日本証券業協会、上場審査基準24項目を証券会社に義務付け

2006年09月21日 07:00

日本証券業協会は9月20日、新規株式公開(IPO)の引き受け審査基準に関する規則を強化し、証券会社間における統一新基準を導入することを発表した(発表リリース)。証券会社間の上場審査基準を高レベルで維持することにより新興市場の「健全な」育成をうながし、株式市場の信頼性の確保や個人投資家保護の徹底を助成する。

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株式市場の回復基調や規制緩和、インターネットの普及などで証券会社数は増え、日本証券業協会に属する会社数も300社を超えた。新規上場の引受業務を行う会社も増えている。それに伴いIPOを行う企業数も増加、今年は8月末時点で東証マザーズが166社、ヘラクレスが149社に及んでいる。

その一方日本証券業協会では上場引き受けの際に証券会社に課すルールとして公正習慣規則第14号を定めているが、単なる有価証券の売出しなども網羅したルールであり、IPOに特化された基準は明文化されていない。さらに証券会社の人材・ノウハウ不足、証券会社間の競争などから証券会社側がゆるい審査基準で企業の上場を請け負い、その結果として上場した企業がIPOからまもなく不祥事を起こす事態も相次いでいる。

たとえば2003年に上場したアソシエント・テクノロジーは粉飾決算が上場後に明らかになり2005年1月に上場廃止。ゼクーは社内のもめごとが相次ぎ経営破たんをして2005年6月に上場廃止。また今年の株式相場をひっかきまわしているライブドアの件は記憶に新しい。他にも「上場するが得た資金の大部分は使い道が分からないから貯金します」「上場して初値がついた直後に、まるで隠していたかのように超絶下方修正と第三者割り当て増資を発表する」など、信義に欠ける・投資家をなめているとしか表現のしようがない上場を行う企業も少なくない。

上場条件を甘くすれば、他の証券会社で条件をクリアできずに上場を断念していた企業の幹事引き受けができて手数料が手に入る。そう考えた証券会社が本来上場を果たすだけの用件を備えていない企業の上場を引き受けてしまい、結局上場後にぼろを出し、個人投資家が泣きを見るパターンが次々と生じている。

日本証券業協会ではこのような事態を憂慮し、今回のような統一基準を設定するにいたった。リリースによる、各証券会社が上場企業の引き受けをする際に「最低限」診査すべき項目は次の通り。ただし、これらのルールについて具体的な数字的基準の設定や、明らかに抵触した状態で上場を許した場合の罰則規定は特に定められていないもよう。日本証券業協会の柔軟で厳しい対応を「特に」期待したいところだ(一覧中「会員」とは各証券会社のことを指す)。

また、今年上場した企業にこれらのルールを当てはめ、「?」マークが複数つく企業には、投資対象から外すというのも投資家一人一人の自主防衛手段としては有効だろう。

1.公開適格性
(1) 事業の適法性及び社会性
(2) 会社の経営理念及び経営者の法令遵守やリスク管理等に対する意識
(3) 反社会的勢力との関係の有無及び排除への仕組み
(4)上場するにあたっての市場の利用目的の健全性

2.企業経営の健全性と独立性
'注)ベンチャー企業などの過渡的な体制にある企業については、事業立ち上げに必要な支援関係を考慮した上で、各会員において判断をする。
(1) 関連当事者(公開前規制にて規定する人的関係会社を含む)との取引の必然性、取引条件の妥当性
(注)企業会計基準公開草案第14号による関連当事者の範囲の見直しに対応する。
(2)親会社等など特定の者からの独立性
(3)関係会社(資本上位会社を除く)の管理状況と出資構成
(注) 関係会社の財政状態及び経営成績は、連結ベースでの審査を実施することとなるため、大項目5.財政状態及び経営成績に含まれる。

3.事業継続体制
(1)企業活動における法令遵守の状況及びコンプライアンス体制の整備状況
(2)事業推進に必要な知的財産権の保護の状況、他社の権利侵害の状況
(3)事業継続に当たって重要な契約の締結状況、権利の確保の状況

4.コーポレート・ガバナンス及び内部管理体制の状況
(1)会社の機関設計の妥当性(会社規模、事業リスクへの対応力等)
(2)取締役・代表取締役・取締役会の責任遂行の状況(委員会設置会社の場合、代表執行役・執行役・執行役会等の責任遂行の状況等)
(3)監査役・監査役会の責任遂行(委員会設置会社の場合、取締役会、3委員会の責任遂行の状況等)及び内部監査機能の状況
(4)内部管理体制(組織、社内規則、売上債権管理、予算管理、労務管理、システム管理等)の運用状況と牽制機能

5.財政状態及び経営成績
(1)財政状態の健全性と資金繰り状況
(2)財政状態及び経営成績の変動理由分析

6.業績の見通し
(1)利益計画の策定根拠の妥当性
(2)利益計画の進捗状況
(3)企業の成長性・安定性
(4)剰余金の配当に関する考え方

7.調達する資金の使途・売出しの目的
(1)調達する資金の使途(売出しの場合は当該売出しの目的)の妥当性(事業計画との整合等)
(2)調達する資金の使途の適切な開示

8.企業内容等の適正な開示
(1)法定開示制度及び適時開示制度への適応力
(2)「事業等のリスク」など企業情報等の開示内容の適正性・開示範囲の十分性・開示表現の妥当性

9.その他会員が必要と認める事項


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