007年01月02日 19:00

昨年年末【Opening Bell】において、携帯電話業界の動向を占う上で欠かせない、GPS機能に関する小特集が組まれていた。携帯電話事業に関わる銘柄に興味がある人には非常に役に立つであろう内容だったので、ここに簡単にまとめてみることにする。

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GPS衛星イメージまずGPSとは何ぞやという話から。GPSとは「Global Positioning System」の略で、日本語訳化すると「全地球測位システム」ということになる。アメリカが軍事用として打ち上げた人工衛星の電波を使い、測定地点の地球上の位置・場所を割り出すというもの。元々軍事用に使われていたシステムが民生化された代表的なものだ。すでに自動車のカーナビをはじめ、さまざまな機器に用いられている。

そしてこのGPSだが、事業用電気通信設備規則が一部改正され2007年4月1日から施行される(【平成十八年一月五日総務省令第一号 の未施行内容】)のにあわせ、第三世代携帯電話にはGPSを標準装備し、位置情報の確認通達ができるようにしなければならなくなる。

現在単純に「GPS搭載」としている携帯電話端末の数は、【au(KDDI)(9433)】が98種類とぬきんでて多く、【NTTドコモ(9437)】が9種類、【ソフトバンクモバイル(9984)】が6種類にしか過ぎない。たただしこれらに搭載されているGPS機能も単純化されたもので、事業用電気通信設備規則改正によって求められる「GPS機能」には該当しない。つまり、4月1日以降に発売される機種では「改めて」対応機能を搭載しなければならなくなる(ちなみにその「求められているGPS機能」とは、例えば110番通報すると自動的にGPS機能で携帯電話の現在位置を警察などに通達するというもの)。

ただし2006年11月以降に発売されたドコモの903iシリーズのうち6機種(D903i、F903i、N903i、P903i、SH903i、SO903i)はすでにこの規則改正に対応した機能を保有しているとのこと。これらの法的義務化により、携帯電話を用いて迅速に事故対応が出来るような意図があるようだ。実際事故に直面しても、慌ててしまって現在位置がうまく伝えられなかったり、目標物が周囲になくて口頭で伝えられず困ってしまうということが無くなるのはありがたい話。

この「GPS機能付携帯電話」の普及により、さまざまなビジネスチャンスが生まれつつあるという。例として挙げられたのが【ゼンリン(9474)】による【ゼンリン地図+ナビ】。目的地までのルートをさまざまな条件(例えば雨にぬれないようにする、階段が少ない)をつけて検索できる点にある。普通のナビゲーションシステムでは不可能な、便利機能だ。ゼンリンの担当者は「人が歩ける道をずっと研究してきて、GPS付の携帯が普及するということで、まさに今回のシステムのお披露目の機会を得られる機会を得られることになった。本当に使える携帯ナビゲーションを送り出したと思う」と自信満々で述べていた。

GPS衛星イメージ【旭化成マイクロシステムズ(3407)】は新しいセンサー「6軸電子コンパス」を開発した。現在使われている「3軸電子コンパス」と比べ、飛躍的な性能アップとさまざまな可能性が期待できる。現在の3軸のものは地磁気をXYZの3軸で計測するが、6軸ではそれに重力をそれぞれXYZで計測する。6軸で、地磁気以外に重力を計測することにより、立体的な傾きにも対応できるとのこと。また、例えば任天堂のゲーム機Wiiのコントローラーのように※、搭載している携帯電話に立体的な動きをさせて新しい遊びやシステム提供に使えるようになるという。

2007年4月の法的義務化により、今後GPS搭載の携帯電話のシェア率は高まり、【矢野経済研究所】の予想によると2011年には携帯電話の90%がGPS対応になるという。

現在GPS機能を用いている携帯電話向けサービスとしては、ナビゲーションシステムのものがほとんど。今後義務化などによって市場が拡大し、さまざまな分野での参入が予想される。今後さらに展開されるであろうサービスとしては、

運営・開発企業サービス名
セキュリティ【セコム(9735)】【ココセコム】
SNSKDDI、グリー【EZ GREE】
ゲーム【モブキャスト】【サムライGPS(PDF)】
求職・求人ロケーションバリュー【おてつだいネットワークス】


などを挙げていた。いずれも「位置情報を提供できる(携帯電話を持つ)人が増え、それがごく普通になる」ということが前提としてあるからこそビジネスプランとして成り立ち、発展が望めるサービスである。

また、関連企業として、次のように企業がピックアップされていた。

【愛知製鋼(5482)】……6軸センサー
【リコー(7752)】……3軸加速度センサー
【ヤマハ(7951)】……3軸地磁気センサー
【セイコーエプソン(6724)】……GPSモジュール


最後に番組では2つほどGPSの問題点が指摘されていた。1つは「現在のGPSでは10メートル~100メートルの誤差が生じる」ということ。もう1つは「屋内ではGPSの電波が受信できないので利用できなくなる」ということ。これらの問題点を部分的に解決する策として、2008年以降に打ち上げられる準天頂衛星の活躍が期待されている。これは日本のほぼ真上に位置する形で静止する静止衛星のため、(日本においては)ビルや山などの障害物の影響をあまり受けない・電波が届きやすくなるというメリットがある。

単なる「持ち運びできる電話」から開発がはじまり、今や位置情報を公的機関に送信してリスク回避や通報システムにまで用いられるようになった携帯電話。今後「総合情報端末」としての機能にどんなものが加わるのか、技術発展と、その技術を用いた新しい「システム」「サービス」の提案が楽しみな人は少なくないだろう。技術開発の進歩と共に、多くの独創的なアイディアによる「提案」に期待したいところだ。


※Wiiの場合は【STマイクロエレクトロニクスの3軸加速度センサが任天堂の『WiiTM(ウィー)』に採用され、ゲーム業界革新に貢献】にもあるように、3軸加速度センサーが用いられている。

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