証券業界にとってのウィークポイント「優遇税制」の存続を求めた攻防戦が続く

2006年10月23日 06:30

株式イメージ【J-CAST】において証券税制の優遇措置廃止に絡む攻防戦の展開に関するまとめが掲載されていた。すでに何度か報じているように、2007年末で終了する証券税制の特別優遇措置には各方面の思惑が複雑に絡み合い、「予定通り終了」「延期して」という相反する意見が対立する状況が続いている。

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2007年末には株式の譲渡益に関する優遇税制が期限切れとなり現状の10%から20%に戻る。また、株式の配当についても2008年4月から現状の10%の措置が無くなり20%に差し戻されることになる。これは預貯金などと同じ率であり、公平感の維持という意味ではまったくもって正論。【財務省】や政府税調では「景気は回復しつつあるのだから軽減措置は終了でいいだろう(それに税率を元に戻せば税収も増えるし)」との思惑。

一方【日本証券業協会】【金融庁】【日本経団連】では、「優遇措置を止めてしまったら株価が下落してしまう(そしてせっかく回復しつつある景気も後退しかねない)」という危機感を強めている。

元々特別優遇措置は2003年に株価が大低迷していた時代に設けられたもので、「投資をした方が有利だからみんな証券投資をしようよ」というメッセージが込められたものだった。ネット証券を中心に多くの個人投資家が生まれ売買は活性化し、思惑はうまくいった。数値目標は設定されていなかったが「ここまで景気も株価も証券取引も活性化したのだから、そろそろ優遇措置は止めるべきだ」という論評が加速化している。

ところが優遇措置に投資業界に身をゆだねた少なからぬ「初心者」的立場の個人投資家の目には、特別優遇措置の撤廃は「元に戻る」のではなく単なる「増税」にしか写らない。投資の世界から身を引くことはないだろうが、売買を控えるようになるのは容易に想像がつく。

【日本証券業協会、株式譲渡益の優遇措置が予定通りに終了なら個人投資家にマイナスとの調査結果】でも報じたように、日本証券業協会では「税制を元に戻すと個人投資家が逃げちゃうよ」というアンケート結果を出して、措置継続を訴えている。存続希望派によるアンケートなのでどこまで信頼をしてよいのか、という問題もあるが、「優遇措置終了=投資動機の縮小」は間違いあるまい。

企業への「投資」が減らないように、という意図なら「1年以上連続保有していれば優遇措置はそのまま継続」といったように、中長期保有者への優遇措置をとることである程度ストップをかけることはできるだろう。上場企業の利にもかなう(という大義名分を果たす)ことになる。「存続希望派」が「終了派」と妥協点を見出すとしたら、そこが落としどころだろう。

もちろんこの案では、「何度と無く売買を繰り返してくれないとデイトレーダーなどの個人投資家が手数料を落としてくれない」ので、証券会社は良い顔をしない。最大の良客を逃がしかねないから当然だろう。それでも「完全終了」よりはマシなので、妥協せざるを得ないのではないだろうか。

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