長生きと関連するミトコンドリア内DNAが発見される

2006年08月12日 12:30

時節イメージ【理化学研究所】は8月11日、細胞の働きに影響するミトコンドリアDNAの個人差を特定し、これが人間が長生きするかどうかに関連する可能性があることが明らかになった(【発表リリース】)。

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ミトコンドリアは細胞の中にある、エネルギーの代謝に関わる細胞内小器官で、細胞内のカルシウムイオン濃度の調節や細胞の生死の決定など、生命にとって極めて重要な役割を果たしていることで知られている。また、細胞内にあるにも関わらず、細胞の中心たる細胞核とは別に独自のDNA(遺伝子)を持つという不思議な構造をしている。さらにミトコンドリアのDNAは個人差が大きく、さまざまな病気の発症や寿命、運動能力に関連するのではないかと考えられていた。しかしミトコンドリアのDNA操作は難しく、今まで研究は進まなかった。

今回理化学研究所の研究グループでは、ミトコンドリアDNAの暗号の並びの個人差を調べる方法を用いて、1万6000ほどの塩基から構成されるミトコンドリアDNAの1万398番目の塩基と8701番目の塩基が、水素イオン濃度(pH)の度合いとカルシウム濃度の変化に関与していることを突き止めた。この塩基がG型(グアニン)だとA型(アデニン)に比べ、カルシウムイオン濃度が低いことも明らかになった。カルシウムイオン濃度は、神経細胞の生死にかかわるとされ、実際、これまでの疫学研究で、A型はアルツハイマー病やパーキンソン病などの危険を高める因子と判断されていた(8701番目の塩基は比較的日本人特有のもの)。

1万398番目の塩基でG型は日本人に多く、日本人では7割、欧米では3割でしかない。また、日本人の100歳以上の高齢者の8割はG型であることもあわせ、特に1万398番目の塩基が、長生きに関連する機能を引き起こしているという結論に達している。

今後研究グループでは1万398番目の塩基についてA型とG型のモデル動物を作り、本当にミトコンドリアDNAの1万398番目塩基が長寿やアルツハイマー病やパーキンソン病に関連するかを調べるとしている。この研究結果次第では、長生きや病気の発病する仕組みの解明、さらにはコントロールも可能になるかもしれないとレポートではまとめている。

結局ぼう大なデータを精査して傾向を確認し、その違いから特定の働きを調べるという方法しかないわけだが、それでも今回の発見は非常に興味深く、先が楽しみなもの。人間の寿命を決定付けるDNAが特定できれば、それをどうにかすることで、寿命を延ばすだけでなく病気に掛かりにくい体質を作り上げることもできるかもしれないからだ。いわばDNAレベルでの治療延命長寿化であり、今回の発見はSF小説にあるようなお話が遠くない未来、実現するかもしれないという可能性を見せてくれたことになる。

とはいえ、今件は言い換えると人間の寿命もDNAの「情報」次第であるという結論に達したことでもある。これはこれで複雑な気分にさせられているのは当方(不破)だけだろうか。

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