200ページ超の無料漫画週刊誌「コミック・ガンボ」1月16日創刊・配布量と広告効果が命運を分ける!?

2007年01月14日 19:30

書籍イメージ[このリンク先のページ(tokyo-np.co.jpなど)は掲載が終了しています]などによると日本で初めての無料漫画週刊誌コミック・ガンボ(創刊日以降アクセス可能)が1月16日から創刊(配布)される。版元は【デジマ】。※記事の最後に、「コミック・ガンボ」配布日の記事へのリンクがあります。

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ターゲットは20代から40代の男性で発行部数は10万部。毎週水曜・火曜日に山手線を中心とした東京都内と横浜・千葉・大宮など関東主要の30駅で配布。時間は午前8時から11時頃と午後5時から8時ごろという、サラリーマンの通勤・帰宅時間帯。よく見かけるフリーペーパーのように専用の棚に山ほど置かれて「ご自由にお持ち下さい」のスタイルを採るのではなく、直接手渡しして配布するという。

版型はB5版でページ数は通常の青年漫画誌の半分ほどの230ページ。そのうち26ページが収益を稼ぐための広告になるため、漫画そのものは実質的に200ページほどとなる。

掲載内容はというと、独自解釈で夏目漱石の原作を描く江川達也氏の「坊ちゃん」などの連載11本と読みきり2本。確認できる執筆陣は江川氏の他に村上もとか氏、吉田ひろゆき氏、板橋しゅうほう氏、カネシゲタカシ氏(「通販の鬼やすだ」を隔週連載、本人のブログで確認)など。

関東近辺在住でない人や受け取れなかった人も、公式サイトでパソコンや携帯電話ででも無料で閲覧ができるようにする予定だという。ただしネット上の展開はあくまでもサポートで、メインは「手渡し紙媒体による無料配布誌」なのだという。

元記事では「ガンボ」の他にも【吉本興業(9665)】の青年コミック誌構想(中身がすべて吉本の芸人が関わっているという)や、かつて600万部の発行部数を誇っていた少年ジャンプが今や売上を半減させていること、コミック誌の停滞と規模縮小が携帯電話の伸びに密接な影響があることなどが語られている。携帯電話に余暇時間を取られたので、コミックが売れなくなったのだという分析だ。

さらに最近ではアニメやテレビに関連したコミックスを買う傾向が強く、言葉は古いがマルチメディア化を意識して漫画を創り上げねばならないという事情も語られている。

さて。

フリーペーパーというからにはタダで配るわけで、雑誌そのものの売上を期待することはできない。一方で配布経費や印刷代、紙代、会社の運営費、漫画家への原稿料など、必要経費は山ほど存在する。何か別の意図(例えば大手企業の慈善事業、広報宣伝活動)があれば話は別だが、フリーペーパースタイルの無料漫画週刊誌をメインビジネスとするとなれば、それだけ何らかの形で収益を上げねばならない。

現在駅などでよく見かける「R25」や「ホットペッパー」の事業が成り立っているのは、多くの広告主がつき、彼らが発行元に広告料を支払っているため。もちろん普通の有料誌でも広告は見受けられるが、フリーペーパーでは雑誌の代金分までをも広告主が負担している計算だ。

・売上構成
有料誌:掲載広告料+雑誌販売費
フリーペーパー:掲載広告料のみ


流通網などは多少違うが有料誌だろうとフリーペーパーだろうと紙媒体である以上、かかる費用はあまり変わらない。「どこから売上を得るか」という点だけが(お金の計算上は)異なる。

この構図では、広告主には「有料誌<フリーペーパー」という効果が見られない限り、広告を出すことはしないだろう。例えるなら、「10万部出ている有料誌で10万円の広告費」「10万部出ているフリーペーパーで20万円(10万円+雑誌無料化のための負担10万円)の広告費」どちらを選ぶかとなれば、もちろん前者を選ぶ。客層などを考慮しなければ、同じ効果が狙えるのなら安い方が良いに決まっている。

・経費その他が20万円必要だった場合
有料誌(10万部):「広告料10万円」(1円で1.0人に読まれる)+「雑誌売上利益10万円」
フリーペーパー(10万部):「広告料20万円」(1円で0.5人にしか読まれない)

∴1.0人>0.5人で「有料誌に広告を掲載」


この例では最低でもフリーペーパー側の発行部数が2倍の20万部出る必要がある。そうすれば1円あたりの読者数が有料誌と同じになるからだ。

ところが、上記参照記事にもあるように、最近は紙媒体の雑誌発行部数が落ちているという傾向がある。その一方でネットの普及もあり、「無料媒体」への抵抗感が薄れ、誰もが気軽に手にとってちょっとした時間の合間に目を通すようになった。ターミナル駅などに置かれているフリーペーパーのコーナーは、人気があるものでは並べられてから半日も経たずになくなってしまうものだ。当方(不破)も「R25」がなかなか手に入らず難儀した記憶がある。

・上記の例で有料誌の販売冊数が3万部減り、フリーペーパー配布数が2倍に。
有料誌(7万部):「広告料10万円」(1円で0.7人に読まれる)+「雑誌売上利益7万円」※
フリーペーパー(20万部):「広告料20万円」(1円で1.0人に読まれる)

∴1.0人>0.7人で「フリーペーパーに広告を掲載」
※有料誌は経費削減か広告料値上げか、雑誌代の値上げで3万円分を補填しなければならない。


もちろん「売り切れ」ならぬ「品切れ」続きのフリーペーパーとなるためにはそれなりの工夫や内容の充実、宣伝が必要。しかし基本を守り質を維持していけば、有料誌ではベストセラーの範ちゅうとなる10万部単位の配布も不可能ではない。

媒体の注目度や手元に置かれている時間、広告を読んでもらうお客の質や読まれる割合、そして何よりどれだけの数が実際に読者の手に渡るのかといった「広告効果度」の違いは考慮する必要がある。しかしそれを差し引いても、「大量の読者に読んでもらえる」という強い武器を持てるフリーペーパーに対し、広告主が集まる可能性は高いといえよう。

ましてや「コミック・ガンボ」の場合は手渡しで読者に渡されるのだから、何らかの形で読んでもらえる可能性はほぼ百パーセントといってよい。棚に置かれたまま野ざらしになっている分まで「読まれた」と計算されて「そりゃインチキだよ」と広告主が頭をかかえることもない。なるほど、多少手間ひまと費用がかかっても「コミック・ガンボ」が手渡しという手法を採るのは、このあたりがポイントなのかもしれない。

実際にどれだけの広告主がつくのか、そしてそれらの広告主が「広告の効果あり」としてお得意様になるのか。発行・配布部数の有効性と広告効果に「コミック・ガンボ」の命運がかかっているといってよいだろう。


■関連記事:
[1/16]日本初の無料配布漫画週刊誌「コミック・ガンボ」本日配布開始

【ヤフー、「ブラッド」などの漫画コンテンツを無料連載・2007年1月から配信開始】

(最終更新:2013/08/23)

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