究極のコンビニ漫画現る・「コンビニDMZ」紹介

2007年01月02日 11:15

「コンビニDMZ」イメージ当サイトでは「身近な存在」「株価動向との関係」「社会情勢に敏感」などの理由から、コンビニエンスストア(とその運営会社)に関する記事を幾度と無く掲載している。それ絡みというわけでもないが、最近注目している「コンビニ漫画」を紹介しよう。『月刊アワーズ』で2007年1月号から連載を開始した【竿尾悟】先生による「コンビニDMZ」である。

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いらっしゃいませ、野郎ども
第一話に見開きで登場する
店長らとコンビニ全景(の一部)
アクの強い、歴戦の戦士以上の
強さを誇る店長の第一声は
「いらっしゃいませ、野郎ども!!」

舞台設定は欧州某地域。恐らくサラエボ周辺のごちゃごちゃとした紛争地帯をオマージュしているのだろう。連邦軍・反乱軍・独立派民兵、さらには国連軍の四派が入り乱れて勢力均衡のままドンパチを繰り返しつつ日々を過ごしているという、まったくもって「非日常的な世界」。「コンビニDMZ」では、その中の緩衝地帯に設けられたDMZ(Demilitarized Zone、非武装地帯)にある、日本企業経営(?)のコンビニエンスストアでの物語が描かれている。

ちなみにこのコンビニの敷地内は国連、NATO、現地両軍によって中立が保障されているという設定。コンビニ内では複数の勢力の兵士が普通の客として買い物をし、例え隣に敵対勢力のリーダーがいても手出しを出来ない、それどころか武装の持ち込みやヘルメット脱帽という、永世中立国のスイスばりのルールが設けられている。ちゃっかり「店内禁煙」もあるあたりは、コンビニらしい。

作品内では「非日常真っ只中の戦場で、日常生活の代名詞であるコンビニエンスストアが(確固たる権威を背景に)自己主張をしていたら、どのような喜劇が起きるのか」という話を面白おかしく描いている。元々作者である竿尾悟氏は以前同誌で『迷彩君』という、やはり「戦争という名の非日常と学生生活という日常をおりまぜて喜劇的に描く」作品を連載しており好評を博していたことから、このタイプの漫画を得意としているようだ。

氏の画調は戦闘シーンの描写のこだわりや精密さはもちろんだが(今は無き「コンバットコミックス」などでも作品掲載経験あり)、描写が極めて力強く、ダイナミックな迫力を感じさせる。戦闘シーンだけでなく一般の日常生活シーンでもそのリアルさが引き継がれているため、安心感を持って見ることができると共に、氏の作品のテーマである「日常と非日常のダイナミックな融合」を違和感無く読み取り、楽しむことができる。これこそが氏の作品のもっとも大きな魅力といえるだろう。

店長、悪魔の微笑み
数少ない商品を巡って
店内でトラブル発生。
店長は「日常」ルールに従い
「営業スマイル」で筋を通す。
コンビニ経営者の鏡といえよう(?)

今作「コンビニDMZ」の主人公は、舞台となる「コンビニDMZ・ポイントチャーリー店」の川口洋一店長。歴戦の戦士たちをもコンビニスマイルと正論と「悪魔にも勝る」笑顔で説き伏せてしまう、ある意味史上最強のインターナショナル・コンビニ店長。各勢力の均衡によって権威を得ているとはいえ、コンビニの中では「俺がルールだ」的に、しかもわがまま奔放ではなく「日常の正当なコンビニルール」に従いお客と相向かう川口店長の姿は、まさに「ビジネス戦士」といえるだろう。

また、単なる「日常・非日常混在おちゃらけ漫画」と軽んじるばかりではなく、コンビニ経営、あるいは商売そのものの本髄をついてくる展開もあるから気を抜けない。今月発売の2月号に掲載された(新装)第一話では、ネット住民愛用の駄菓子として有名な「うまい棒」の類似品「うまいけ棒」を求める連邦軍司令官に、店長が「品切れです」と答えたところ、

「お客のニーズに応える便利な店、それがコンビニではないのかね?」


「お客のニーズに応える便利な店、それがコンビニではないのかね?」イメージと詰め寄るシーンがあった。たかが1本10円の「うまいけ棒」で何を大げさな、という笑いも誘うものではあったが、同時に戦場の中での日常を求めるという特異なシーンだからこそ、重みを感じるセリフなのかもしれない。仮にこれがこのカットだけ抽出され(背景に「1本10円のうまいけ棒の争奪戦がある」ということを抜きにしてだされ)たら、何の偏見も違和感も無く、コンビニエンスストアの原点にして本髄を語るシーンとして受け入れられることだろう。

すでに何度と無く報じているように、最近コンビニエンスストアでは地域密着型やお年寄り・子ども向けの商品や環境整備で客層を広げたり、ペット商品を充実させている。さまざまな業界とのコラボレーション企画を催し、多くの人のニーズと関心を集め、低迷する個人消費に打ち勝ち、さらなり売上増加を模索し続けている。

それらの施策も突き詰めればかのセリフ「お客のニーズに応える便利な店、それがコンビニ」に行き着くあたり、実は「コンビニDMZ」は鋭いところを突いているのではないかと再認識させられる。

「紛争状態の地域」という非日常と「コンビニエンスストア」という日常の象徴をミックスさせて、しかも面白ユカイに話を構成するのは意外に難しいかもしれない。が、すでに似たようなストーリー構成を「迷彩君」で成し得た竿尾悟氏であれば、その心配は要らないだろう。次号以降にも大いに期待したいところだ。

(最終更新:2013/09/14)

(C)少年画報社/竿尾悟

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