「学習経験のある神経細胞は年を経ても生き残る」アメリカの研究所グループが発表

2006年08月15日 07:30

アメリカの【ソーク研究所(ソーク生物学研究所:Salk Institute for Biological Studies)】の研究グループは8月14日、イギリスの科学誌ネイチャー上に、「大人になっても学習用神経細胞は新たに生まれる。そして学習や記憶に使われた神経細胞だけが生き残って神経回路に組み込まれる可能性が高い」という動物実験による研究結果を発表した(【参照記事:asahi.com】)。

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グループはマウスに遺伝子操作を施し情報伝達・学習や記憶にかかわる領域絡みの脳細胞に関するチェックをしたところ、情報を受け取れないようにしたマウスでは新たに生まれた神経細胞の生存率が通常のマウスの1/4に低下したという。つまり、新しく情報を受け取った細胞が生き残り神経回路に組み込まれ、そうでない細胞は組み込まれずに生存を果たさない可能性が高いとのこと。

要は「新しい情報を受け取った、つまり学習や記憶した新生神経細胞が神経回路に組み込まれて生き残る。そうでない神経細胞は死んでしまう」という仮説が出来るということになる。もちろんこれはあくまでもマウスによる仮説に他ならず、人間に適応するのかどうかは分からない。とはいえ、「成長を果たしても神経細胞は生まれ続け、『頭を使う』ことで神経回路に組み込まれ学習効果を果たす」かもしれない仮説が提唱されたことは興味深い。

もちろん人間は年を経て老化すると共に脳細胞そのものは萎縮し減少してしまう。しかし学習を繰り返すことでその分野において経験が重なり神経回路に組み込まれ、蓄積が行われれば、特定の分野においては年を経るごとに強化される可能性を秘めている。

そして他の分野における「雑音」が少なくなり、特定分野での蓄積が果たされた時、まさに「天才的な能力」が発揮されるかもしれない。実際に、前頭側頭型痴呆症の患者が今までもち得なかった美術の才能を開花させたケースが報告されている。

今回の研究結果は「いくつになっても学習効果は存在し脳細胞を刺激しうる」という話の他に、「経験と学習の蓄積」「雑音の低下」という二つの要素から「年を経ることで天才的能力が発揮される」可能性を示唆したといえよう。

脳を刺激し鍛えるゲームソフト(例えば『東北大学未来科学技術共同研究センター川島隆太教授監修 脳を鍛える大人のDSトレーニング』など)に人気があるのも、この辺が遠因の一つなのかもしれない。

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