高い効果を示す抗HIV薬「ダルナビル」を日米研究チームが開発、アメリカで承認

2006年08月15日 07:30

【Mainichi INTERACTIVE】が報じたところによると、既存の薬が効かない多剤耐性エイズウイルス(HIV)にも高い効果を示す抗HIV薬を、熊本大学の満屋裕明教授やアメリカ・パデュー大(インディアナ州)のアラン・ゴーシュ教授ら日米共同チームが開発、8月14日までにアメリカ食品医薬品局(FDA)が治療薬として承認したことが明らかになった(【FDAの承認レポート、PDF】)。

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20世紀終盤から急速に世界中に広まり、深刻な脅威をもたらしている耐性HIVへの幅広い効果が確認された薬は世界で初めて。実際に別の薬と比較して3倍以上の効果があるなど、患者には大きな朗報となっている。専門家らはこの薬が今後、エイズ治療の主役になる可能性があると見ている。

今回発表されたのは「ダルナビル(darunavir)」と呼ばれる薬。エイズ治療に広く使われているプロテアーゼ阻害剤(PI)の一種。ゴーシュ教授が合成し、満屋教授が生体内での効果を確認、臨床試験へと進めた。

ダルナビルが阻止するプロテアーゼとはHIVに含まれる酵素で、HIVの増殖に必要なタンパク質を正しく切断する「はさみ」の役割を果たす。PIは酵素に付着してはさみを切れなくし、HIVの増殖を止める。

既存のPIは、酵素の成分であるアミノ酸の端に結合する性質があり、HIVの遺伝子が変異してアミノ酸が変わると効かなくなってしまう弱点があった。これに対しダルナビルは、アミノ酸の遺伝子が変わっても影響のない場所に結合するため耐性ができにくい(要は遺伝子が変わっても効果は変わらないということ)。PIなどに耐性が検出された患者への臨床試験においても約70%に治療効果がみられ、別の薬の3倍以上高かったという。

FDAは患者への恩恵が大きいとして約半年でスピード承認した。薬はベルギーのティボテック社が製品化している。満屋教授は世界初の抗HIV薬「AZT」の開発者でもあり、その後2剤を世に送り出し、これが4剤目となる。

【独立行政法人福祉医療機構の資料(PDF)】によると、剤形は経口剤タイプで1錠300mg。一日600mgを2回経口投与する。アメリカではすでに6月23日に承認済みで、現在日本国内でも申請準備であるとしている。

いわば満屋教授はHIV治療の第一人者であり患者にとっては救いの神的存在であるわけだが、当方(不破)としては世界初というだけでなく今件も含めて4剤ものHIV治療薬を生み出したのが実は日本人研究者であることが今回の報道で初めて分かり、少々驚いている。

HIV患者にとっては言葉どおり「わらをもつかむ」話であるだけに、今回の「ダルナビル」が本当のわらに過ぎないのか、命綱になるのかはともかく、一刻も早い国内承認が待たれることに違いはない。


(最終更新:2013/09/16)

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