シュールでシビアな最終戦争シミュレーションゲーム『DEFCON』

2006年10月09日 19:30

『DEFCON』イメージ近隣諸国でおふざけが過ぎる国家元首がエラいことをしでかしたおかげで今日の午後からテレビ番組は同じような話ばかりとなってしまったが、そのような事態が起きる前から「今日の夜までにこれを紹介しよう」とブックマークをしていたソフト【DEFCON】をチェック。「みんなであの世行き」というふざけたドメイン名だが内容もある意味ふざけた、ある意味深く考えさせられるものである。

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そもそも「DEFCON」(デフコン)とは「Defense readiness conditions」の略で直訳すれば「防衛準備体制(態勢)」。アメリカにおける戦時体制状況を5段階に分けたもので、5が平常時。4は要注意で3は警戒体制。3ですら滅多にないがこれよりさらに2の戦闘準備体制になると国家レベルで動員令が発動される。そして1になると戦闘直前。【英語版のWiki】では次のように説明されている。

DEFCON 1: Maximum force readiness. (完全戦闘準備体制)
DEFCON 2: Increased force readiness (less than maximum).(戦闘準備体制、ただし完全ではない)
DEFCON 3: Increased force readiness. (戦闘準備体制移行状態)
DEFCON 4: Peacetime; Increased intelligence; Air-Force ready to attack in 15 min。(平和時だが警戒体制へ移行。空軍は15分以内に戦闘可能な状態へ)
DEFCON 5: Peacetime. (通常時)


ちなみに「DEFCON 2」ですらキューバ危機の時に一度発令されたきりであり、「1」はいまだ一度もない。

さて、この生々しい軍事用語をタイトルに用い、ドメイン名も「アレ」なこのゲーム、大方の予想がついている通り、実際の世界地図をゲームマップとして用い、国家連合同士が核兵器を持って対峙し、実働。終戦時の被害と戦果を計測して勝敗を決めるという、いわば「世界を舞台にした究極の生き残りゲーム」。

詳細は上記公式サイトのほか、今回同ソフトをチェックするきっかけとなった【放課後ハ 螺旋階段デ】【4Gamer.netのページ】【有志による日本語解説サイト】などを参照してほしいが、とにも核にも、もといかくにもシュールでリアル。

一昔前のアメリカ防空司令部やそれ系の司令部の超大型モニタに映し出されるようなワイヤーフレームの世界地図の上をただただ淡々と数多くの弾道ミサイルが、発射基地や戦略潜水艦から放たれ放物線上の軌跡を描きながら敵陣に着弾していく。戦略爆撃機やそれを迎撃する対空ミサイルが飛び交い、着弾地点に映し出させる光球の中ではいくつもの物語が終焉を終え分子レベルに分解させられたのか、感傷にひたる時も与えられず時間(事態)は進行していく。あまりにも映し出される数字が桁違いなため、一種のあきらめすら感じる始末。まさにお莫迦・冗談にも程があるという感触。

『DEFCON』
『DEFCON』イメージその1
『DEFCON』
『DEFCON』イメージその2
『DEFCON』
『DEFCON』イメージその3

このタイプのモニタを見て思い出すのが、まずはずいぶん昔の名作映画『ウォー・ゲーム』。映画の後半ではまさにこれと同じような画面が展開された。この話ではあるゲームによってAIが戦争の愚かさを知ってくれた。詳しくは【Garbagebooks.comの紹介ページ】も御参照あれ。

次に思い起こさせられたのが、架空戦記小説の第一人者、佐藤大輔氏による『遙かなる星』。こちらはキューバ危機が回避されず米ソが全面戦争に突入、ソ連が辛くも勝利した後の世界を描いたお話。今となっては設定そのものが大きく変わってしまったため続編の出版は難しいところだが、世界構造の変化を知る意味では今でも興味深い、読み応えのある作品。特にキューバ危機の処理にヘマをやらかし、デフコンの数字がどんどん下がり緊張が高まっていく際の描写は非常にリアルである。また、レトロゲームのファンなら『ミサイルコマンド』というゲームを脳裏に浮かべた人もいるだろう。

前世紀終わりに米ソの対立構造が終結を迎えたため二大勢力による全面戦争の可能性は回避されたが、それは単に危険が細切れにされ分散化したに過ぎないという感がある。今日のテレビニュースの大半を占めた「話題」を見てもその思いが募る。

ただ実際にプレイをしてみれば分かるのだが、「こんなことはゲームの中だけで結構」という気分にほとんどの人がさせられることだろう。あるいは学術的に興味深いと感じ取る人もいるかもしれない。だがどちらにしても「不毛」という結論だけは違いようがない。

先の映画「ウォーゲーム」では当時最先端を行くAIがあるゲームを繰り返しプレイし、それをきっかけにシミュレーションを繰り返し、「どの手でも益を得ることは無い」と判断することになる。今の人類がそのAIよりも愚かであるはずは無いのだが。

(最終更新:2013/09/16)

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