「遊べるというのは、ゲームの完成度ではなく、それが直感的に遊べるかどうか」高橋名人、現在のゲーム業界(専門誌)に苦言を呈す

2006年11月27日 06:30

ゲームイメージ【ハドソン(4822)】の役員にして現在は肩書きも「名人」となった、かつてゲーム機のパッドを毎秒16連射したり指圧でスイカを叩き割ったり「ゲームは1日1時間」という世紀をまたいだ名言を残すなどゲーム業界の歴史を語る際には欠かせない人物の一人である高橋利幸氏こと「高橋名人」のブログ【16連射のつぶやき】において、高橋名人が現在のゲーム業界に苦言を呈したメッセージを送っていたことが明らかになった。ある雑誌での「意見」を元に、高橋名人ならではの自論が語られている。

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詳細はブログを参照してほしいが、概要をまとめると次のようになる。とある雑誌において「テレビゲームにおいては完成度が大切だ。ピラミッドの頂点のユーザーを目指すのが大切だ。それこそがゲーム業界全体が目指すべき方向だ」と旗振りゲーム業界全体をあおっているのに対し、高橋名人は「完成度だけに対して意見を言うことは必要かもしれない」とした上で、

・遊びとしてのテレビゲームでは、ゲームを遊ぶ年齢や環境、ゲームが目指している遊び方をもっと考えねばならない
・ゲーム業界が目指すべきは「ピラミッドの頂点」ではなく、ピラミッドの「中腹から底辺」に近いところにいるユーザーだ
・それらのユーザーにとって大事なのはテクニックではなく、「そのゲームが面白いという意見が直感的に出てくること」である
・「遊べる」とはゲームの完成度ではなく、それが直感的に遊べるかどうかである


と述べている。そして、ピラミッドの頂点(のユーザー)を目指したために駄目になってしまったジャンルがあること、さらにそれを今でも引っ張ろうとして、それが頂点を走っていると勘違いをしている雑誌社があると警鐘を鳴らしている。

「桃鉄」がフルCGになっても
「スターソルジャー」が3Dになっても
楽しいとは思いません。
ドット絵に近いCGだけど楽しい。
そんなゲームを作って行こうと
思っています。
……高橋名人(高橋利幸氏、ハドソン)

さらにゲーム業界では「これからのユーザーを育てていかねばならない」のに、それがなかなか出来ていないとし、「ハドソンとして出来ることは、数億円をかけて作るオープニングムービーがいらない、遊びとして楽しいTVゲームを作ることだと思っています。桃鉄がフルCGになっても楽しいとは思いません。また、スターソルジャーが3D(に)なったからといって、楽しいとは思いません。ドット絵に近いグラフィックだけど楽しい。そんなゲームを作って行こうと思っていますが、これがとある出版社には分からないようです」(引用、一部補填)と、ため息が聞こえてきそうな文調で語っている。

インターネットによる情報発信が進んだ現在でも、直接のゲームプレイヤーへの影響はもちろん、ゲームを販売する店舗をはじめとする卸業者への影響もあわせ、ゲーム業界専門誌の影響力はきわめて大きい。専門誌の取り上げ方一つでゲームの売行きは、それこそケタ違いになる。だからこそ専門誌の方針や方向性は、「商品を売る」という会社の業務を果たす点において、大きな影響力を与え、それはゲームの傾向も含めた開発分野をも左右しうる。極端な話

「面白いし多くのユーザーが気に入ってくれるだろうけど、このタイプのゲームは専門誌が嫌うから、売れないかもしれない。じゃあ作るの止めようか」


という、ユーザーにとってもメーカーにとっても、ゲーム業界にとってもマイナスとなる状況が起きうるわけだ。

【任天堂(7974)】の山内溥相談役が社長在任中に、他社ハードがグラフィックなどの高性能化に傾注していく中で「重厚長大なゲームは飽きられている。ゲームは常に新しい楽しさを開発してひたすら完成度を高めていくことこそが本質。軽薄短小でも完成度の高いゲームを送り出すことが大切」と何度と無く述べていた。その考えと高橋名人が訴えようとしていることは同じところを目指しているのかもしれない。

すでにお気づきの人もいるだろうが、最近ゲームランキングの上位を占めるようになった、シンプルな遊び系ゲームや、『東北大学未来科学技術共同研究センター川島隆太教授監修 もっと脳を鍛える大人のDSトレーニング』をはじめとする「面白真面目」系ゲーム、「知的探求型」型ゲームには、ほとんど攻略本・解説本が存在しない。これはゲームそのもののスタイル(そもそも攻略するものではない)などに帰するものだが、専門誌としては「面白くない」ため、通常の「長編攻略ができるボリュームたっぷりのゲーム」と比べ、記事が書かれ、専門誌上に露出される機会が少ない。そのような状況こそ「高橋名人が憂いていること」「危惧していること」なのかもしれない。

もっともこれらのゲームは、本来あるべき姿の一つ「口コミ」をはじめとした「純粋な面白さゆえの魅力伝播」から、専門誌に取り上げられる機会が少なくとも大いに売れているという事実もある。最近任天堂タイトルをはじめとした、DS系タイトルが好調なのも、これが大きな要因の一つといえるのだろう。

ちなみに当方(不破)としては、山内氏の「重厚長大よりも軽薄短小を」を生で聴いたときから感銘を受け同意をしていたこともあり、高橋名人の意見にもほぼ同意できる。もちろん「重厚長大」なゲームも大好きだ。が、多くの人に受け入れられるべきはどれなのか、それを考えれば好調なDSタイトルのラインアップを見るにつけ、「一つの良い結果が出つつあるのだな」と感銘を受けている今日この頃である。


(最終更新:2013/09/15)

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