今回のカタログが発行された1986年当時といえば、日本のパソコンメーカーは独自OS(……とでもいうのか?)を搭載した【NEC(6701)】のPC-6001/8001/8801/9801シリーズ、【富士通(4793)】のFM-7/77シリーズ、【シャープ(6753)】のXシリーズとMZシリーズが個人向け機種としては力を持ち、まさに「三国鼎立状態」だった。OSとしてのWindowsもまだ無く、独自のDOSでソフトは動き、個人が使うプログラム言語としてはBASICなどが主流。マシン語を使える人はアセンブラを含めてもほんの少数(今でもそうだが)。

記憶媒体も今のようなスマートメディアなどほとんどなく、5インチや3.5インチのフロッピーディスクばかり。しかも容量が640KB(MBではない)の2DDシリーズが主流で、さらに倍近いHDが普及しだしたころ。ちなみに「3.5インチ2DD」とは3.5インチのフロッピーディスクで両面に磁性体があり(＝2)、倍密度倍トラックを持つ(DD)をあらわす。これで640KB。普及しだした2HDは1.2(または1.44MB)の記憶容量があった(雑学:Sは単密度、Dは倍密度。順にS、D、DD、HDとなる)。

ちなみに発売タイトルと対応一覧機種、収められているメディアを見ると、「T」という文字がうかがえるが、これは「カセットテープ」のこと。当時はまだカセットテープででもソフトが提供されていた。

ゲーム一覧。実物は横長になっているので縦に再編集

カタログは折込タイプで一面がゲーム、もう一面がビジネスソフトについて説明書きがされている。取り上げられているタイトルは、ゲームが今でもコーエーの歴史モノ三本柱として名を残している『信長の野望』『三國志』『青き狼と白き雌鹿』。いずれもが治世と戦争、外交で領地を広げていくという戦略モノのシミュレーションゲームだが、それぞれ日本の戦国時代、古代中国、中世のモンゴル～ユーラシア大陸と、それぞれ場を変えており、ゲームの歴史観にマッチした独自のシステムが採用されている。それぞれの元祖的タイトルがずらりと顔を並べる、非常に珍しい年のカタログだったといえる。

ほかにもゲーム部門ではロールプレイングゲームとして『タイムエンパイア』、アドベンチャーゲームとして『コリドール』(テキストアドベンチャー)などが収録されている。あるジャンルの黎明期のソフトも見受けられるが、ここでの解説は省略。

ビジネスソフト一覧。とはいえ「トップマネジメント」は適度なゲーム性も兼ね備えていた。この後さらにゲーム色の強い「マネジメント」シリーズが続々発売される

一方ビジネスソフトでは、会社経営のシミュレーションゲーム『トップマネジメント』とビジネスの常識を習得する『ビジネスマナー』が収録。後者はゲームというよりはいわば研修用ソフトのようなもので、当時としてはきわめて珍しいものだった。また『トップマネジメント』も会社の社員研修用としての評価も高く、今後さまざまなビジネス系シミュレーションが発売されるおおもととなった。ニーズの変化からか、現在ではこのジャンルのソフトがコーエーからは発売されていないのが残念でならない。

20年も経つとずいぶん品代わりもするものだが、いまだにシリーズモノとして複数のゲームが発売され続けているのには驚き。『青き狼と白き雌鹿』は最近は御無沙汰のようだが、今後あと十年二十年経っても、コーエーからは『信長の野望』『三國志』と名のついたシミュレーションゲームが発売されるのだろう。

※9月18日更新
複数のリクエストがありましたので、一部作品についてさらに文字が読めるレベルまで拡大したものを掲載します。「諸般の事情」で全部では不可能なことを御了承下さい。

【三國志】
【蒼き狼と白き牝鹿】
【タイムエンパイア/コリドール】
【トップマネジメント】