陸自、デジタル化で情報伝達を迅速化・北海道で実験開始

2006年12月29日 08:10

陸上自衛隊イメージ【北海道新聞】が12月26日報じたところによると、陸上自衛隊は2007年度、前線の部隊や戦車などにコンピュータ情報端末やデジタル通信機を装備してネットワーク化し、状況の把握や指揮命令伝達を迅速化する新システム「基幹連隊指揮統制システム」を全国でははじめて北海道内の部隊に配備し、実用実験を開始するという。具体的には前線の部隊と、指揮をつかさどる連隊本部との情報のやりとりを従来は音声中心の無線交信だったものから、情報技術化することで、作戦行動が飛躍的に効率化するとのこと。

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この「基幹連隊指揮統制システム」は防衛庁の外郭組織【技術研究本部】に詳細な資料があるが、【2004年には技術試験が終了】している。2006年度にようやく実物のものとして完成したようだ。実用実験(実証実験)は北海道に位置する北部方面隊の師団が担当、初年度は連隊(約1000人で構成)規模で運用することが政府の予算案に盛り込まれた。

具体的には前線の小銃、対戦車、迫撃砲など各小隊の隊員(初年度は小隊長程度まで)や戦車、軽装甲機動車などに衛星利用測位システム(GPS)、デジタル通信機、小型コンピューター情報端末(隊員は携帯型)を装備する。そしてGPSで検出したそれぞれの位置や、赤外線センサーなどで探知した敵の位置や規模などを端末に取りこみ、ネットワークを通じて連隊本部のコンピュータに集約する。

各部隊における「基幹連隊指揮統制システム」の装備品。
各部隊における「基幹連隊指揮統制システム」の装備品。

一方連隊本部では、状況の全体像をコンピュータ画面上で把握して命令を伝達する。この情報は前線の端末からもアクセス可能。

このシステムは北部方面隊で実験を繰り返し、逐次全国の部隊に導入していく予定。

【技研本の資料(PDF)】によると、このシステムの導入により、野外において指揮統制に必要な機能を実現することができ、部隊統制が非常に容易にできるようになったとのこと。

技研資料による「基幹連隊指揮統制システム」の運用方法と効果。
技研資料による「基幹連隊指揮統制システム」の運用方法と効果。

部隊のいわば「IT化」は、アメリカ軍が先行して導入を始めている。兵力を削減せざるを得なくても作戦能力を向上できるとして注目を集めており、自衛隊でも2005年から2009年の中期防衛力整備計画で、導入を決定していた。また、北海道の北部方面隊を実証実験の対象としたのは、1)北海道内の部隊が「総合近代化師団」として位置づけられていること 2)広大な演習場など環境に恵まれていること などが大きな理由だという。

情報をすばやく効果的に収集整理し、それを適切に分析し、的確な指示を与えることで、同じ戦力でも何倍もの効果を発揮することができる。それは自衛隊に限らず、サッカーやフットボールなどのチームプレイを必要とするスポーツを例にとっても明らかだ(適切なリーダーや監督が素早く指示を与え、選手がそれにスムースに従えば、そのチームは何倍もの力を発揮できる)。

その観点からすれば、「基幹連隊指揮統制システム」が導入され効果的に使われることになれば、「予算を節約した上で」自衛隊の戦力を高めることができるだろう。また、単に戦力に限ったことではなく、大規模災害救援派遣などにも役立つに違いない。

ただ、利用者側の操作ミスやプログラム上のバグ、さらにはジャミングやハッキングなどデジタル上の妨害といった、「IT化した上での注意点」が増えるのも事実。その分野の専門家を配して注意を怠ることがないようにすると共に、情報部門での防衛策にも注力してほしいものだ。

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